2012年度
2012 第3回講義を終えて
テーマⅠ:「日本建築の源流-中国の華北・華中・華南の建築-」
テーマⅡ:「禅宗の建築-美濃地方の禅の建築-」
講 師:愛知工業大学 教授 杉野 丞 氏
第3回の講師:杉野先生は日本建築及び中国建築についての調査研究を行っています。
日本建築については、中世から近世の社寺建築に関する研究を行い、特に、近世社寺建築については全国規模で資料を収集し宗派性・地域性・時代性などについて分析・検討を行っています。また、中国建築については、中世に招来された奈良東大寺の再建に用いられた大仏様式の源流を求めて、中国福建省・広東省・広西省・四川省などの寺廟建築の研究を行っています。
今までのぎふ木造塾の中で「建築史」という括りの講義がなかったということで、深く掘り下げた内容ではなく、「全体的な流れを知って欲しい」ということ、「身近な建築物のことを知って興味を持って欲しい」とのことで、今回は二つのテーマでお話して頂きました。
日本建築の源流として一口に中国からの伝搬と言っても、それぞれの時代にそれぞれの地域の建築が伝搬されていると初めて知りました。また、木造の位が高いということで石造りの塔をわざわざ木造のモチーフにしていることが興味深かったです。
美濃地方の禅の建築は、これまで感覚的に京都や愛知の方が多いと感じていましたが、妙心寺派の寺院が全国的にみて美濃地方に最も多いということに驚きました。
今回の講義はさわりだけでしたが、中国建築と日本建築の継手の違いや、日本の五重の棟などの心柱が中国建築には存在していないので、その技術の違いをもっと細かく知りたいと思いました。
<受講生の声>
・私の宗派は臨済宗妙心寺派であり、本日の話を興味深く聞かせてもらいました。また、以前改修を行った事のある美濃市清泰寺、岐阜市霊松院なども紹介してもらい、改めて美濃の臨済宗を知る事ができました。
・中国と日本の建築の歴史を分かりやすく知ることができました。
一般常識程度を少し詳しく述べたのかなと思います。
・石造であっても、木造の組み物をまねて造っているのが興味深かった。
中国の仏教建築が日本の寺の建築と深くかかわっていることがよくわかった。
2012 第2回講義を終えて
テーマ:「自然素材の扱い方と建て主直営方式について」
講 師:㈱シテイ環境建築設計 高橋昌巳
高橋氏は、東京都の出身で、芝浦工業大学、建築学科卒業、馬場1級建築士事務所勤務後、1987年シティ環境建築設計設立の代表者でもあり、又、芝浦工業大学・建築工学科非常勤講師も勤めみえます。
地元の木を使用、自然素材・伝統工法・竹小舞土壁の家で、気候風土に合った家造りです。
又、建て主と直営方式・各業者別分離発注方式・約25年間、独自の家づくりを続けてこられ、住み手が工事に参加できる方式は在るだろうか・設計者、素材業者、職方、役割はなんだろうか・材料の値段や職人の技量差を評価される仕組みは無いのか・構造の安全性、素材の健康性、室内の快適性をどのように確認するか・などの疑問点からの今回の講義内容でした。
初めに、伝統工法のご説明で、竹小舞土壁の家・土台150角柿渋防腐剤使用・梁は赤松乾燥3年材・吉野杉200年材・外壁は焼杉t40やとい貼り・浴室壁青森ヒバ、サワラ・又現場で輪島拭き漆材と自然素材工法の話でした。
長寿命住宅の工事監理内容では、庇の長さを1.2m~1.5m・柱と壁部分は変成シリコン打ち・屋根下地にアスファルト17kg+コロシートで通気性を考慮した対応・棟瓦に鉛シート貼り・外壁は土佐漆喰鎧工法(クラックが入っても外部に水が抜ける為)・間伐材60年材は抜け節が多い80年材で対応・畳は藁を2年間乾し五層・土台は建て主で柿渋防腐塗装処理・土間タタキはサンワードで表面温度15℃前後との事です、最後には、竣工式を盛大に開き、建て主、設計者、職方で建物経年劣化対応の事を考えての開催でした。
休憩後は、分離発注方式の話で大工工事の見積内容、構造人工、雑人工・見積変更金額の増減内容対応記入方法・工程表作成方法、契約書、銀行融資、月付の支払い金額集計・平面図、立面図、断面図、伏せ図の内容説明とコスト、品質、施工、業者間交流まで徹底した監理方法の話でした。
質疑&応答で( なぜ真壁の家を建て続けるのか ?)を考え、結論は出ませんが、柱梁現し、漆喰塗り、燻し銀瓦の風景は日本独自で原風景のように思いますとの事でした。2次会は、大工、木材工務店、設計者などで本音の話し合いの大変盛況な充実・時間でした。
今後木造分野は、特徴のあるスタイルを発信していかないと、経営的に厳しい時代です、意欲のあふれる地域で仲間つくりをし、建築産業の復活を願っての講義でありました。
翌日に高速バスを利用して、郡上八幡の町並みを探索し、清潔で雰囲気のいい町ですと返事がきました。
〈受講生の声〉
・高橋昌巳講師の講義は、25年の実績に裏付けされていて説得力がある。若手の設計士は、こういう講習会に参加して、もっと勉強してほしい。10年も持たないような水仕舞いの納まりや、まちがった素材の選択、お施主さんの悲劇を生まないように
・普通の人が普通の技術で施工するとの話しに 同感できる
・面白い!とにかく面白い講義です。大工の私には非常にためになる話です。懇親会にいけないのは残念です。こういう仕事がしたい・・・
・設計事務所として、社会的信用を得る方法として施主や職人に対してオープンであり、フェアである事は非常に重要ですが、実践されている所は少ないなか、ここまで徹底して実行されている高橋先生のお話に、非常に刺激をうけました。
・設計、コスト管理 施主や職人さんとの関係のあり方が、自分が理想とするものに近く、とても勉強になりました。
・「長寿命の家をつくる」ということは、「修理をしながら、住み続ける」ということで、そのために建て主が職人と直接つながることが必要ということがわかりました。
・材料を自ら仕入れる設計事務所の形態は今後の新たな事業の在り方と思う
2012 第1回講義を終えて
テーマ:「建築と庭」
講 師:造園家・荻野 寿也(荻野寿也景観設計 主宰)
第1回の講師:荻野先生は建築家の方々との信頼があつく、多くの仕事を手掛けられ、大阪を中心にご活躍中です。
「庭」の構図を生け花の発想のように考えられ、建築をより美しく見せるための必要な空間と言う事を、講義を通じ感じ取る事が出来ました。
暮しの中で自然を感じる事が出来る庭は、目で見、音を聞き、匂いも感じる事が出来る空間で、そこから人とのつながる場所でもある事を知りました。
モダンな建物だったり、狭い庭空間だとしても、外構を建築と一体に建築的にデザインする事により表情が変わり、住まい手の気持ちも豊かになり、外から見たときの建物の表情も明るく、決して閉鎖的にはならないと言う事も感じました。
また、庭をより自然に見せる「原風景の再生」と言う手段で、その土地の樹木や石そして風景を取り入れる事により、街に溶け込んだ風景となり街の表情までも豊かになり、「庭」は建築と街をつなぐ事も出来る重要な空間だとも思いました。
今回の講義を受講し、建物だけを敷地の中心に考えるものでは無く、建物と一体に庭を考える事により、豊かな表情を作ってくれる手段として大事にしていきたいと思います。
庭づくりは、楽しんで生活できる大事な作法の一つだと言う事を教えていただきました。
<受講生の声>
・建築物をより美しくみせる「庭」、庭が必要な事はわかるのですが知識がない。
庭についての講義は初めてでした。
大変ためになる話で、時間が短く感じました。
こういった講義はもっと聞きたいですし、資格修得(造園)につながれば...。
・建築と庭の関係を考える事が出来ました。
庭の定石を外しての感性での作庭のおもしろさを感じます。
・今まで、建物の事しか考えていなかったのですが、建物に緑があると見栄えや、建物から受け
る印象がだいぶ違う事をすごく感じました。
緑は大切だと思いました。
・設計段階で庭の提案もするが、ほとんどが予算の関係で無しになり、施主様がその後、余裕が
出来た時に造園家さんに頼む事が増えている。
そうすると、庭は庭、家は家と敷地の中で分離してしまい残念に思う事は多々ある。
ローコストでも、最初から庭を組み込んだ提案が出来るように考えて行きたい。
・「建物と庭」を一体に考えて、お互いが美しく見えると言う事に気を配られている事が良くわ
かりました。
常識にとらわれすぎず、チャレンジしてみる事が大事だと思いました。