令和4年度(2022)活動報告
第64回建築士会全国大会 あきた大会 その2 セッション報告
日 時:令和4年10月14日(金)
会 場:あきた芸術劇場ミルハス
(秋田市千秋明徳町2-52)
テーマ:『建築』で挑戦!郷土のこれから
~け、け、けの秋田で まずかだれ~
参加者:4名
交流セッション10プログラム有る内の
女性委員会・・・・・・・・・・・・・長瀬
景観・街中(空き家)まちづくり・・・伊藤
福祉まちづくり・・・・・・・・・・・桂川
歴史まちづくり・・・・・・・・・・・高野
以上4つに参加しました。
女性委員会セッションに参加して
報告者:長瀬 八州余
和の空間の魅力を探る ふぁいなる~これから~
「魅力ある和の空間ガイドブック(WEB版)」の活用
会場:あきた芸術劇場ミルハス 地下1階 小ホールB
参加者 対 面:登録75名 実質60名
WEB:27名
開会の挨拶で本間連合会女性委員長の挨拶に始まり、開催県の秋田建築士会女性委員長松橋さんの挨拶があり、令和4年度第31回全国女性建築士連絡協議会東京大会の報告が、筒井副委員長より、リモートにて有りました。
(↑本間委員長の挨拶の様子)
(↑秋田県建築士会 女性委員長 松橋様の挨拶の様子)
(↑筒井副委員長の報告の様子)
その後、パネリスト4名(宮城県、山形県、栃木県、石川県)による各県の建物の説明がありました。宮城県の石川さんはリモートでの参加でした。
宮城県:角田市郷土資料館(旧氏丈邸)
海商の館 旧亀井邸
山形県:芭蕉、清風歴史資料館(旧丸屋・鈴木弥兵衛家)
旧風間家住宅「丙申堂」
栃木県:日光田母沢御用邸
瀧澤家住宅
石川県:金沢城公園玉泉院丸庭園 玉泉庵
武家屋敷跡野村家
【宮城県】
今回紹介する建物は、共に栄えた商家の邸宅であるが、内陸部と沿岸部と対照的な立地であるが、繊細な意匠が多用されている点が共通している。
(↑宮城県の発表の様子)
【山形県】
松尾芭蕉が奥の細道で一番長く滞在した尾花沢市の説明から始まり、今は芭蕉等の歴史資料館として活用されている、江戸時代からの建物が残っている事に感動すると話されました。雪深い尾花沢で一冬越える毎に倒壊していく空き家を見たとき、江戸明治の建物が永く残っている意味を改めて考える機会になったという事でした。
山形県から紹介の7件の建物をB5版の折りパンフレットに作成して、会員以外の人にもお知らせするように、皆さんに渡していますとの説明を受けました。
【栃木県】
物件を選定するに当たり、「和の空間」とは何かを改めて考える事になりました。増改築や改修などを経てもなお伝統を残し、古くから人々に愛され残されてきた建物に何かヒントがないかという観点で選定を始め、その過程で建物の保存活用の重要性についても考えましたとの事でした。
【石川県】
和の空間ガイドブックには多くの建物が紹介されていますが、近年で全くの新築建物の紹介となると数件しかなく、その中の一件が玉泉庵です。
石川県や金沢市は「石川の伝統的建造技術を伝える会」や「金沢職人大学校」等を作り、伝統技術を守り伝える事をしているという説明を受けました。
各県とも、「魅力ある和の空間ガイドブック(WEB版)」を作成するに当たり、いろいろと試行錯誤しながら建物の選定をされていることがわかりました。
今回は対面とWEBとの併用での運営で、プロの方が携わっているということで、全建女の時のように音声が届いていないということはなかったようでした。
担当の皆様、ありがとうございました。
(↑受付の様子)
(↑会場の様子)
景観・街中(空き家)まちづくりセッションに参加して
報告者:伊藤 麻子
会場:にぎわい交流館AU 3階 多目的ホール
●「街中の再生まちづくりと景観~区画整理に向き合って~」埼玉県建築士会 中野氏
古民家「旧七ツ梅酒造」は「まち遺し深谷」の管理で13件の店舗が入って運営されているが、この度市の区画整理にかかり保存が困難となった。この問題に良いアドバイスをいただけないか。 意見→行政に理解を求め続けるのが必要。建築士会は力がない?。
●「熊本市城下町エリアにおける街中再生の取り組み」 熊本県建築士会 豊永氏
NPO熊本まちなみトラストで地域遺産活用に取り組み、ヘリテージマネージャーも全国に先駆けて多く誕生したが、H28年の地震で多くの被害が出て、経済的に保存が困難になっている。そこで熊本市で「くまもと歴史まちづくり計画」を策定し国からの補助金で保存を進めている。
●「秋田杉を活かした景観まちづくり」 秋田公立美術大学 菅原氏
自身は成人してから秋田に住んだが、杉の良さにはまり、「秋田杉恋プロジェクト」を発足、景観デザインセミナー&コンペ」を行った。結果、秋田駅西口バスターミナルの木質化に成功した。
セッションを終えて・・・其々発表の内容は興味深いもので、取組む課題には大いに共感しました。特に行政を巻き込むことで補助金の活用を可能にしたり、活動の周知を活発にしたりといった熊本の活動は進んでいる印象でした。ただ今回の内容は歴史まちづくりの方に寄っていて、もう少し空き家についての報告、議論が欲しかったと思います。
福祉まちづくりセッションの報告
報告者:桂川麻里
場所 :にぎわい交流館 AU 4階 研修室1.2
出席者:福まち建築士 コメンテーター2名 (会場1名・オンライン1名)
会場全出席者:38名
福祉まちづくりセッションは下記の3部構成の盛りだくさんの内容ですすみました。
第1部:国交省の「高齢期の健康で快適な暮らしのための住まいの改修ガイドライン」と
高齢者住宅協会『住まいの提案力UP講座入門編・応用編』
第2部:国交省「高齢者・障害者等の円滑な移動等に配慮した建築設計標準」
第3部:社会から必要とされる存在に向けての意見交換
第1部は昨年度の全国大会で2019年に「高齢期の健康で快適な暮らしのための住まいの改修ガイドライン」を国交省が策定した話から、その中で定義されている「①長く健康に暮らせる住まい」、「②自立して自分らしく暮らせる住まい」、「③介護期になっても暮らせる住まい」、「④次世代に継承できる良質な住まい」ということが勉強できる良い講座があるという話が出て、高齢者住宅協会の『住まいの提案力UP講座』が紹介されました。それがオンラインで講座だった為、47都道府県の福まちのエリアリーダーで受講してみようということになりました。その報告を岐阜が発表することになり発表してきました。入門編は無料ですがテキストは自分でダウンロードして、手元においておくと役立つ内容がたくさん入っています。応用編は有料ですが、他の人の営業トーク的なことが聞ける貴重なチャンスだと思います。
第2部は「高齢者・障害者等の円滑な移動等に配慮した建築設計標準」(※通称赤本)の改定の内容について説明して頂き、また本多さんはその内容に意見を言える立場である為、5年に一度程度に改正がある建築設計標準について、より良い意見等を福まちで募集しそれを伝えることをしていきたいとお話し下さりました。
その次にその赤本の改定内容について、国交省の担当の方による出張講座をオンラインで行なった神奈川にその時のお話をしてもらい、その時もオンラインであった為、全国の福まちリーダーにもお声を掛けて頂き、参加した方のお話も聞きました。そういう出張講座を岐阜でも利用できたらと思いました。
「公共建築のバリアフリーワークショップ開催の意義」については徳島の河村さんからお話しして頂きました。「鳴門市ユニバーサルデザイン点検会」を開催していて、点検についての内容を建物の管理者に伝えることで、全てが改善されるわけではないが、何度も行うことによって改善されていくことが分かりました。
「災害時における避難施設、障害者の避難について」は岐阜県が行っている「応急仮設住宅」の検証の発表をしました。全国各地で大雨や地震により「応急仮設住宅」で暮らす高齢者や障がい者はただでさえストレスをためがちですが、その軽減も出来るようなプランを福まち部会で出来ないかという呼びかけのきっかけになると良いということで発表させて頂きました。私自身は仮設住宅で暮らしたことがないですが、全国から意見が出れば実際に暮らしたり、身近な人が暮らしていたという話を聞いて暮らしにくさを改善できるプランが出来れば良いと思います。全国から意見が出れば実際に暮らしたことがある方や、身近にいたことがある方の話を聞いて全国的に良いプランが出来れば良いと思います。
また、京都の「バリアフリー情報の発信と宿泊客の増加」についてお話し頂きました。この講演も福まち部会に紹介され、私も参加させて頂きました。この詳しい内容は別途下記URLを参考にしてください。
https://www.gifukenchikushikai.or.jp/iinkai/machi/-2022-1/post-3378.html
第3部は、愛知県の『医療従事者と建築士の連携~福祉の世界における建築士の守備範囲~』のお話をして頂きました。資料として「~医療従事者と建築士との新たな連携を目指して~」、「医療従事者と建築士との新たな連携を考える」、「既存住宅状況調査 福祉版 実施マニュアル」を頂きました。マニュアルは報告書の書式や図面を描くポイント等がとてもわかりやすい資料となっています。この活動は補助金を頂いて行った事業で、それをボランティアで終わらせるのではなくどう業務に繋げるかを考えながら進めたきたそうです。何件か行って「患者にあったリハビリ計画」「住環境の課題が分りやすい」等の付加価値が得られたので多職種の方々が建築士とも連携する大切さを理解して頂いたようです。岐阜では多職種連携がうまく進んでいません。愛知県では県内で終わることでなく、成功例を持って、他県でも多職種連携が出来るようになって欲しいと思ってくれています。「建築士って何をやる人?」と言われないよう「福祉の世界における建築士の守備範囲」を建築士以外の方にも知ってもらい、高齢者や障がい者等が遠回りせずより良い生活を送って欲しいと思います。
続いて宮崎県で行っている「1.国民スポーツ大会施設への障害者等の意見の反映活動」、「2.宿泊施設バリアフリー化促進事業のバリアフリー相談」、「3.多様な人たちが宮崎観光を楽しむための情報収集活動」、「4.重度障害者住宅改修助成事業」の活動内容を紹介して頂きました。重度障害者住宅改修助成事業では工事の中の経費として設計料を受け取っていると言っていましたが、設計料がないという訳ではないですが、介護保険制度でも設計料は経費としてしか名称が出てこないので、設計費として名称が出てくるシステムが必要ではないかと思いました。
また、九州沖縄自治体の高齢者障害者等に対する住宅改修助成制度について調べて発表して頂きました。助成制度の中で建築士が関わっているのは福岡県と福岡市、熊本県が相談を受けることになっているが、その他については助成金があっても建築士は関わっていないということが分かりました。関わっていないことで問題はないのかどうか等今後皆さんからの意見を聞いてみたいと思いました。
歴史まちづくりセッション
全国ヘリテージマネージャーネットワーク協議会に参加して
報告者:高野 栄子
会場:アトリオン 4階 音楽ホール
私は今年度岐阜県のヘリテージマネージャー養成講座に参加しているので、タイムリーに興味のある歴史まちづくりセッションに参加しました。
セッションは秋田県内で、ヘリテージマネージャーとして活動している4名の方々が活動報告をされました。秋田県内の小坂町、大館市、秋田市、横手市で皆さん活発に活動して見えました。
特に印象に残ったのは小坂町の「明治百年通り」のお話でした。歴史的建造物の中でも「近代化遺産」という分野で、明治期の産業建築を中心として文化財登録をすすめられていました。「活用なくして保存なし」と言われるように保存と活用を両立させて、観光に活路を得ておられました。平成3年から徐々に計画を進め、ほぼ四半世紀に渡って活動をされ充実した内容で目標を達成されたようです。
秋田県の事例を伺うと、どの町のどの方もものすごい熱量で活動を語られます。しかも10年20年と長きに渡り活動されています。あまりの熱意に所定の時間を過ぎ、しっかり延長してのセッションでした。
岐阜県ではヘリテージマネージャーの制度もあやふやなまま現在に至りますが、これからはぜひ他県のように活動し、ひとつでも文化財として建物を登録し、保存、活用していくお手伝いが出来たらいいなと思いました。