令和6年度(2024)活動報告
第66回建築士会全国大会 鹿児島大会 その2 セッション報告
女性委員会、環境部会、福祉まちづくり部会、景観まちづくり部会の4セッションの会場になっていました。
★第66回建築士会全国大会「鹿児島大会」
日 時:令和6年10月25日(金)
会 場:メイン会場:宝山ホール(鹿児島市山下町5-3)
サブ会場:鹿児島市中央公民館(鹿児島市山下量5-9)
セッション会場:カクイックス交流サンター(かごしま県民交流センター)
(鹿児島市山下町14-50)
大交流会:かんまちあ(鹿児島市浜町2-20)
テーマ:もえよ!建築維新
~たぎる地で築くみらい~
参加者:4名
歴史まちづくりセッション
第11回全国ヘリテージマネジャー大会に参加して
会場カクイックス交流センター 1階
報告者:髙野 栄子
テーマ「歴史と風土に根ざしたまちづくり~鹿児島の「麓」に見る取り組みと展開~」
鹿児島県には島津家が領内防衛の為に作り、地頭を廃した外城制度がありました。その外城区域内の砦の山裾に「麓」という集落が形成されていました。現在鹿児島県内に100箇所、宮崎県下にも20箇所の麓が存在しています。その中で現在4箇所の「麓」が重要伝統的建造物保存地区に選定されています。「知覧麓」「出水麓」「入来麓」「加世田麓」の4つの「麓」について各地区で取り組まれている方々が歴史的建造物の保存活用、歴史的景観の保存の為の取り組みについて語られました。
各地区の発表を聞く中で、数年前の大河ドラマ「西郷どん」で見た風景が思い出されました。道路の拡幅工事、河川の修繕工事、老朽化した民家の取り壊しなどいろいろな問題が起きた際にそれを機会に町並みや建物の保存や活用に乗り出し、今に至る活動が続いていました。
その中でも「出水麓」では伝統的建造物の空き家が増え、それを活用して店舗、ホテル開発などを実施されていました。分散型武家屋敷ホテルという事業でした。国や県の補助金を活用し金融機関からの借り入れを元手に令和4年より営業していました。また伝建地区内に住宅を新築する際のガイドブックを作成する取り組みもされていて、町並みを将来に繋いでいく活動に感心しました。
他の3つの「麓」についても守り繋いでいく為、ヘリテージマネジャーの方々がいろいろなイベントを行い行政と地域住民との架け橋になって活動していました。今回のセッションにて一番印象に残ったことは皆さんの熱意でした。
女性委員会セッション
思いっきりバージョンUP!Part2
~女性も青年も参加したい「魅力ある建築士会」とは
会場:カクイックス交流センター 3階
参加者:会場 86名 オンライン 8名 合計94名
報告者:小林 教子
女性委員会セッションは、誰もが参加しやすい、入ってよかったと思える「魅力ある建築士会に」するにはどうすればよいかの活動報告を、前回静岡大会と同様に事例紹介がされた。
建築士を対象とした活動として山梨県建築士会「セミナー&食事会」大阪建築士会「活動報告会」広島建築士会「プロジェクトD~挑戦者たちから」九州ブロック「会員増強企画」、
学生を対象とした活動~未来の建築士育成~事例報告として、岐阜県建築士会「たくみ女子会」静岡県建築士会「高校生交流会」北海道建築士会「NPOとコラボ企画」、子どもたちを対象とした活動~福島建築士会「次世代育成プロジェクト」栃木県建築士会「みやJOYけんちく博」、一般市民を対象とした活動~建築士活動への理解浸透~和歌山建築士会「サンタと巡る和歌山県庁本館」
岐阜県からは「たくみ女子会」について、長瀬さんが、今年度開催予定のチラシを配布するととともに紹介し、さらに静岡県青年委員会がおこなっている「高校生交流会」についても東海北陸ブロック会女性建築士協議会の前運営委員長として紹介をされた。
集客が特によかったのは、福島建築士会のお菓子の家をこどもたちに作ってもらう活動で、平成29年の山形建築士会の「お菓子の家づくり」をそのまま真似をしたということであるが、何年もの継続を経て行政まで巻き込んだ市のイベントにまでしたそうである。末は理工系女子をふやすとい野望?もあるようであった。
九州ブロックは活動の補助費を出し、ブロックで各県の会員の増強を後押ししているという事例であった。
ただ、どの事例も効果はいま一つのようで、会員の増加につなげられたのはわずかであった。
進行担当者が最後にまとめていたが、「楽しい」「おいしい」「お金」がキーワードになりそうで、ポイントは周知の方法としていた。
(↑ 大阪建築士会紹介の様子)
(↑ 会場の様子)
福祉まちづくりセッション
報告者:桂川麻里
テーマ:小規模店舗(施設)のバリアフリー化 課題と展望
~誰もがふつうに暮らせる地域社会への貢献について~
場所 :カクイックス交流センター 3F 中研修室2
出席者:会場1名
(↑ セッションの様子)
今年の福祉まちづくりセッションは「日本福祉のまちづくり学会未来型UD戦略特別研修委員会」とのコラボ企画としてセッションを行いました。
流れとして講師の方のお話を聞き、全国の建築士の方の活動報告を聞き、最後にディスカッションを行いました。
最初は東洋大学名誉教授の髙橋儀平氏の「小規模施設のバリアフリー化について~我が国の現状や問題点など~」を聞きました。
法律の変遷からお話し頂き、思ったより以前からバリアフリーについての内容が盛り込まれていましたが、絶対的人数の少ない障がい者の方達のことは最低限のことしか行われて来なかったのだと思いました。
小規模店舗のバリアフリーの改修についての事例もたくさんあり、今後の仕事での気を付ける点、気にしなければならない点を学ぶ事が出来ました。
髙橋儀平氏のお話しはオンラインで聞いたことがありますが、いつも何かしら気づかされることがあります。
また、著書も多数ありますが、読みやすいので皆様にもお手に取って頂きたいと思います。
(↑ 髙橋儀平氏)
次は、NPO法人「e ワーカーズ鹿児島」の理事長である紙屋久美子氏の「かごしまバリアフリーツアーセンターの活動について~小規模施設のバリアフリーの有効性~」をお聞きしました。
e ワーカーズ鹿児島の業務内容は鹿児島県内全域の宿泊施設や観光施設、交通機関等の現状調査及びその情報発信だそうです。福祉住環境コーディネーター2級を取得し、宿泊施設や観光施設のバリアフリー化に向けたアドバイスも行っているそうです。
小規模の宿泊施設や観光施設だとどうしてもバリアフリーに対する予算が足りなかったりしますが、「今出来る事への提案」をするということでした。
そのためには色々な良い事例を見て参考にすることも大事だと思いました。ハードでダメならソフトでカバーする方法も設計者として説明出来るようにしたいと思いました。
また、余談ですが今回の話を聞いた後に鹿児島市内の市電に乗ったら、車いす可能な乗降場かどうか分かるようになっていました。市電なので広く乗降場を取れない場所があり、車道との関係で広くするのは難しいですが、情報が分かりやすいと利用できる出来ないを自分で判断出来るのだと実感しました。
(↑ 紙屋久美子氏)
次は全国の建築士会の活動報告です。会場で配布される「セッション資料集」には北海道・埼玉・群馬・東京・神奈川・新潟・岐阜・大阪・宮崎・沖縄の活動報告が掲載されていますが、それとは別に小規模店舗に関することを4名の方に発表して頂きました。
この4名は全国体で知り合って、色々な情報交換をしてお世話になっている方々です。下記にもありますが、バリアフリーを堅苦しくではなく、みんなで楽しめるためにはどうしたら良いかと捉えてバリアフリーと向き合っている方々だと思います。
1人目は埼玉の本多健氏で「高齢者、障害者等の円滑な移動等に配慮した建築設計基準に関するフォローアップ会議」についてお話し頂けました。
法等の整備だけで終わらず、その内容について点検、改善をしていくことの重要性がよく分かりました。また、バリアフリーの概念を誰もが「移動できる」ではなく誰もが「楽しめる」こととして捉えるのは大事なことだと思いました。
(↑ 本多健氏)
2人目は東京の川口孝男氏です。連合会建築士会の福まち部会の部会長をしています。今回は士会の活動ではなく、「自立支援・協働ロボットが開くバリアフリーの世界『分身ロボットカフェDAWN ver.β』視察体験報告」をして頂きました。分身ということで、ロボットを動かす「パイロット」は自宅からでも操作可能です。一番良いなと思ったのは、配膳は出来るがうまく話せなくて接客業が出来ない方が、上手に話せるが配膳が出来ない方が小型分身ロボットの中で接客するという、補いあって配膳が出来るということでした。東京へ行くことがあれば予約して行ってみたいと思いました。
(↑ 川口孝男氏)
3人目は宮崎の岩浦厚信氏で「宮崎市の小規模施設のバリアフリー化の成果について」お話し頂きました。「昔は公共施設と病院にしかバリアフリートイレがなかった」という言葉を聞いて今でも高齢者や障がい者は外出するのが難しいですが、更に難しかったのだと思いました。
ただ、現在はガイドライン等でユニバーサルトイレが増えていますが、ハード面でただ付いているだけ、ソフト面ではそこまでの通路にものを展示してありそこまでたどり着けない等当事者が使えない状態が多々あるように思います。
自分もそうでしたが当事者との関わりがないと思いが至りませんでした。万人にぴったりの事は出来ないと思いますが、色々な人に思いをはせて設計して行きたいと思いました。
(↑ 岩浦厚信氏)
4人目は京都の村松徹也氏に「福祉のまちづくりの更なる発展を」についてお話し頂きました。
元行政としてのお話しと、現在も行政との連携を続けている方です。
こういった方がみえる行政はバリアフリーがうまく進んでいくのだと思いました。
こういった良い前例を持って岐阜でも行政とのかかわりを持っていけたら良いなと思いました。
(↑ 村松徹也氏)
続いて髙橋氏、紙屋氏も交えて全員でディスカッションを行いました。色々な話で盛り上がりましたが、私が一番心に残ったことは小規模店舗だとトイレは男女共同で1つしかなく、バリアフリートイレまでのスペースがないというところはたくさんありますが、そういった時でも近くの公共のトレイを把握しておいてそこを紹介出来るようにすれば、小規模店舗でもみんなで楽しめるということでした。ほんのちょっとのことなのに「気付く、気付けない」、「知っている、知らない」の差は大きいのだと思いました。
仕事の合間に行く全国大会は大変ですが、井の中の蛙とならないように参加出来る限り全国大会には参加出来たらと思います。