2010年度
第5回講義を終えて
今回の木造塾は、「時代の要請にあった木造住宅のあり方とその可能性」というテーマのもと、初の試みとして、木造塾塾生の方々による、それぞれのお立場からの活躍事例を発表していただくいわば「塾生講師」というスタイルをとった。そしてその発表に先立つ基調講演として、中部大学の内藤教授をお招きした。
そして最後の50分ほどを、塾生の方々も交えた意見交換会という形で進めた。初の試みであり、スムーズにいくか心配だったが何とか満足のいく内容となったのではないかと安堵している。
内藤先生は、岐阜に所縁があり東濃地域を調査対象として在来工法の住宅建築の歴史を調査研究されたこともある。明治以降の全国と東濃地域における建築歴史の流れを、詳しく話していただけ、現在の在来工法がどのように出てきたかを理解することができた。
先生の言葉を借りれば、伝統工法なんていうのは幻であり、ただ時代にあわせて作られてきただけだということであった。この話をお聞きして、今現在、我々が向き合っている在来工法の立ち位置とでも言おうかその位置づけが明確になったと思う。
昔はこうじゃなかったとか、本当はこういう風にやるんだとか、今の工法を後ろめたく思う必要はなく、堂々とやればよいと言われた。時代とともにその要請にあって、変化してきて、今の工法があるのだからと。
塾生講師の方からはパワーポイントを使って、自分の取組やこだわりを紹介してもらった。それぞれの方が第一人者として、ご活躍の方々で聴きごたえがあった。
意見交換会では「時代の要請とは何か、日本の木を使うことなのか、大衆の求めているものとは何か」など、たくさんの意見や質問が出た。先生は現実生活の中でメンテナンス等も考えた住まいを考えていかなければいかず、観念論だけではダメだと言われた。
提案した間取りとは違う使い方・生活をしているという実態もあり、これからの時代に要請されるものとは、「多様性」ではないかと括ってくれた。
<受講生の感想>
●経営優先で、時代の流れの中で仕事をして来たと思う。今日は、常日頃思っている素朴な思いをいろんな形で考え、体現しておられる話を聞けて、初心に帰れて、今一度自分なりに考えてみよう、という気持ちになりました。
●いろいろな人の意見が聞けておもしろかった。又、今回のような形式を取り入れて下さい。
●多様な住宅の方向の社会に対する考え方が聞けてよかったです。
●現在、言われている在来工法というものが、明治初期から大正時代にかけて成り立ってきたもので、歴史の浅いものであることを認識すると、在来工法という言葉にあまりこだわる必要もないと思われます。
今後の木造建築の姿としては、未来思考はもとより、過去には江戸時代以前のものも取入れ、普遍的に考えることが必要ではないかと思われる。
●確かに伝統建築、在来工法は大工としてやりたいです!!このような時代ということもあり、需要もなく、技術を発揮する場所もありません。
大工も、過去の栄光ばかりでなく、割り切ることが必要でしょうね。お施主様の望みを叶えて、幸せになっていただく、この思いで仕事をしていきたいと思います。
坂本憲次氏
討論の様子1
討論の様子2