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平成30年度活動報告

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東海北陸グロック会 後期 亀山大会 報告その2(見学会・分科会)

見学会 資料館にて記念写真

 

建築士会 東海北陸ブロック会 女性建築士協議会
   平成30年度後期ブロック亀山大会

日 時:平成31年2月23日(土)~24日(日)
会 場:開会式・会議・閉会式 亀山市文化会館
      (三重県亀山市東御幸町63番地)

    女性分科会 亀山市関文化交流サンター
     (三重県亀山市関町泉ヶ丘)

    懇親会 ドライブイン あんぜん文化村
     (三重県亀山市太岡寺町1170)
    宿泊 ホテルルートイン亀山インター
     (三重県亀山市太岡寺町字下谷1195-9)

    
全体テーマ:まちなみ・保存と活用 ~三つの「繋がり」が重なる三重~
参加者:3名
 

【見学会】
関宿伝建地区の町並みの見学と亀山市立関中学校にて施設見学

【女性分科会】
講 師:中浦 豊子氏 (NPO法人 亀山文化資産研究会 会長)
テーマ:「NPO法人 亀山文化資産研究会」の活動内容について




 

 

分科会 講義の様子

 

見学会でいただいた三重県建築士会女性委員お手製の地図

お手製関宿マップ.pdf3fe40d36ef094750cac9abda259d30f00e098c17.pdf

 

 

 

見学会に参加して

 

 報告者:井之口洋子

 

開会式に出席したあとはすぐ見学会に出発でした。

 

移動のバスから降りると、想像より風が強く、風に慣れてないのでダウンコートを着てきて正解でした。

最初にボランティアガイドさんより関宿のあらましを聞きました。

関宿は東海道五十三次の47番目の宿場町として栄えていました。

1984年に三重県初の「重要伝統的建造物群保存地区」に選ばれ、これは東海道五十三次の中で唯一だそうです。

西の追分から東の追分まで1.8㎞の宿場町です。

見学は西の追分から東の追分に向かって見学していきます。

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(バスを降りた所での説明を受けている様子)

 

 

最初は旧田中家住宅。

元々は庄屋だったそうで江戸の後期に建築されました。間口が8間半もあり、普通の町家の2、3件分の大きさになるそうです。

派手さはないものの質が良い建物で平成23年~25年にかけて調査と修復がされたそうです。
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(内部見学の様子)

 

 

2番目は地蔵院。

本堂は鎌倉時代に建築されたそうで、厨子が秀吉より寄贈されたとのことです。

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(地蔵院正面)


 

こちらの地蔵院の前には「あいづや」という食事処が有り、屋根のついた立派な看板がひらがなで表記されているのですが、京都へ向かうならひらがな、江戸(伊勢)へ向かうなら漢字になっていて旅人が迷わない工夫だったそうです。

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(ひらがなの「あいづや」)


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(漢字の「会津屋」)

 

 

3番目は旧落合家住宅。

こちらは持ち主が解体しようとトラックを家の前につけたところを市の職員が気づいて、解体を阻止したというエピソードを聞きました。

その後改修工事が行われ、限界耐力計算法を用いたそうです。補強の金物が見えていました。
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(見えている補強金物)

 

 

 

 

4番目は玉屋。

関宿を代表する大旅籠の1つです。

雨戸が3枚になっていてすりあげ戸でした。女性の力でも楽に開け閉めができると説明をしてもらいました。

中はとても大きく、武士が泊まるお部屋は離れ座敷になっていて欄間なども立派でした。


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(雨戸の開閉の様子)


 

 

5番目は百六里庭。

江戸から百六里の位置にあるから百六里庭。

元々は飛脚の継ぎ場だったそうです。現在は防災公園になっています。

入口が立派な門になっていると思ったら2階に上ることができ、そこから関宿の家並みが一望できました。

階段幅がとても狭かったのですが階段は2つあって一方通行になっていましたので通行に支障はありませんでした。

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(入り口)


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(建物上に上がって、町並みを見る)


 

 

最後は関まちなみ資料館。

玉屋の斜め向かいです。一般庶民の町家建物だそうです。

市が買い取って資料館としているようです。

一般の家で使われていた道具などが展示してあり、箱階段は実際に2階まで上がれる階段として使われていたので初めて足をのせてみました。ちょっと嬉しかったです。

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(箱階段 使用できます。)

 

2階には関宿の町並みの写真が昭和59年平成9年平成19年と同じアングルで実際の町並みを比較できるように展示してあり、とてもわかりやすかったです。

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(写真ではわかりにくいかもしれませんが、同じ場所を撮った連続写真です。)

 

 

伝統的建造物群保存地区に選ばれてから35年。市の方々が大事にするために、道路をカラー舗装して電柱の無柱化に取り組んだりしていて、今後は本陣を復元したいと思っていると構想も聞かせてもらいました。

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(電信柱の見えない町並み。ハッピを着ている方はボランティアガイドさんです。)

名物の「志ら玉」の前田屋製菓はお休みでした。)

 

 

伝統建築に認められた建物には銅板のプレートが玄関に取り付けてあり、誇らしくみえました。関宿に400戸から600戸ある内の200戸程が対象になっているそうです。

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(銅板の標識)


 

また、改修のために伝建建物には80%の補助金、非伝建建物には30%の補助金が出るなど保存活動にとても熱心でした。

最近は若い人や海外からの移住も受け入れていてセカンドハウス的に使うことにも理解がありました。

 

ボランティアガイドの説明のあとは自由散策でしたが、三重県建築士会の大森さんが案内をしてくださるというのでご厚意に甘え、東の追分まで足を伸ばし、伊勢神宮の式年遷宮の際の鳥居が移設されているのを間近に見てきました。

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(伊勢神宮から移設された鳥居)

 

散策途中では町並み保存に関する貴重なエピソードを聞かせてもらい、次の分科会で取り上げられる物件も実際に見ることができて(時間が無くて中には入れませんでした)とても有意義でした。

 

短い時間でしたのに少し距離がありましたが、ご案内頂きありがとうございました。
 

 

関宿の見学のあとは亀山市立関中学校の見学でした。

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(中学校前にて集合写真)

 

木造2階建て一部鉄骨造で、平成22年に建設されました。

最初に案内されたのは多目的ルームです。

ここは、毎日生徒全員と職員が給食を食べるランチルームでもあるそうです。

入ってまず驚いたのが、大きな丸太の柱です。地域の山から切り出したそうです。建設のための木は設計段階で切り出して1年の乾燥期間をおいたそうです。

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(多目的ルーム内部)

 

 

学校ですので、建物は準耐火建築物にしなくてはならないために、色々と工夫がされていました。木造のラーメン構造になっているらしく、特殊な工法にて施工されたようです。

柱、梁の接合部にはD25の鉄筋が入りその廻りをエポキシ樹脂を注入して固めたとのことです。見た目では分からないのですが、施工途中の写真を見せて頂きました。

又、梁に照明器具を埋め込むようになっていて、梁せいはそれを見込んでの設計でした。木造にこだわった設計で引き戸の防火戸も初めて目にしました。確認申請が下りるのに半年もかかったそうです。

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(梁をくり抜いて付けてある照明器具)


 

庭に面する教室群は緩やかな曲線を描いていて、関宿の街道を模しているそうです。瓦屋根の軒先にはその当時の生徒が選んだ文字が入っていました。

多目的ホールのあとに、教室を見学しましたが、南側が廊下で北側が教室という配置になっていました。

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(軒先の文字)

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(教室群の全景)


 

どの教室も内装に木がふんだんに使われていて、参加者が「こんな教室で勉強したかった、羨ましい」と口々に話していました。

途中にあるトイレ、更衣室の前には子供のたまり場となるような腰掛けスペースがあり、少し囲われている感じがくつろげそうでした。

自分の小学校がRC造の校舎でしたので、全く違う雰囲気に戸惑うばかりでした。

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(廊下に張り出ている腰掛けスペースの外観)

 

 

外壁も木がふんだんに使われているのですが、防火塗料を塗ってあるそうです。

メンテナンスを考慮して塗りにくい箇所はサイディングにしてありました。

数年前の塗り替えには800万円は掛かったそうです。

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(塗装の違いの説明をうけましたが、目視ではよくわかりませんでした。)

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(裏側の外観)

 

 

エアコンのドレインもうまく建物になじむように設計デザインされていて、設計者の苦労が見えました。

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(ドレインの目隠し)

 

決められた時間の中で、関宿と関中学校を見るのは大変でしたが、しっかりポイントを押えてあった見学会だったと思います。

三重県の女性委員会の方々はセレクトマップを作ってくださったりと、色々と準備が大変だったことと思います。ありがとうございました。

 

 

 

 

後日、三重県建築士会の北川さんより、伊勢神宮鳥居について説明をいただきました。


鳥居の用材は伊勢神宮からの頂き物
 鳥居は建築的には至極シンプルです。木材は2本の柱、貫、笠木の4本しか使われてい
ません。 間口は5.8m余、高さは地面から笠木上までで7.7m余あります。 柱は、自
動車がぶつかって破損するのを防ぐために巻かれた鉄板とともに1.5m程埋め地面に込
まれています。 長さ9mを超える笠木には、上部に水切用の銅板が張られています。
 全体に材料が新しく感じられるのは、現在の鳥居が建てられたのが平成27年6月だか
らで、 この鳥居は20年に一度の伊勢神宮式年遷宮と時期を合わせて、建て替えが行わ
れています。 そして、その用材は伊勢神宮からの頂き物なのです。 伊勢神宮では神
宮内の社殿等を20年に一度建て替える式年遷宮が行われています。 この時、建て替え
られた社殿等の旧材は日本全国の神社に下付され、各地の神社の社殿建て替え等に使わ
れます。 もともと伊勢神宮の社殿等には超一級の木材が使われており、かつ伊勢神宮
の社殿等はどこの神社に比べても大きいため、 傷んだ部分を取り除いたとしても十分
な大きさがあります。  出処:
https://matinamigurashi.com/guide-20190316
 

 

桑名の鳥居についても教えていただきました。

 

桑名鳥居 .pdf



 


分科会
 

NPO法人 亀山文化資産研究会』

報告者:桂川麻里

 

関宿、亀山市関中学校の見学の後、亀山関文化交流センターで、分科会を行いました。

三重県建築士会会員の、NPO法人 亀山文化資産研究会 会長の中浦豊子氏に活動の報告をして頂きました。

最初はヘリテージ講習会の走りである歴史的・文化的資産保全活用推進員養成講座を受けたことがきっかけで、その時の受講生が集まって研究会を立ち上げたそうです。最初は20名だったのが現在は12名だそうです。それでも発足が2007年で現在までそれだけ継続されていることは素晴らしいことだと思います。

その後2009年には三重大学の依頼により基礎資料の作成を行い、街並みの特徴を明らかにしていったそうです。

2011年には伝建建造物以外の非伝建建造物の調査を行って、価値ある建物が多数ある事を把握したそうです。伝建建造物等に指定されていない建物でも価値あるものは多数ありますが、いつの間にか気づいたらなくなっていたと言うことが往々にしてあり、また、壊されるときにはじめて存在に気づいても後の祭りということもあります。それをまだ残っているうちに調査することは大変重要なことだと思います。

建物調査以外にもそれに付随する勉強会や地域にその魅力を知って頂ける講座も定期的に行ってきたようです。建物の重要性を地域の方々に知ってもらうのも大切なことだと思いました。

他にもお城をバックに七五三の写真を撮る行事も行っているようです。普段は興味のない子供たちでも写真を撮ることで建物の存在に気付いてもらえたら嬉しいと思います。その時におっしゃっていた言葉が印象的でした。『何かの行事を行う時は3年は行うと決めている』という言葉です。1年目、2年目は続いてもなかなか成果が上がらないと継続されないことが多々あります。そこを踏ん張ってもう一年やることで、存在が周知されていくのではないかと思いました。成果が上がらなくてもこの言葉を思い出して何事も取り組んでいけたらと思いました。

 

 最後に質問の時間が設けられました。私はデザインカタログの作成が気になりどれくらいの量のデザインが集まったかを聞きました。格子の種類が約30種、窓が約20種、板庇が約10種、腰板や手摺も多々あって、それを一冊の冊子にしたそうです。その冊子を元に、修復時の都度参考にしているそうです。昔からあるデザインを採用することで街並みの統一感が増すのでよい取り組みだと思いました。

 もう一つ気になったのは、古文書の勉強会です。私も学生時代に建築側の教授と古建築の調査に行った時に棟札の解読をする場も見学させていただきましたが、教授でも年代やある程度しか解らないと言っていましたが、古文書専門の教授はほぼすらすらと解読していました。私も棟札の年代を解読出来ればと思ったことが何度もあるので地域にそういう勉強会がないか探してみたいと思いました。

 どのようにしてヘリテージマネージャーとしての活動を仕事に結び付けられたのかという質問がありました。発足するきっかけとなった三重県生活部文化振興室主催の「歴史的・文化的資産保全活用推進員養成講座」に参加していて研究会の会員にもなっている県職の方が、勉強しているだけで仕事にならなければ意味がないと、行政への働きかけや勉強会を積極的に行って道筋を立ててくれたことが最大の要因だそうです。

 何か事を起こすときにはそういった方々の協力も必要だと最近思うようになってきていたので、こちらかの要望だけでなく、面倒だと思う事でも行政の方々の要望にも応えていけたらと思いました。

 今回の話を聞いたうえで、もう一度ゆっくり関宿を訪れたいと思いました。

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(亀山関文化交流センターへ向かう。)

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(会場で配られたお菓子)

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(分科会の様子)