2011年度
第3回講義を終えて
第3回講義を終えて
テーマ:「伝統構法木造建築物の現状と今後の展開」
講 師:立命館大学 立命館グローバル・イノベーション研究機構 教授 鈴木祥之氏
今回、講師にお招きしたのは現在、「伝統的構法の設計法作成及び性能検証実験」検討委員会の委員長である鈴木祥之氏です。
(鈴木祥之氏)
我々、ぎふ木造塾には長年に亘りぎふ木造塾で共に学んできて十分な基礎知識を持った人も居れば、今年から入塾された方もいます。
そういった状況も踏まえ、講義前半では建物の規模や構法の違いによる周期の違いや、伝統構法を取り巻く状況、過去の実験からわかった事、わかっていない事などを説明して頂きました。
講義後半には、近年での実験での成果や、今後、実験し確認していく事柄などをお話頂きました。
伝統構法による建物の耐震補強の実例では荒壁パネル、はしご型フレームによる耐震補強を行い、実験により検証がなされており、耐震性能のクライテリアを明確にし計画しておけば、シンプルな補強で効果が得られる事もわかりました。
近年、伝統構法は建築確認申請が受け付けられなかったり、手続きが煩雑化し申請が困難になっていいます。
限界体力計算しかないのが現状であるが、小規模住宅でも検討項目が多く、構造計算適合判定を受けるため大きな障害となっています。
建築基準法で石場建てを含み、伝統構法が明確にされていない事が問題であり、基準法に組み入れて、実務者が使える設計法を構築することを目指しているのが、この検討委員会です。
検討中の設計法の概念としてお話して頂いた3つは、
1.標準設計法
2.詳細設計法
3.高度な設計法
特に、1.については「限界体力計算によらない」「適判適用除外」というお話であり、期待の大きなものでした。
来年の成果を楽しみにしながら、今後のご活躍を期待しております。
(受講風景)
※ 興味深かった話・・。
・伝統構法ではなくとも同じことではあるが、偏心による捩れ振動が大きい事が
再確認されたようで、伝統構法に適した偏心率の考え方の導入も考えて
おられる様子でした。
・1階と2階の体力バランスを考慮し、偏心を小さくする事により層間変形角
が小さくなる。(壊れにくくなる)
2階は壁が多くなりがちだが、1階とのバランスを考えると、多すぎてもダメだ。
大切なのはバランスですね。
・柱脚が移動することにより、上部建物の応答が低減される事が実験により
確認されている。当然と思っていたことも実験で確認される意味は大きい。
・地震による水平力を減らすために、「屋根を軽く」と言われ近年、瓦業界には厳しい
状況では有るが、「屋根より壁の重量の方が大きい」というお話も。
ぎふ木造塾委員長 河合龍雄
(受講生感想)
*伝統構法と在来構法とで比較した加振実験の映像がとても印象的でした。
どのように動くのかイメージしながら設計をする必要があると思いました。
今回はお忙しい中ありがとうございました。
*パワーポイントの資料が有るとより良かったですね。