令和元年度(2019)活動報告
令和元年度 第29回全国女性建築士連絡協議会(東京)その2 活動報告、被災地報告、基調講演
日時:令和元年7月13日(土)~14日(日)
会場:全国女性委員長(部会長)会議・・・リロ会議室「田町」
(東京都港区芝5-26-24)
全国女性建築士連絡協議会・・・・・日本建築学会建築会館ホール
(東京都港区芝5-26-20)
参加者:4名
〔活動報告〕
・岩手県建築士会
・秋田県建築士会
〔被災地報告〕
・北海道建築士会
・福島県建築士会
・岡山県建築士会
〔基調講演〕
「和の伝統技術の継承と創造 ~新たなプロの育て方~」
講師:有限会社原田左官工業所 代表取締役 原田 宗亮 氏
トークセッション
ゲスト:marumo工房 金澤 萌 氏
コーディネーター:連合会女性副委員長 石貫 方子 氏
岩手県建築士会、秋田県建築士会の活動報告について
報告者:岡田 利里
岩手県女性委員会からの活動報告は、盛岡市鉈屋(なだや)町の町屋再生の取り組みについてでした。
鉈屋町は、江戸から明治にかけて北上川の舟運時代に栄えた町ですが、鉄道の開通によって舟運の時代が終わり、盛岡駅に向かって町の中心が移動していったことで活気が薄れてきた町です。その歴史的町並みを保存するため、
・建築の専門家や住民団体による「盛岡まちなみ塾」の設立。
・国土交通省の支援調査事業において、市民と行政が一体となり「盛岡市町並保存活動計画」の報告書を作成。
・「盛岡市町並み保存活用基本計画」と「歴史的町並み整備事業補助金交付要綱」が制定され、建物の修繕にかかる費用の約半分の補助を行う事業を開始。
といった、官民一体となった活動をしている事が印象的でした。
また、被災沿岸地域に関わる活動として、陸前高田市や大船渡市の視察なども行っているそうです。被災から8年以上たった今でも、震災による被害は終わってはいないのだと痛感しました。
秋田県女性委員会からの活動報告は、秋田県建築士会におけるヘリテージマネジャーの取り組みの一つである、白井晟一の建築物の調査・保存・活用についてでした。
秋田県湯沢市には、戦後日本を代表する建築家の一人である白井晟一が手掛けた6作品が残されているが、市民の間にはそれほど認知されていないということで、
・「白井晟一に関する建築物調査等業務」を湯沢市より受注し、プロジェクトチームを作り、6作品の調査、研究を行う。
・市民が、建築家・白井晟一に、そして白井建築と地域との関連に関心を持てるような紹介・展示パネルを作成。
・白井作品の一つを会場として講演会・建物見学会を行い、予想を上回る市民の参加があった。
これらの活動の後、2作品が国登録有形文化財に登録されたということです。
このように、今はその役割を終えた建物も、「再生」によって地域を支える拠点となることを実証したヘリテージマネジャーの取り組みの紹介でした。
しかし、その「再生」に欠かせない卓越した技術と知識を持つ職人が、少なくなっている今、人材育成と次世代への技術継承に取り組むことこそが、私たち建築士のすべきことではないのかと思います。という今後への目標を提示されました。
(岩手県の活動報告)
(秋田県の活動報告)
○被災地報告
報告者:伊藤 麻子
毎年この場での被災地報告は新たな災害地が加わっており、改めて自然災害の頻発化、甚大化を実感します。
・北海道胆振東部地震報告及び取り組みについて
最大震度を記録した厚真町では土砂崩れで多くの被害が出たのは記憶に新しいのですが、最近地震が多発していたことや直前に台風に見舞われたことも被害の大きさに繋がったとみられていました。被害の中でも停電によるブラックアウトは何よりショッキングな事でした。他にもインフラの復旧に時間がかかったこと、仮設住宅は寒冷地仕様の断熱や除雪スペースの確保の工夫がされている事についても報告がありました。
・福島 帰宅困難区域の現状
県内の避難者は事故当時16万4千人ほどが今年3月では4万3千人と、いまなお非難を続ける人が数多くいます。
富岡町:一部を除き避難指示が解除され、事故後初めて桜並木の名所で桜祭りが開催され
一日限りのバス運行を実現し町民が楽しまれた。
大熊町:今年4月に避難指示が解除。新しい役場が建設され、元町民の4%が住民登録した。
双葉町:県内でも唯一、全町避難がいまだに続く。東京電力の事故の資料館では入口正面に「お詫び」が掲げられ、胸をうたれたとのこと。
先日7月6日には福島県女性員会の第30回記念大会「今を生きる~復興から福幸へ想いを紡ぐ~」としてが開催されました。
・西日本豪雨災害からのメッセージ ~WAGAKOTOとして~
昨年6月に起こった西日本豪雨について、ハザードマップではすでに予想されていた降水量であったのに、なかなか現実的に受け止められていなかった。被災した住宅についての
相談が多くあり、対応に追われたが役割を果たした実感があった。これからは建築士が地域のリーダーとなり「ボトムアップの防災」を広めていくといった報告がありました。
(北海道の報告の様子)
(福島県の報告の様子)
(岡山県の報告の様子)
○基調講演
報告者:伊藤 麻子
「和の伝統技術の継承と創造 ~新たなプロの育て方~」
有限会社原田左官工業所 代表取締役 原田宗亮(はらだ むねあき)
女性の活躍が云われ始めて久しく、ITを始め女性の働く場が広がりつつありますが、
左官という昔ながらの力仕事、水仕事の世界でもきらきら輝く若手、女性たちのお話が聞け、実質的にためになる、とても興味深いお話でした。
この事業所は女性の職人が10名ほど在籍、ママさん職人も子育てしながら就労されているとのこと。ポジティブで明快な経営と人材育成が印象的でした。
若手育成ポイントは3点
- モデリング訓練
社内で一番ベテラン職人のビデオを見て、忠実にまねをする。
- 年明け披露会
入社して最初の4年間は見習いの立場だが、それを過ぎたら当事者社員の家族や社員全員で盛大に祝う。フォトブックも贈られる。
- ブラザーシスター制度
1年先輩が後輩の面倒を見る。先輩少数 対 後輩多数 だと話しやすく、意見も多く出る。経費は会社からでるが、写真で報告する。
と、ベンチャー企業並みに楽しそうな企画のようなカリキュラムです。
さらに「仕事旅行社」という職業体験付のツアーパックの受け入れもされて、これには年間60人程度が参加されるそうです。1日目は壁塗り体験、2日目は工事現場見学。2日目の方が人気があるそうで意外でした。
続いて、トークセッション
ゲスト 元社員 女性左官職人 金澤 萌
ものづくり大学で大工を志したが、壁塗りが楽しくなり左官となった。独立後母となり、自身で左官の仕事をする傍らものづくり大学で非常勤講師を務めているお話をされました。
あらゆる面でいまどきのやり方で、実践するとなると昔からの世界では勇気が必要ですね。
ただ効果は目に見えてあることでしょう。これがすべてではありませんが、これも視野に入れて進めていくべきことだと感じました。
(基調講演の様子)
(トークセッションの様子)