2011年度
第5回講義を終えて
第5回ぎふ木造塾を終えて
テーマ:「和風建築からのメッセージ―未来に向けて」
講師:京都工芸繊維大学名誉教授、財団法人京都伝統建築技術協会理事長 中村昌生氏
(中村 昌生氏)
今回は和風建築の第一人者中の第一人者、中村昌生先生を講師にお迎えしての開催で、和風建築の極意について講義していただいた。
先生は名古屋生まれの御年84歳なのだが、和風建築に引き継がれてきた匠たちの技術・極意を後世に伝えていかなければいけないとでもいうような気迫すら感じさせる講義でした。
先生の和風建築との出会いは、西洋から学んだ現代建築に日本建築の伝統が引き継がれていないと感じられたところから始まり、方や150年、方や1000年以上の歴史を持つ日本建築の技術や技の素晴らしさを勉強したいと思ったところから始まったとのことでした。
書院造ではなく、数寄屋造りにこそ、匠たちの技が引き継がれており、そこを学ぶには茶室建築は必須だったとのことです。千利休、織部は「茶匠」だったと言う言葉にも、なるほどと聞き入らせていただきました。
(受講風景)
数寄屋造りには書院造と違い、権力で人を脅すような造形は見られず、それは寸法がそうさせているとのこと。桃山時代の屋敷構え図、二条城二の丸御殿大広間、西本願寺白書院、光浄院上段の間などなどのスライドを通して、書院造と数寄屋造りの違いの説明をしていただいた。
明治・大正・昭和の数寄屋建築には伝統の技が引き継がれているとのことで、それを現在に引き継ぐ建築を目指している先生がかかわられた多くの建築のスライドを用いて、その思いやポイントを説明いただいた。
また多くの日本人がホッとしたり、素敵だなあと感じる建物と庭との一体感・融合はまさに、数寄屋建築の中で生まれてきたものであり、庭屋一致という言葉に納得だった。
京都南禅寺界隈の別荘群の中にある對龍山荘はまさにその代表作であり、これらの作品についても、その建築に至る背景や設計者の心意気を説明いただいた。
以下は先生がご紹介くださった言葉です。
<受講生の声>
・憧れの中村先生のお話を生で聴けて良かった。初心を思い出しました。
・和風建築とは?少し理解出来た様な気がする。
・建物と庭との関係は主張ではなく調和。
・失われる伝統と引き継がれる伝統があるが、引き継がれる伝統としての和風建築の要素として、
“見え方”というものがあるのかと感じました。
・現代和風とは完成された物ではなく、これから形成されていくもの
・中村先生には「数寄屋」「草庵茶室」「和風建築とは」といった大変興味あるテーマで、
熱心な講義をしていただきありがとうございました。
木造建築は「自然とのかかわり」や「思想を形にする」といったことが大切だということなど、
今後いろいろ参考にさせていただきたいと思います。