平成30年度活動報告
第61回建築士会全国大会 「さいたま大会」 その2 セッション報告
日 時:平成30年10月26日(金)
会 場:大宮ソニックシティ
(埼玉県さいたま市大宮区桜木町1-7-5)
テーマ「歴史に感謝 未来に約束 今埼玉に集う 彩り豊かな暮らしの創造』
参加者:2名
【セッション一覧】
・ヘリテージマネージャー・歴史まちづくりセッション
・地域実践活動発表会(青年委員会)
・女性委員会セッション
・空き家まちづくりセッション
・福祉まちづくりセッション
・防災まちづくりセッション
・情報部会セッション
・環境部会セッション
・歴史・景観まちづくりセッション
・埼玉セッション① 川越の歴史的建築物の修復‥―‥施主と設計者は語る‥―
・埼玉セッション② 木目込み人形を作ろう
この色のあるセッションは報告書があるセッションです
女性委員会セッションに参加して
報告者:長瀬 八州余
テーマ
『和の空間の魅力を探る 「魅力ある和の空間ガイドブック(WEB版)」制作記念トーク』
最初に連合会女性委員長の小野委員長より趣旨説明がありました。
(小野委員長の挨拶)
その後、施設紹介とパネルディスカッションです。
コーディネーターとして東京建築士会の多羅尾直子氏、
パネリストして4名、
北海道建築士会 早川陽子氏、
愛知建築士会 筒井祐子氏、
京都府建築士会 瀧口静氏、
岡山県建築士会 北山裕美子氏のメンバーで、今回の「魅力ある和の空間ガイドブック(WEB版)」の特徴等を話されました。
北海道建築士会・・・和洋折衷から学ぶ和室の魅力
北海道では和の空間と洋の空間が違和感なく続いていると今回シートを作成していて気がついた。
東京建築士会・・・・現代の住まいに活かしたい和の空間
愛知建築士会・・・・伝わる空間力
来ていただきたい、見ていただきたいので、来やすい場所の建築物を選びました。
見ていただければ、身近な建物として参考になるのではないかと思います。財力なくても材料を選ばなくても、デザインで勝負できると思っていただけるのではないかと思います。
京都府建築士会・・・京都の歴史を物語る数々の和の建築
検索したらすぐ出てくる物ではなく、地域の物で検索すると出てくる物で、気候風土に対しては同じスタンスで、バリエーション豊かな物を選びました。簡素な物、豪商な物、古い物など。
岡山県建築士会・・・岡山藩主池田家の地域で愛される和の空間デザイン
池田家を中心に選んだようになってしまったが、結果こうなっただけです。
岡山藩2代池田綱政(つなまさ)3代池田綱政(つぐまさ)親子が家臣の津田永忠に作らせたのが始まりで、土地を見て地域に合った物を作っていったと考えます。
(各県のリストはWEB版を、このセッションの資料は連合会のwww.kenchikushikai.or.jp/data/zenkokutaikai/61th_saitama/181030_saitama_session.pdf
をご覧下さい)
各県の発表後、この作業に携わって感じた事などを、話されました。
・自分の県の中に何があるのか考えるきっかけになった。
・身近にあったなあと再確認できた。
・今回の和の空間は割と昔の物が集まった印象なので、もう少し現代寄りの物のガイドブックを作れるとうれしい。
・WEB版なので、その場ですぐに調べることができて良かった。今回、愛知県は川越の見学に行ってきました。
・建築士会という団体を知ってもらえた。
・今回のおつきあいをきっかけに、維持管理についても相談をしてもらえる関係を築けた。
・英語版を作るともっと見てくれる人が増えると思われる。(今後の課題)
このように作成に携わった方にお話を聞くと、こんなことを感じながら作業をなさっていたのかとか、このような視点でまとめてみえたのかなど、いろいろなお話を聞くことができました。
(↑女性委員会セッション 受付の様子)
(↑会場の様子)
福祉まちづくりセッション
『福祉まちづくり建築士の育成に向けて』
-2025 地域包括ケアシステムにおける住まいの担い手・建築士とは-
報告者:桂川麻里
まず、住宅系の事例報告を7つ発表して頂きました。
岐阜県は女性委員でもある下川さんから岐阜県の取組み「私のまちの建築士をめざして」について発表して頂きました。前年度は病気の内容等も含めた研修を行い「福まち建築士」を誕生させ、今年度は福祉まちづくり建築士相談派遣制度を始めました。まず、活動内容を市町村の高齢福祉課や地域包括支援センターへあいさつまわりをし、その他にもまだまだ勉強不足の部分もある為、勉強会や事例紹介等も行っています。女性委員の中でも何名か「福まち建築士」として活躍しています。
愛知県は「福祉のすまい特別委員会のとりくみ」を発表して頂きました。地域ケア会議に出席出来るように活動し、医療従事者等ともに話し合い等をもって、色々な障害に対してどのようなことができるか模索しているそうです。問題点として、リフォーム詐欺に合う高齢者が多いそうです。建築士に対しては年8回に渡り講習を行っているそうです。
群馬県は「高崎市におけるリフォームヘルパー」を発表して頂きました。補助金について見積書が適正かどうかチェックするそうです。また、介護保険のパンフレットに「リフォームヘルパー」についての内容が記載されているそうです。一般の方が目にするものに建築士としての存在が記されているのは大変良い事例だと思いました。
東京都は「福祉まちづくり・バリアフリー特別委員の取組み」を発表して頂きました。
福祉用具や福祉施設の理解を深め、多面的にとらえられるように今年度は3つの内容「バリアフリー」、「認知症を知り、生活空間を考える」、「医学博士による健康長寿と住環境の関係」にて講習を行っていくそうです。他県の内容も参考に岐阜県でも行うと良いと思いました。
秋田県は「秋田花まるっ住宅サポートネットワークの取組み」を発表して頂きました。
平成15~17年で各地域においてバリアフリーコーディネーターを誕生させ、6チームで活動をしていたそうですが、現在は3チームだけとなってしまったそうです。如何にして継続させていくかが課題だと思いました。建築士だけではなく他の分野の方とも情報交換を行い、一般市民の方も参加しているそうです。岐阜県でも今後利用して頂く一般市民の方の意見も取り入れていけると良いと思いました。
石川県は「石川県におけるバリアフリー住宅改修等への支援について」を発表して頂きました。
他のセッションと重なっているため部会長さんが代わりに発表してくれました。建築士会での活動ではなく「バリアフリー総合研究所」という別団体で活動しているそうです。派遣のタイミングは事前の打ち合わせ、施工中の打ち合わせの2回で費用は研修センターから出ていて一式1万円ではありますが、年間で46件の依頼があるそうです。
徳島県は「バリアフリーデザイン研究会の活動」を発表して頂きました。
依頼を受けた後、事前打ち合わせの時から他の専門家と共に聞き取りや調査を行うそうです。平成5年から始めて現在までに800件の実績があるそうです。一番初めから色々な専門家と共に行うことで、施主様にとって負担が少なくなるので良い取組だと思いましたが、そこまでになるまで大変だったと思います。
(↑各県事例報告)
次にその他の2つの事例報告をして頂きました。
建築士会連合会からは「2020年大会に向けたピクトグラム(図記号)のあり方の会議と国土交通省のホテル・旅館に関する建築設計標準改定委員会の報告」をして頂きました。
2020のオリンピックに向けて、介助用ベッド、ベビーチェア、おむつ交換台、こどもお手洗、着替え台、簡易型オストメイト用設備、男女共用お手洗、カームダウン・クールダウンの8つのピクトグラムが追加されるそうです。
(URL参照 http://www.ecomo.or.jp/barrierfree/pictogram/picto_add2018.html)最後のカームダウン・クールダウンは図を見ても説明文を読んでも良くわかりませんでしたが、パニック症状をおこされた方がリラックスするための場所となるそうです。これらは国立競技場等に設置されるそうですが、今回このセッションに参加していなければ知らなかったので、2020年までに一般の人々にももっと知ってもらわないといけないと思いました。
兵庫県からは「福祉のまちづくりアドバイザーによるチェック&アドバイス制度について」報告して頂きました。
平成4年10月に「福祉まちづくり条例」を全国に先駆けて制定し、利用者目線で公共施設等を整備してきたそうです。研修を受けた建築士・社会福祉士・理学療法士・作業療法士等を専門家アドバイザーとして、また研修を受けた障害者等の利用者を利用者アドバイザーとして「福祉のまちづくりアドバイザー」として登録しているそうです。利用者アドバイザーは現在4人だそうです。
次に行政説明として、厚生労働省 老健局 高齢者支援課 福祉用具・住宅改修指導官 松本琢磨様に『地域包括ケアシステムと高齢者の住まい』というテーマで「地域包括ケアシステムにおける高齢者住まいの考え方と介護保険での福祉用具・住宅改修について」という内容でご講演して頂きました。
松本様は平成元年から作業療法士として、交通事故による高次機能障害や障害のある小児をどう生活に戻すかということを29年間行ってきたそうです。
介護保険を取り巻く状況、高齢者の住まいの考え方、介護保険の福祉用具、介護保険の住宅改修、福祉用具・住宅改修のあり方の5つの内容についてお話して頂きました。
出生率は世界的に減っているが、65歳以上の高齢者の数が日本は世界的一番多いそうです。ということはやはり、在宅で介護をしなければならない人たちが増えていくことは間違いないと思います。そう言ったことからも医療における方たちだけでなく住宅に係る私たちも建築士として出来ることは何かということを一人一人が考えていかなければならないと思いました。
(↑行政の説明)
埼玉セッション①
『川越の歴史的建築物修復』-施主と設計者は語る-
報告者:桂川麻里
【第1部 基調講演】~川越が今に至る経緯や活動紹介~ 荒牧澄多氏
川越の伝統的建造物保存地区は現在足場や仮囲いがない状態の写真が撮れないほど修復が随時行われているそうです。
川越は川越城下町を中心に歴史的エリアとして伝統的建造物保存地区があり、そのすぐ横に近代的エリアとして事業地が建ち並び、周りには農業地帯が広がっている、歴史・事業・農業がバランスよく整っている地域だそうです。
初期運動から単体保存へと移行していった背景には、大火によるところが大きいそうで、1633年(寛永10年)に川越大火があり、その頃に都市計画が確立されてきていて、1893年(明治26年)にも大火があり、そこで燃えにくい蔵造りの街並みが形成されていったそうです。その時に参考にしたのが東京の蔵造りで、東京の蔵造りを模したものだというのは以前より認識されていたそうです。
その中でも唯一江戸型の住宅として大沢家住宅が1971年(昭和46年)重要文化財として指定され、伝統的建造物保存地区の調査がなされ、「川越街並み委員会」が発足して30年となっているそうですが、長く活動を途切れさせることなく進めてきて、通常徐々に失われていく建物を守っていく活動をしてきた結果うまく保存がなされている気がします。
まちづくり規範を決めて、そのように徐々に改修していくことで、建物だけでなく看板等も伝統的建造物保存地区に合わせて地域の皆さんで変えていっているのはすごいと思いました。
(↑基調講演の様子)
【第2部 パネルディスカッション】
まず、守山登氏(設計)と松村定明氏(施工者)の歴史的建造物の修理事例をお聞きしました。
1件目はリフォームで配管を隠すための造作が既存の建物の構造材を痛めているという事例でした。そこは施主様としては普段利用するものではない客用の水回りだそうで、直すことによって施主様として何ら利益があるわけではないが、街並み保存のために協力して頂いている部分もあることに悩んだそうです。
2件目は2,400万掛けて新建材で改修されていたものをもう一度初期の建物に復元していくという物件でした。しかし、写真等の情報もあまり残っていないので構造体等から推測して復元したそうです。景観を壊さないように外観からは分かりにくいようにしてありますが、新耐震による耐力壁も設置したそうです。
3件目は3件の建物を移築してきて合体させているような建物で、最初は6,000万の見積でしたが仕様変更等により約半分の額で改修したそうです。
次に馬場崇氏(設計)と小島正巳氏(施主)に小島家店蔵改修工事をお聞きしました。
小島氏は川越で生まれ、以前の仕事の中で川越の良さを知り自分で川越の為に何が出来るかを考えて、朽ちている店蔵を購入し修復することにしたそうです。馬場氏は昔の写真と小島氏のイメージや写真を元に設計していき、それで終わりではなく工事中にも密に打合せをして復元していったそうです。施主様の意向の建物にしていくことが一番ですが、施主様自体が地域の事を理解し、歴史的住宅を修復できるのは最も良い流れだと思いました。
以上の流れの後でパネルディスカッションが行われました。
その中で、外部から来る方は川越の街並みを理解した所有者となりやすが、元々住んでいる方々は反対に便利さを求めてしまう為理解を得るのに苦労するというのはどこの地域でも同じだと思いました。川越自体では廻りに歴史的建造物が少しずつ増えているためそれを元に説得して理解を得やすいですが、すでになくなった建物が多い為一件だけを残すというのは非常に難しいことだと感じました。
また、修復となると施主様にとっては思っているよりも高い見積金額となることが多いですが、補助金が出るということでなんとか踏み出せているのが現状のようです。こうなると補助金がなくなった時にこの流れがストップするのではと不安にはなりました。加えて補助金は年度予算というくくりがある為年内完成ということで一番寒い時期に左官仕事等をすることになってしまうため厳しかったそうです。新築ですと工事期間が分かりますが、修復ですとめくってみないと分からないことが多いのに、後ろが決まってしまうのも疑問に思いました。
現在このような街をあげての活動を行っているところでも、修復の設計が出来る建築士を団体を作って活動することによってなんとか保っている状態だということですが、大工の数がそれ以上に減っているためそちらの団体を作っていくことが今後の課題だそうです。
これはどの地域でも課題だと思うので、色々な情報を集めていきたいです。
(パネルディスカッションの様子)
埼玉セッション②
埼玉の伝統産業のひとつ・・・岩槻のひな人形 木目込み人形を作ろう!!
報告者:長瀬八州余
指導者:経済産業大臣指定伝統的工芸品江戸木目込み人形伝統工芸士 森田和雄氏
岩槻の人形の始まりは江戸時代初期にさかのぼり、日光東照宮造営のために、全国から優れた工匠が集められ、江戸から日光へ向かう日光御成道の最初の宿場である岩槻にも、多くの工匠が訪れた。岩槻周辺には多くの桐の木が植えられており、それに目を付けて職人たちが、岩槻やこの周辺に定着し、桐のタンスなどを作るようになる。それらを作る中でできる桐粉(おがくす)を利用して人形作りがおこなわれるようになった。
岩槻で作られる人形は、衣装着人形とも呼ばれる「岩槻人形」と筋を彫り入れた胴体に布地を埋め込んでいく「江戸木目込み人形」の二つに大別される。今回は木目込み人形を作ります。
当日受付もあり、定員60名が埋まりました。
最初に簡単な説明があり、時間が限られているので、すぐに作業に入ります。
初心者用に切り込みの深いキットが用意されていました。
森田先生の他に先生の奥さんや、その他の先生、埼玉の女性委員も事前に練習して、教えることができるように準備されていました。
私は始めての作業でどうなるかと心配でしたが、どうにか時間内に作る事ができた良かったです。良いお土産になりました。
埼玉県建築士会女性委員の皆様、ありがとうございました。
(↑江戸木目込み人形と岩槻人形と今回のサンプル)
(↑作業風景)
(↑キットと先が湾曲しているはさみと布を溝に押し込む道具とボンド)
(↑できあがった作品。目の位置で随分と雰囲気がかわります。)