2024年度
2024年度 ぎふ木造塾 第2回見学会
滋賀県 木造建築設計研修ツアー
開催日時:令和7年1月25日(土)8:15~18:30
開催場所:滋賀県林業会館⇒洗心寮(食事)⇒守山市北部図書館⇒多賀町中央公民館「結の森」
参加者 :42名(うち学生6名)
【滋賀県林業会館】
滋賀県林業会館 外観 滋賀県林業会館 大会議室
設計者の宮村氏 説明中 設計者の宮村氏 説明中
「建物の老朽化に伴う建替えであったが移転しての新築だったこと。設計者と施工を一体に提案する、デザインビルドという方式でのコンペだったので、木材の調達から工期、建築費までを発注者の要望を満たす提案を求められたこと。要望には、建築費を抑えること、維持コストがかからないようにすること。そのため、採用された構造がレシプロカル構造という、一般に流通しているサイズの木材でも柱のない大空間を実現できる構造の採用だったこと。また、将来、必要になってくる外部の修繕工事のときでも、外壁を部分的に張り替えることが出来るよう工夫されていること」などを、設計者である、宮村太さんに現地を回りながら説明して頂きました。
【洗心寮】
洗心寮での昼食を取りながらの交流 洗心寮の昼食
【守山市北部図書館】
※守山市立北部図書館 見学は30分程度の自由行動としました。
森山北部図書館を見学しました。建物は市立図書館分館と公民館を併設した建物であるため、さほど大きい建物ではない。元々あったRC建物に木造を増築した(既存476.00㎡+増築560.90㎡)。設計者は芦澤竜一設計事務所・水原設計事務所JVとなっている。建物外観は地元のランドマークである近江富士(三上山)をモチーフとしている。
外観写真右側の比較的軒の低いところがエントランスとなっている。
低い側のエントランスから館内への動線にそって曲線的に天井高が上がっていき中央部受付付近が2層分の吹き抜け空間となっている。天井は集成材梁が等間隔でリズムよく架構されている。三次曲線を描いた屋根面はそのまま天井面となっており空間に変化をあたえている。
正面入口より中央受付につながる吹抜 中央部吹抜より見上げ
雁木状に配置した南面の窓も特徴的でエントランスより中に進むほど明るい窓が印象的になる。設計コンセプトにある「風のながれ」が感じられる内部空間であった。
「風のながれ」を意識した断面構成
【多賀町中央公民館「結の森」】
多賀町中央公民館「結の森」集合写真 多賀町中央公民館「結の森」
見学当日は、「公民館祭り」が開催中で、地元の人たちが製作した作品の展示や演奏などで、全館が使用されていました。大ホールなどの屋根部分には鉄骨の梁が使われており、すべてが木造ということではありませんでしたが、大規模木造建築らしく、木材が表しで使われた、柔らかい印象の建物でした。午前中に見学した、滋賀県林業会館とは、設計思想の違いを明確に感じました。林業会館は、維持コストを抑える工夫が随所に見られましたが、「結の森」では、外壁の雨掛かり部分、外壁改修工事の想定、などに違いが見られました。
ゼロカーボンへの取り組みが進んでいく中で、中大規模木造建築物はこれからも増えていくと思うので、このような見学を続けていく必要があると思います。
2024年度 ぎふ木造塾 第1回見学会
郡上・美濃 木造建築設計研修ツアー
開催日時:2024年11月16日(土)8:15~18:30
開催場所:美濃建築製品センター(株)、(株)三樹林業⇒郡上市総合スポーツセンター⇒流響の里⇒郡上八幡城下町 (株)スタジオ伝伝⇒美濃市うだつの上がる町並み (一社)インク⇒美濃和紙あかりアート展
参加者 :35名(うち学生8名)
チェーンソーでの丸太伐りの様子
令和6年度ぎふ木造塾の木造建築設計研修は、昨年までの研修ツアーアンケートで学生さんから要望が多かった、「空き家活用」や「改修」について学べるプログラムを軸として計画しました。それに加えて木材の川上を理解するために林業と製材の学習も取り入れ、さらに丸太を活用した中大規模構造建築の見学も含む研修ツアーとしていきました。なお、今回の研修ツアーは岐阜県木材協同組合連合会委託事業の一環でもあります。
天候を気にしながら岐阜駅を出発。バスの中では、本日の注意事項を説明し、ぎふ木造塾部会員が自己紹介をおこないました。その後、最初の研修先の美濃建築製品センター(株)さんと(株)三樹林業さんの概要を紹介しました。また、事前に記入して頂いた学生参加者からの「建築士への質問」に対し回答する時間を取り、なかなか鋭い質問には回答に苦慮する場面も見られました。
郡上市白鳥町にある美濃建築製品センター(株)さんに到着しました。ここではまず(株)三樹林業さんより元口・末口、1番玉・2番玉など用語の解説と山の現状について説明を受けた後、実際に丸太をチェーンソーで伐る実演をしていただきました。チェーンソーの爆音、木を伐る匂い、飛び散る木くずなど普段あまり目にしない光景を見て、体で感じることができたのではないかと思います。時間の関係で実際の伐倒見学とできなかったことが心残りです。
その後、そのまま美濃建築製品センター(株)さんでの製材見学です。岐阜県の製材所の数は全国一位で、とりわけ中小規模の製材所が多いのですが美濃建築製品センター(株)さんはその中の一つとなります。実際に丸太が製材され、角材や板材になっていく様子を見学し、こちらの製材所で特徴的な除湿式遠赤外線乾燥も見せていただきました。稼働中の木材乾燥器の中に手を入れて温度を体験できる機会はほぼ無いため貴重な体験になりました。
丸太が製材される様子を見学 除湿式遠赤外線乾燥機の説明
次に南下しバスの中で郡上市総合スポーツセンターさんと(株)スタジオ伝伝さんおよび郡上踊りの紹介をした後、郡上市総合スポーツセンターさんの見学です。ヒノキの丸太と唐松集成材にスチールの複合トラス+CFT(コンクリート充填鋼管)造でできた中大規模建物で、屋根がヒノキ丸太・唐松集成材にスチールの複合トラスとなっています。ダイナミックな架構に驚くとともに、竣工が2001年3月ということで参加者の学生は「全員まだ生まれていない」ということにも驚き、さらに参加者の中には「50歳の時にこの工事現場を見学に来た」という方もいらしたのにも驚きました。また、今回ご対応いただきました森様のご厚意により通常は一般には公開されていないプールエリアを特別に見学させていただきました。
ヒノキ丸太と唐松集成材にスチールの複合トラス プールエリアを上から見学
流響の里で昼食を取った後、郡上八幡 町屋敷越前屋で、(株)スタジオ伝伝さんより本日の予定をご説明頂いた後、チームまちやさんへ移動しチームまちやさんの行なう空き家対策に関する話を聞きました。そして南町で今後改修計画に取り組む建物の中で(株)スタジオ伝伝さんの代表:藤沢様、設計監理:松本様より町並みの再生や空き家対策の講義を受けました。その後、郡上城下町を歩きながら既に運用されている物件の一部(木の離/Art&Hotel Kinori、スタジオ伝伝事務所、平野トイレ)をまち歩きと共に郡上城下町の南町から北町まで見学し、今まさに改修工事中の現場も北町で見学しました。20分程度の間に、改修前~改修工事中~改修後という状況を一度に見ることができました。
流響の里での昼食 町屋敷越前屋での説明
チームまちやでの説明 町並みの再生や空き家対策の講義
木の離/Art&Hotel Kinori ダイニング 木の離/Art&Hotel Kinori キッチン
その後、さらに南下しバスの中で(一社)インクさんの紹介をした後、美濃市WASITA MINOで(一社)インクさんの代表:中島様からインクが行っている、うだつの上がる町並みでの再生リノベ活動などの講義を受けた後、うだつの上がる町並みを移動しNIPPONIA美濃商家町を見学しました。見学後は自由行動となり、美濃和紙あかりアート展を散策し、その後バスへと戻り岐阜駅へ帰着しました。
WASITA MINOでの説明 WASITA MINOでの講義
WASITA MINOでの講義 NIPPONIA美濃商家町見学
岐阜県には重要伝統的建造物保存地区が6か所あり、そのうち2か所(郡上市郡上八幡北町と美濃市美濃町)を巡った研修ツアーとなりました。時間配分的にかなり厳しいツアーであったため、研修先の施設の方や講師の方々にもご不便や不完全燃焼だったかもしれません。また、十分な時間が取れなかったことが参加者の皆様方に対しても大変心苦しく感じています。
ただ、怪我や事故等無く天候も何とか持ちこたえられたことおよび、参加いただきました皆様には感謝いたします。ありがとうございました。
次回、ぎふ木造塾では、2025年1月25日(土)に滋賀県ツアーを行います。既に募集も開始しておりますのでリピーター様も御新規様も是非ご参加をお願いいたします。
ぎふ木造塾部会員一同