平成30年度活動報告
第61回建築士会全国大会 「さいたま大会」 その3 エキスカーション報告
日 時:平成30年10月27日(土) エキスカーション
会 場:埼玉県内
テーマ「歴史に感謝 未来に約束 今埼玉に集う 彩り豊かな暮らしの創造』
参加者:2名
【エキスカーション 一覧】
Aコース 「大宮」地名の由来氷川神社と盆栽村・鉄道博物館
Bコース 今に生きる建築 なにかいいことありそうな建築巡り
~杉戸町・宮代町~
Cコース 日本遺産「足袋蔵のまち行田」の町歩きと
国宝「妻沼聖天山」の縁結び
~行田市・熊谷市~
Dコース 異文化交流の歴史とパワースポットを巡る
~坂戸市・日高市・飯能市~
Eコース 近代和風建築「遠山記念館」と
ユネスコ無形文化遺産「紙漉き」体験
~川島町川島町・東松山市・小川町~
Fコース タイムスリップ気分! 小江戸川越散策
(藤代邸前にて集合写真)
エクスカーション Bコース
『今に生きる建築 なにかいいことありそうな建築巡り』~杉戸町・宮代町~
報告者:桂川麻里
昨年、岐阜県建築士会の「ぎふ木造塾」で降幡先生の講義をお聞きし、一度見てみたいと思いましたが、現在もお住まいになっている古民家ですと見ることは出来ないなと思っていましたが、今回岩本邸と藤城邸を、それ以外にも1級建築士の試験にも出たことがある宮代町立笠原小学校が見学出来るということでBコースに参加してきました。
最初は杉戸町へ古民家再生の建物を見学に行きました。
岩本邸は200年以上経過し、更に30年以上空家となっていたものを1984年(昭和59年)に再生した建物です。降幡先生の写真や本等では完成されたばかりの建物が掲載されていて、そのイメージが頭の中に強く残っていたので、実物を見た時なんとも言えない時の経過を感じました。34年も経っているので当たり前と言えば当たり前ですが、それでも降幡先生の言われた「時代が変わってもデザインの魅力は失わない」という言葉がしっくりくる感じそのままの建物でした。
建築家清家清氏の親戚の家ということで、取り壊しを免れたという建物には現在も3世代4人が住んでいるのにも関わらず、41名の大団体を招き入れてくれ感謝してもしきれないほどです。内部まで見せて頂けて、古民家再生とはこうあるべきだと実感させて頂きました。
(↑岩本邸にて)
次に訪れた藤城邸は1985年(昭和60年)に修復したときから寝泊まりはしていないそうですが、法事などの集まりの時に利用していたそうです。当時のお金で約4,000万円ほどで、再生したそうです。現在は月に2回程度風通しに来ているそうですが、近年の大雨等によってだいぶ傷んできているので、管理がとても大変だそうです。住んでいれば痛みも遅いですが、こういう建物を残す為にもっと国で補助をしていって欲しいと思いました。
藤城邸の近くには見学は出来ませんでしたが、同じように再生した大島邸(大島有隣生家)の建物もありました。
(↑藤城邸にて)
次に宮代町へ移動し、象設計集団の設計した建物を見学に行きました。
見学の前にコミュニティセンター進修館の研修室でうなぎを頂きました。今年は全建女高知大会のエキスカーションでもうなぎを頂いたのでうなぎ尽くしの得した年になりました。
(↑昼食のうなぎ)
(↑研修室での食事の様子)
昼食を食べながら、進修館や笠原小学校の造られた時代の背景や、1960年代とは違って衰退の一途をたどっていた1970年代の建築家の方々の努力等を埼玉県建築士会員の手島氏にして頂きました。その中でも当時の町長の「庁舎はボロでよい、町民の集会所に金をかけ、世界のどこにもないものを建てよう」という言葉に、その精神で現在でも町のままで豊かな場所になっているのだと感じました。
昼食の後、ボランティアガイドさんのお話を聞きつつ建物内部と外部の見学をしました。大ホールは使用中の為見学出来なかったのは残念でしたが、世界の中心のひとつとしてこの建物が建てられている話や、日本の民家を意識して12か所の出入口を設けて、どこからでも入れる建物である等いつでも誰でも入れる建物でありますが、説明を聞いて色々なことを考えて設計されていることがよく分かり、とても面白かったです。
(↑進修館全景)
(扉の取っ手は宮代町名産の「ぶどう」がモチーフになっている。)
(小ホール 見学風景)
(↑床にも「ぶどう」をモチーフにしたタイルが貼ってあります。)
進修館から歩いて最後の見学場所である笠原小学校へ移動しました。その途中に町民が考えた公衆トイレ「四季楽~メイドイン宮代トイレ~」がありました。20年以上前のトイレですが、町民の手が加えられている為か、とてもきれいに使われていました。こういった試みは大切ではないかと思いました。
(↑トイレ看板)
(↑トイレトイレ内部)
原小学校も他の小学校も同じように敷地内に入るには厳重にフェンスで囲まれていて、門も常に閉まっている状態ですが、校舎への入口は進修館同様どこからでも入ることが出来ました。また、はだしの学校ということで、至る所に足洗い場が設置されていました。子供の目線を重視した校舎つくりというコンセプトの通り、ただの四角い箱ということではなく、林立する柱には文字が描かれていたり、廊下の手すりには小さい椅子が組み込まれていたり、そろばんの玉のような遊具が組み込まれていたりしました。校庭のみではなく2階部分にもビオトープがあったり、米を育てる授業があるそうですが、2階の手摺は手摺機能のみではなくのその刈り取った稲を干すために造られたものであったりと至る所に工夫が施されていました。
(↑渡り廊下)
(↑足洗い場)
(↑廊下の椅子。左右に見えるのがそろばん玉の遊具)
今回は貴重な建物がぎゅっと詰まった見学会で、貴重な建物を拝見できてとても有意義な時間を過ごすことができました。今回女性委員会からは2人の参加でしたが、もっと多くの方に参加して頂き、他では見る事の出来ない建築物に触れて欲しいと思いました。