2010年度
第1回講義 「宮内建築の仕事」を終えて
宮内氏は、滋賀県草津市の出身で、幼少期より、父と叔父の元で、厳しい下積み時代を過ごされた大工さん(曾祖父から数えて4代目)です。
ハウスメーカーの下請けの仕事をされていた時、施主の奥様が「ここを変えて欲しいのに、どうして言えないのでしょうか?自分の家なのに…」と泣かれる様子を見て、自分自身を見つめ直し、現在は、地元の木を使って、地域の気候風土に合った、「四寸角挟み梁工法」と、「水中乾燥材」を使った、家づくりに日々精進し取り組んでいらっしゃいます。
「四寸角挟み梁工法」の誕生は、E-ディフェンス震動実験台で行われた、伝統的構法建築の実験で柱と梁の接合部分が破断し、倒壊する様子がきっかけになりました。「家が倒壊すれば、そこに住んでいる人の生命に危険がおよぶ。梁より柱が先に破壊すれば生命は、より危険になる。」との考えから、地震がきても倒壊し難い工法として、また、間伐材(小径木)を使用することが出来るため、山が荒れることの歯止めにつながる、という考えから生み出された工法でもあります。
当日は、実物の建築模型を2物件持参して頂き、柱、梁、込み栓の納まり方法が、非常に明解で、休憩時間中も塾生からの質問も多く大変、盛況でした。
木材の乾燥には、天然乾燥、機械乾燥、薫煙乾燥、水中乾燥、高周波等の乾燥方法がありますが、この「挟み梁工法」は、「割れにくい木材」を使用する必要があるため、乾燥方法が特に重要になります。昔、山から木を伐り出す手段がなかった頃は、伐った木は筏にして川に流していました。そうすることで木材内部の水分が抜けやすくなり、全体がバランスよく乾くという利点がありました。宮内さんは、その先人の知恵を生かした、「水中乾燥」をご自身で実践されています。木材の割れ、ねじれ等が少なく、また背割りも必要なく、挟み梁の構造材として最適な乾燥材です。また、木材の害虫駆除、アク抜きの利点もあり、滋賀県の環境(森林と水)と風土にも合っています。
また、お施主様に、木材の伐採現場、水中乾燥の状況を直接見学して頂き、家を建てるには時間がかかる事を説明し、家族全員で子供、孫、と長く大切に受け継がれる家づくりを願っていらっしゃいます。
「四寸角挟み梁工法」は、県産材の間伐材を有効利用、琵琶湖の水の活用、たくさんの共同研究者や教育機関と一緒に編み出された、環境と風土に融合した工法であると思いました。
先般、6月12日~14日に岐阜県は、天皇皇后両陛下をお招きし(全国豊かな海づくり大会)植林、魚の放流が、各地域で盛大に行われた事もあり、山、村、川、町、海の環境を守る為にもできるだけ、循環型で環境に配慮した、自然な暮らしの家づくりの建築工法を後世に伝えなければならいと考える講義でした。
<受講生の感想>
●木に携わる者として改めて考えさせられました。今までやってきた工法、考えが当たり前ではなく、常に疑問を持つことが大切だと感じました。もう一度勉強しなおそうという考えになりました。
●伝統工法で建てるということを考えると、材を太くしたり大きくしたりするという考えしか出てこないが、材を細くする考えを思いつくのはすごいことだと思った。長期住宅をうたうなら、建てる前も長期時間をかけることが理にかなっていると考えさせられる。
●主流である4寸角で構成されていることが納得させられる。これからの森林(山)の状況を考えると小径木で建てられる工法にショックというか、感動というか、(物)建物を造る工夫を常に考えられている姿に刺激を受けました。有難うございました。水中乾燥も木材の質、割れ等のメリットばかりに思われ(手間はかかりそう)今後の参考にできればと思います。
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