ぎふHM 2022年度
HM第8日目
テーマ:高山市の文化財・町並み保存の方法と現状について
日時 :令和4年10月1日(土)10:15~16:00
場所 :午前講義 飛騨高山まちの博物館
:午後講義 重伝建三町上町~州さき
参加者:32名+愛知HM協4名
石黒会長による第8日目開会挨拶
高山市の文化財・町並み保存の方法と現状について(講義)
高山市教育委員会文化財課 課長 牛丸岳彦氏に講習して頂きました。
1.高山の地理・歴史の紹介
・高山の地は古くから交通の要衝として発展
・「古い町並み」はおよそ400年前の金森長近による城下町形成を基としている
・江戸時代に入り幕府直轄地となり城が廃されて以降、商人の町として発展
・過去、多くの火災に見舞われ「古い町並み」区域の町家の多くも明治以降の建築
・高山の町はさんまちを中心にして周辺部に広がっていき、または街道沿いに伸びていった
・明治に入ってから造られた日下部民芸館・吉島家住宅の重要文化財指定は、「近代和風建築
調査」のきっかけとなり、近代(明治)以降の重要な建物の発掘の発端となった
2.高山町家の特徴
・町のつくりは南北に主通りが走る梯子状(東西の通りは建物の側面をみせる横丁程度で碁盤
の目といわれているのは間違い)
・主通りに面して敷地は東西に長く、町家の間取りは「主屋-通り土間・庭-土蔵」の順に配
置、土蔵どうしで防火帯を形成(裏手の土蔵との間には排水路が通る)
・各町家の入口と通り土間は南側に配置
・もとの町割りは間口が3間程度の敷地割から、時代を追って集約化が進み大規模な敷地も出
現するようになる
・軒先は宮川から引かれた用水の側溝に直接雨が落ちるように揃えられている
・江戸時代にも現代の建築確認申請のような役目を果たす建築行為の届け出制度(「願書留」)
があり、不文律の了解事項も含めた慣習が建築活動を制御し現在の歴史的町並みで得られる
統一感のベースになっている
・高山の町並みの色は明治以降の民家ではほとんど「弁慶塗り+油拭き仕上げ」となっていた
と思われるため、徐々に黒くなってきた色合いを本来の赤みのある濃茶色に塗り直すことも
試みられている
・高山の町家は元々商売を行うための家であったが、その仕様・構造は時代(技術の発展)と
ともに変化してきた
・2階の利用が進むにつれ、正面の立ち(軒高)は明治以降、徐々に高くなる
・屋根は榑葺きからトタン葺きへ
・もともと天窓は無く、明治以降徐々に広まる
・庇は明治中頃までたて板葺き、明治後期以降に垂木形式が普及
・開口部は上げ蔀戸から出格子(+障子)に変化
牛丸岳彦氏講義風景 牛丸岳彦氏講義風景
3.町並み保存のとりくみ
・川をきれいにする運動・都市美化運動・メディアでの紹介などを通じて町並みを整備する機
運が高まっていき、三町伝建地区選定につながっていった
・町並保存会は屋台組を活用し、それを単位として組織されている
・各町並保存会の取組みとしては、地域協定のような町並み保存のルール作りをして建築物・
工作物・付帯設備の仕様などの他、商売のしかたなどのソフト面についても基準を設けている
・町並みを守るためには
1)家族がいないとダメになる
2)町並みに誇りを持つ
3)沢山の共通の目的を持つ
4)自分だけが突出しない
5)最後は人である
・町並み保存は住民・旦那衆・行政・観光団体・同業組合・金融・不動産・設計士・大工等の
連携が必要でそのネットワークづくりが不可欠
・高山市三町の「伝建地区」選定は全国で12番目(昭和54年)と制定から2年遅れたのは
防火地域に関する現行法との折り合いをつけるのに時間を要したと聞いているが、防災対策
をしっかり行うことでクリアした
・火災については屋根の不燃化、秋葉神社祭禮や夜回り、防災訓練、連動式の火災報知器・通報装置の設置等により対策がなされている
・「伝建地区」は都市計画の1つとして取込むことにより、効果的な町並み保存が出来るよう
になっていった
4.修理と修景の実例紹介
・文化財の修理はどの時代の姿に戻すか(どこに価値づけを置くか)が鍵となる
・修景は周囲の町並みに対して違和感のない工夫をしている
現地視察
文化財の改修整備活用事例として「飛騨高山まちの博物館」見学 牛丸岳彦氏による解説
重伝建「三町(上町)」古い町並み見学 牛丸岳彦氏による解説
国指定重文(答申)「州さき」見学 牛丸岳彦氏による解説
HM 第7日目
テーマ:世界遺産、民族・無形文化財について(講義①)
日本遺産、文化的景観、記念物(史跡・名勝・天然記念物・埋蔵文化財)について(講義②)
文化財登録の実務について(講義③)
日時:令和4年9月17日 (土) 13:00~17:10
場所:(一社)岐阜県勤労福祉センターワークプラザ岐阜 3階 302会議室
参加者:29名
石黒会長による第7日目開会挨拶の様子 講習の様子
世界遺産、民族・・無形文化財について(講義①)
岐阜県文化伝承課 伝統文化係 主査 可児奈緒美氏 に講習して頂きました。
1.世界遺産について
アスワンハイダム建設によるヌビア水没の危機が創設の契機となったこと、世界遺産には文化遺産・自然遺産・複合遺産の3種類があること、世界遺産の登録に至る流れを解説していただきました。
日本には現在25件が登録されている。(法隆寺、姫路城、屋久島、白神山地等々。)
岐阜県内にはまもなく登録30周年を迎える白川郷・五箇山の合掌造り集落がある。
特徴として、住民憲章による制限・バッファゾーンによる景観保全・「結」と呼ばれる伝統的互助システムがあげられるが、維持するための課題(オーバーツーリズム・少子高齢化・防火対策)もある。
2.無形文化財について
工芸技術・演劇、音楽などを、国指定・県指定の文化財として指定している。
岐阜県内では、やはり陶芸などが多い印象。令和4年7月に地芝居振付が新たに指定された。令和3年、新たに登録制度が創設された。第1号として、書道と伝統的酒造が国登録された。県の登録はまだ無いそうです。
3.民俗文化財について
地域に根差した風俗風習や民俗芸能などを、国指定・県指定の無形民俗文化財として指定している。
有形民俗文化財は、無形民俗文化財に用いられる衣服や器具などを指定している。
大切なのは価値が高いから重要ではなく、地域の特徴を表していることが、重要視されていること。
また、ユネスコ無形文化遺産の活動が、世界遺産の約10年後から始まったが、日本は古くから無形文化遺産の保護活動をしており、世界の先駆けと言える。
ただ今後の課題もあり、伝統技術の原材料や用具の確保が困難なことや、山・鉾・屋台等の収蔵庫のあり方は、防犯・防災・活用の面からも、重要視されています。
令和3年から登録制度も始まり、岐阜県内では岐阜提灯の製作用具及び製品・美濃の陶磁器生産用具及び製品の2件が登録されている。
可児奈緒美氏講習風景 小野木学氏講習風景
日本文化遺産、文化的景観、記念物(史跡・名勝・天然記念物・埋蔵文化財)について(講義②)
岐阜県文化伝承課 記念物保護係 課長補佐兼係長 小野木学氏 に講習して頂きました。
1.文化財の意義と保護
文化財保護法は、文化財の保存活用を図ることにより、国民の文化的向上・世界文化の進歩に貢献することを目的としている。
また、公共のために周到の注意をもって保存し公開する等、文化的活用に努めなければならない、としている。
2.記念物
・史跡:県内の代表例として、久々利銅鐸発掘の地(可児市)、昼塚大古墳(大垣市)、次郎兵衛
塚古墳(可児市)、美濃国分寺跡(大垣市)、弥勒寺官衛遺跡群(関市)、黒野城跡(岐阜市)等の紹
介。
・名勝:県内の代表例として、木曽川(各務原市・坂祝町・可児市・犬山市)等の紹介。
・天然記念物:県内の代表例として、白山神社のヒトツバタコ(土岐市)等の紹介。
3.重要文化的景観
県内の代表例として、長良川中流域における岐阜の文化的景観(岐阜市)の紹介。
4.埋蔵文化財
県内の代表例として、中切上野遺跡(高山市)の紹介。
5.日本遺産
文化庁が認定する「地域の歴史的魅力や特色を通じて我が国の文化・伝統を語るストーリー」
現在全国で104件が認定され、岐阜県内では以下の4件が認定されている。
・「信長公のおもてなし」が息づく戦国城下町・岐阜(岐阜市)
・飛騨匠の技・こころ-木とともに、今に引き継ぐ1300年-(高山市)
・木曽路はすべて山の中 ~山を守り山に生きる~ (中津川市)
・1300年続く日本の終活の旅~西国三十三所観音巡礼~(揖斐川町)
文化庁が6年毎に認定の見直し作業をしている。今後は新規のものと入替えがあるかもしれない。
文化財登録の実務について(講義③)
前半は、あいちへヘリテージ協議会 市川真奈美氏 に講習して頂きました。
あいちヘリテージマネージャー養成講座の演習課題であった「私の見つけた文化財」から、実際に登録文化財に登録された実例をご紹介いただきました。
(「私の見つけた文化財」は、今回の育成講座のカリキュラムにも組み込まれている。)
愛知県美浜町の野間郵便局旧局舎を題材として選定され、演習課題に取り組まれました。講座終了後、所有者の希望を受けて、実際の申請手続きを始められました。
事前相談時に、県の担当、文化庁から指導された事項としては、所見の内容をもっと深めることや。写真位置図の作成、各書類上の不整合を無くすこと等の指導がありました。
実際の登録申請の際にも、所見の内容にない写真は不要である事、写真は片付けた状態のものとする事、等々、再度の書類チェックを受け無事登録の運びとなりました。
登録活動後も、会を作成して、保存活用のために様々はイベントにも共同参加をされています。(会を作成すると、助成金を受けやすいそうです。)
そしてその後、新たな登録文化財の登録活動も続けられています。
他、平成26年~令和4年まで、あいちヘリテージが携わった登録文化財をご紹介いただきました。
市川真奈美氏講習風景 山本栄一郎氏講習風景
後半は、あいちヘリテージ協議会 山本栄一郎氏 に講習して頂きました。
本講義の最終日の発表会について説明。
1.日時:令和5年3月4日(土) 13時から15時まで
2.場所:OKBふれあい会館
3.方法:(1)受講生は別紙の班ごとに見つけた登録文化財の候補となる建造物の調査を行
い、別途様式により整理して報告書にまとめる。その際、発表を前提にしてい
るため、所有者の了解を得る事。
(2)原則として居住地又は勤務地周辺を中心とする地域で、登録文化財の候補とな
る建造物を見つけることとするが、その他の地域でも可とする。
(3)各班は、報告書と発表会用の概要書(A4判8頁以内にまとめたもの)を、建築士会
事務局にデジタルデータで提出する。
(4)発表会は、プロジェクターを利用して行うものとする。
(5)発表会における各班の持ち時間は20分とし、発表15分質疑応答5分とする。
(6)発表終了後に講師等の講評をいただきます。
(7)なお、この発表会は一般の方の聴講者の募集をして、公開で実施する予定です。
登録文化財のメリットとして、地震等災害時の修理費用(復元費)が文化庁からある程度補填されることが見込まれる、商業施設では、商工会議所からの修理費用もいくらか受けられるようです。
また、自然災害時の文化財の被害調査にヘリテージマネージャーの派遣も今後検討されているようです。
あいちHM受講生の「私の見つけた文化財」実例を2つご紹介いただきました。
・大治町 明眼院 多宝塔 (建立年代不詳(室町時代頃?)、明治時代に修築されたが江戸時代の
書物にも記されている建物。)
・碧南市 旧大浜警察署 (大正13年建設後、度々増築工事され、平成21年耐震補強・外観整備
されている。)
質疑応答を受け終了となりました。
講習の様子 講習の様子
次回のガイダンス
飛騨支部幹事様より、8日目・9日目の高山市での講習・見学会について説明がありました。
各班個別ミーティング後、解散。
HM 第6日目
テーマ:国重要文化財(建造物)及び国・県補助事業について(講義①)
登録有形文化材(建造物)及び登録後の各種手続きについて(現状変更等)(講義②)
建築基準法第3条の解説と該当建築物について (延期)
日時:令和4年8月20日(土)13:00~16:20
場所:(一社)岐阜勤労福祉センターワークプラザ岐阜 3階 302号室
参加者:30名
石黒会長により第6日目開会挨拶の様子
国・県重要文化財(建造物)及び国・県補助事業について(講義①)
岐阜県文化伝承課 主査 川瀬健秀氏に講義して頂きました。
1.県内の国・県指定建造物について、2.有形文化財(建造物)の保護と活用について、3.建造物に関する補助事業について(国宝、国重要文化財、県重要文化財)について学びました。
国の文化財保護の仕組みと取り組みの解説、また岐阜県の文化財保護の仕組みと取り組みの解説、県内の国・県指定の文化財の状況、件数の紹介。近年指定された建造物の歴史的価値、登録に至った経緯等の説明をして頂きました。
有形文化財の保存と活用については、以前は保護だけでよかったが、近年は”文化財の活用”も考えなければならないとの事が印象的でした。
また、文化財に関わる各種届出の説明、技術者の育成が今後必要となるとのことでした。
文化財の防災では、日本の建築物は火災に弱いのでその対策方法、防災の面からの活用方法等の解説、補助事業については、国、県別の補助内容、金額等の説明をして頂けました。
かならずぶつかる資金の問題。ヘリテージマネージャーとして積極的に取り組む必要を感じました。
川瀬健秀氏講習風景 講義の様子
登録有形文化財(建造物)及び登録後の各種手続きについて(現状変更等)(講義②)
引続き、岐阜県文化伝承課 主査 川瀬健秀氏に講義して頂きました。
1.登録制度について、2.登録の手続きについて、3.登録後の各種手続きについて、4.登録有形文化財に関する補助事業について、5.登録有形文化財の活用について学びました。
岐阜県内の登録文化財の件数273件と全国件数13,410件に対して割合から見ても少ないことがわかる。要因は様々であるが、現在も埋もれている文化財担当の物件が多く存在する可能性が高い。
なかでも、旧飯地公民館五毛座(恵那市)の紹介があり、全国的に見ても屋内型芝居小屋が現存しているのは珍しく、地芝居大国ぎふWebミュージアム芝居小屋360°VR
(http://jishibai.pref.gifu.lg.jp/)の紹介もありました。
続いて近年の県内の登録有形文化財の事例紹介を数件頂き、前々回見学に訪れた旧岡田酒店店舗兼主屋(大野町)の紹介も頂いた。
登録の手続きについて、文化庁のHPに沿いながら、事例を踏まえ詳しい説明を頂いた。(文化庁のHPがとてもわかりやすいのでそちらを参照の事)
登録後の手続きに続いて文化庁のHPに沿いながら、事例を踏まえ詳しい説明を頂いた。(文化庁のHPがわかりやすいのでそちらを参照との事)
登録文化財の活用について、事例を何例か紹介頂いたが、観光施設、カフェ、宿泊施設、との事で、目新しいものは無かった、積極利用の為にもヘリテージマネージャーの今後の活動が大いに期待される。
建築基準法第第3条の解説とが該当建築物について
延期となった為、石黒会長により登録に向けた資料作成の解説が行われた。
石黒会長講習風景 講義の様子
岐阜市司町の旧岐阜県庁舎をモデルに登録申請に必要な資料を作成され、調査方法と調査のポイント、意見書の作成方法とそのポイント、進達書の作成方法とそのポイント等の解説がなされた。
馴染みの深い建物での実例紹介でとてもわかりやすく、しかしながらヘリテージマネージャーの大変さと役割の大きさも感じずにはいられなかった。
次回のガイダンス
9月17日(土)開催(ワークプラザ岐阜にて)の説明を行いました。
HM 第5日目
テーマ:文化財建造物の防災・現在について及び災害時の対応について学ぶ(講義①)
文化財建造物の耐震対策について補強・修繕の要点を学ぶ(講義に)
日時 :令和4年7月23日(土) 13:00~17:10
場所 :みんなの森 ぎふメディアコスモス(岐阜市立図書館内) おどるスタジオ
参加者:29名
石黒会長による第5日目開会あいさつの様子
文化財建造物の防災・減殺について及び災害時の対応について学ぶ(講義①)
岐阜大学準教授 村岡治道氏に講習して頂きました。
これまでの災害から得られた教訓と取り組みについて学び、特にヘリテージのきっかけとなった阪神・淡路大震災後の各地での取り組みと課題についてお話をいただきました。文化財は社会や住民に欠かすことのできない基本的な公共財であることから、喪失することは地域機能の低下や地域の誇りを無くすことにもつながるため、指定文化財のみではなく未指定文化財も含めて修理や保存そして救出、保護に至るまでヘリテージマネージャーとして取り組みの意義を考えていく必要があるということです。
文化財建造物の防災に関しては法的な扱いとして、国が定めている災害対策基本法の中に文化財に関する項目もあるため、国の防災基本計画・県の岐阜県地域防災計画に基づき予防や応急のみではなく、建築側の人間が見落としがちな復旧・復興に至るまでを含めた、守るだけではなく災害が起こった後も守っていくためにヘリテージマネージャーは必要な災害対策をおこなっていく必要があることを学びました。
また、これらの法や計画書には、「減災」の定義がないことや、災害復旧についてはあまり詳しく書かれていないことから、防災をあきらめた甘い考えが減災であること、被害100→被害99となっても減災となることおよび、過去の裁判事例から想定外は言い訳でしかないという判決がされていることをふまえて減災や災害復旧についてどのようにするのかを今後、岐阜ヘリテージマネージャーとして考えていくべきことであると課題提起いただきました。
休憩をはさみ講義の後半のパートにおいては、阪神・淡路大震災と熊本地震の被害調査と復旧の事例を学び、阪神・淡路大震災の教訓から発足した、ヘリテージマネージャー誕生後の熊本地震ではヘリテージマネージャーによる指定文化財か否かにかかわらずの調査・復旧に向けた助言支援・支援対象建造物の選定及び復旧方法についての提案といった活動事例などもお話しいただきました。ただ、今後の課題として災害発生時の初動の対応・人材の確保と育成といったヘリテージマネージャーに関することや、未指定歴史的建造物に対する支援制度といったことに対して岐阜では対応出来るようになっていくと望ましいとお話しいただきました。
最後に、地震発生時の避難誘導として、「めがね」(目利き=災害発生時どのようなことが起きるのか平時においても見えること)の映像によるトレーニングをおこないました。地震発生時から5秒後に本棚が倒れて下敷きとなり死ぬ。6秒で建物が倒れて倒壊に巻き込まれ死ぬ。ということから、地震発生から数秒で生死が決まることを念頭に、文化財や建造物を守ると同時に見学に来ている観光客や利用者の命や身体を守ることもヘリテージマネージャーは考えるべきであるということを学びました。特に耐震性の低い文化財において、どのように耐震性を考えるのかそして所有者に対しては災害時このようなことが起きるため、このような誘導をしてくださいという提案までもおこなう必要があり、場合によっては文化財であっても建物内に鉄骨でシェルターのようなものを配置するということもあり得るかもしれないということでした。
村岡治道氏講習風景 ディスカッションの様子
文化財建造物の耐震対策について補強・修繕の要点を学ぶ(講義②)
続いて岐阜県森林文化アカデミー教授 小原勝彦氏に講習して頂きました。
パート1として耐震診断方法は、重要文化財の基礎診断内容としては、重要文化財(建造物)耐震診断指針 平成11年4月8日 庁保建第19号 文化庁文化財保護部長通知に基づき、「機能維持水準」「安全確保水準」「復旧可能水準」これら3つの評価基準のうち、どれを満たすようにするのか選定して評価をすると学びました。
パート2として現状の耐震性能調査は、木造建築病理学でおこなっている詳細調査を参考に調査要点などを実際の写真を見ながら確認していきました。一般的な木造建築と同様に梁上耐力壁は耐力壁の低減が50~70%となるため過大評価しないとこや、横架材の下側(引張側)に欠き込みや腐朽があると大幅な曲げ低減となるため見逃さないことが大切であるということでした。また床の傾斜は発生原因を追究して原因から直していなかいと修繕してもまた傾斜が発生するため気を付ける必要があることや、特に重要伝統的建造物は非常に重い屋根であることが多いので、柱の有効細長比がNGとなることが多いので注意する必要があることも学びました。そして常時微動測定の結果から推定できる限界耐力計算の弾性剛性や最大耐力、変形、固有振動係数など一見、無関係と思われるようなものでも数々の物件をグラフで集計していくと相関性が見えてくることも学びました。
パート3として耐震補強計画と事例を耐震補強要素とともに8事例見ていきました。中には育成講座3日目に実地研修をした美濃和紙あかりアート館の事例もあり、実地研修では隠蔽部で見ることのできなかった補強の状況を写真で確認することもできました。また、耐震補強計画については耐震補強の評価目標をどこに設定するのかを所有者の考えや補助金の耐震基準値などをふまえ、物件ごとに所有者や行政と打合せをしながら、建築物にかかる力の流れをコントロールした耐震補強計画の立案をしていく必要があることを学びました。
パート4として耐震補強の効果検証を6事例を見ていきました。常時微動測定による耐震補強前と耐震補強後の変化を数値としてグラフで確認し耐震改修をおこなうことにより、固有振動数0.9~4.2Hzの上昇を見ていきました。また、耐震改修と同時に温熱環境改修をおこなった事例についても紹介いただきました。
そして今後の課題として、現状は調査が先になるケースが多いが耐震改修の構造ルートや耐震改修性能の設定の違いにより、それぞれ見るべき調査部分や耐震補強の範囲が異なってくるため、これらは調査する前に決めておきたいことや、対策をおこなった後の効果測定を所有者にも実感できる機会を作っていくことを考えてほしいとお話しいただき、最後に質疑応答をおこない終了しました。
小原勝彦氏講習風景 ディスカッションの様子
次回のガイダンス
8月20日(土)開催 (ワークプラザ岐阜にて)の説明を行いました。
HM 第4日目
テーマ:国有形文化財 岐阜公園三重塔について、懸垂式心柱や搭の構造などを学ぶ(講義・演習)
申請の業務「文化財建造物の申請について学ぶ」(講義)
日時 :令和4年6月25日(土)12:00~17:10
場所 :講義 岐阜市歴史博物館 講堂
:実地研修 岐阜公園三重塔
参加者:33名
会場:岐阜市歴史博物館 石黒会長挨拶の様子
岐阜公園三重塔「搭の構造」(講義)
有限会社伊藤平左エ門建築事務所 名古屋事務所所長 望月義伸氏に講義して頂きました。
講義が始まる前に岐阜市が委託して作成された三重塔のDVDを15分ぐらい放映されました。
講義の前半は、建物の構造の歴史から作図や写真などを拝見しながらの講義になり、建物構造の始まりは、柱などなく構造材を斜めにたてかけて三角の構造から成り立ち、次第に掘立柱を中心に建てた建物の構造となり、周りに柱を建てるようになっていったのが建物の基本となったそうです。
構法では通柱に貫を指す構法が唐から伝わってきて現在の構法の基本となり、現在では残念なことに余り貫が使われなくなり胴差に金物で引っ張る構法が支流になってきているそうで、構造の歴史から学べてとても勉強になりました。
搭構法の種類は、積重構法、長柱構法、櫓構法があり岐阜の三重塔は櫓構法になっているそうで、櫓構法は上の重みで下の建物を押さえる工法になっているため、相輪は飾りだと思っていましたが、飾りだけではなく下の建物の錘になっている為、あれだけの長さ(重さ)が必要なのだと分かりました。また、櫓構法は少しの風でも心柱が動く構法になっているのだと分かりました。
後半の講義は、岐阜公園三重塔の意匠、構造、材料の改修法についての講義でした。
構造改修と構造性能評価は、構造形式の振動実験、改修前の三重塔の振動特性実験、終局強度算定、地震動時刻歴応答解析(告示派と兵庫県南部地震波)、樹種の同定、木材の材料試験をおこない、実際の振動特性は建物の振動実験結果を参考にして、軸部や桝組の特性を明らかにし、経年変化を受けた改修前の構造調査によって、補強材の挿入、新材への取替えなどの対策をおこない、文化財建造物としての従来の構造を可能な限り残した改修をしたそうです。基礎をアンカーボルトで固定したり、めり込み防止の為に鋼製プレートを大斗下に敷くなど金物による補強も必要なのだと分かりました。
望月義伸氏紹介風景 望月義伸氏講義風景
岐阜公園三重塔見学(実地研修)
岐阜公園歴史博物館から徒歩5分ほどの所に三重塔があり、そちらを研修しました。通常建物内までは見学できないらしく通行不可の柵がしてありましたが、岐阜市役所の協力で建物の内まで見学をさせて頂きました。心柱が吊って浮いている1階部分しか見学することは出来ませんでしたが、心柱が浮いている所や心柱と周りの隙間が空いている所などは確認する事が出来ました。三重塔内で望月氏の説明や質疑応答まで対応頂け、四天柱が調査の結果5色で塗られていたので、当初の色を再現させた5色に塗られている事、また黄色部分だけ汚れているが、改修当時は綺麗な黄色だったが、黄色部だけ虫が花粉と間違えて寄ってきて汚すのではないかと面白い話も聞けました。
2階以上も上に登る事は出来るそうですが、梯子を掛けて登るらしく今回は登れませんでした。見学前の講義で聞いた下の建物を上の建物で抑えている所や、金物を使い心柱から隅柱などを繋げている所が見学出来なかったのが少し残念でした。
岐阜公園三重塔
岐阜公園三重塔見学風景 岐阜公園三重塔見学風景
岐阜公園三重塔見学風景 三重塔内での講義風景の様子
登録有形文化財 申請の実務(講義)
続いてあいちヘリテージマネージャー協議会 川口亜稀子理事に講義して頂きました。
講師は意匠系の設計事務所をおこなっていましたが、登録申請業務をサポートする仕事を手伝ったことでヘリテージマネージャー養成講座を受講し調査などの仕事をされ、今ではヘリテージの登録手続きをするようになったそうです。あいちヘリテージ協議会がどの様に申請業務をおこなっているかなど話を伺えてとても勉強になりました。
あいちヘリテージ協議会が携わった川田家住宅の説明から、登録手続きの具体的な申請と書類の流れ等をヘリテージマネージャーの立場から説明して頂きました。
まずは見学会及び勉強会を開催し、建物所有者が登録有形文化財への意思があるか確認をおこない、意思があればあいちヘリテージ協議会が独自で作成された書類に基づき事前相談をおこない、所有者の意向確認と登録候補物件に該当するかなどの確認をおこなうそうです。
次に所有者の同意を取り登録の実査に向けての準備や事前調査申込書の提出(調査費25,000円)、申請スケジュール・チェックリストを活用しながら事前調査をおこない、文化庁の実差を受ける。ここで正式に業務委託(業務委託300,000円)を交わし申請の手続きに入っていくそうですが、文化庁の指定された方法で書類を作成するので写真の撮り直しなどもあるそうなので、ひな形を見ながら写真や書類などを作成しないといけない事が分かりました。注意事項として登録に向けての同意書は全て所有者から頂かないといけないので、所有者の謄本を取寄せ、全ての所有者の確認をしないといけないそうです。あいちヘリテージ協議会でも未だにスケジュールの変更や金額設定はおこなっているそうで、実査段階(事前調査)でほぼ書類を揃える事になるので、金額の割合や諸経費なども考えていくと良いそうです。
後半の講義では、登録後の実務の内容を講義頂きました。
所有者や管理者が変わっても届け出を出さないといけないので、所有者に対して正確な情報を伝えたり、調べないといけないと感じました。文化財を守っていく思いを所有者に伝え、地域で文化財を守っていく事に意味があることを教えて頂き、自分も同じように伝えていきたいと思いました。
文化財登録をして頂く為に、建物のいい所や価値のある所を所有者に伝え、何度もかよって説得する部分もあるそうで、仕事と言うよりはボランティア部分が多いと言われ納得しました。また、所見の評価が重要になってくるそうですが、簡素化させて文章をまとめる様に差し戻しがあったり、文字の難しい物や分かりにくい字にはルビを入れたり、数字の文字数によっては半角全角と使い分けたり所見の細かい指示があるそうで、図面などの書類をまとめるより所見をまとめる方が大変だと感じました。
川口亜稀子氏講義風景 講義会場の様子
次回のガイダンス
7月23日(土)開催の岐阜市の説明会を行いました。
第5回講座 日時 :令和4年7月23日(土)13:00~17:10
集合場所:みんなも森 ぎふメディアコスモス(おどるスタジオ)
HM 第3日目
テーマ:伝建地区の登録文化財と街並み実地研修(講義・演習)
日時 :令和4年6月11日(土)10:00~15:00
場所 :午前講義 美濃市健康文化交流センター 2階会議室
午後実地研修 美濃市美濃町伝統的建造物保存地区
美濃和紙あかりアート館
市指定文化財 旧今井家住宅
参加者:31名
石黒会長の挨拶の様子
伝建地区の登録の登録の経緯および保存、活用の方法・考え方、課題等(講義)
美濃市文化財保護審議会委員 会長 古田憲司氏に講習して頂きました。
上有知(こうずち)について文献等から分かっていることを時系列にて、また上有知の城下町はどのように計画されていったかをお話しして頂きました。四神思想が取り入れられているため区画は方位が振っているそうです。現在もその思想は残されていますが、東に設置されていた夕立岩は高速道路建設の為取り壊されてしまったそうで残念です。また、区画の真ん中には上有知蔵人の墓と竹林庵を配したそうです。
現在の美濃市の町は溝から溝までの4間道路ですが、当時は約5間あったそうです。享保の火災後延焼しないよう道路を拡幅したのではという話もあるそうですが、そういう伝承はないそうなので詳しいことは今のところ不明だそうです。そのことについて古田氏より私たちに質問がありましたが、どれもありそうな回答でした。景観の為電柱を地中に埋設する時に一緒に調査していれば答えが出たかもとおっしゃっていましたが、分からない中実際に街並みを見て考察するのも楽しいかなと思いました。
古田憲司氏講義風景
ディスカッションの様子
美濃市美濃町伝統的建造物保存地区補助制度について(講義)
続いて美濃市教育委員会 人づくり文化課 文化財係 係長 石井里英氏に講習して頂きました。伝建地区にしていくにはなぜ美濃町が成立したか、どのように成立したのかと町の歴史が大事だということで、前半に上有知の歴史を古田氏にお願いしたそうです。その歴史を知った上で、伝建地区の選定の経緯を説明して頂きました。昭和50年代に街並みの価値が再認識されはじめてから、長い年月をかけて色々ご苦労され平成11年に「美濃市美濃町伝統的建造物保存地区」に選定を受けたそうです。
美濃市においては伝建地区の「修理:伝統的建造物の修理」と「修景:伝統的建造物保存群以外の建造物を新築、修景等をする場合」とを使い分けているそうです。修理は当時のものに復元するが、修景は景観を整えることなのでやりすぎない修理となることが難しいところだそうです。
伝建地区の諸問題としては、職員は考古学出身者が多い為、建物についての知識がある人がいないということや、文化財指定には建物に指定がかかるため、指定時には納得されていても代替わりで意識が薄れてしまって所有者側の理解を得ることが難しく心苦しいのが現状だそうです。また、代替わりで空家問題も存在しているそうです。倒壊のおそれがあり、実際にやむなく除却ということもあったそうですが、まだその解決方法は見つかってないそうです。より良い方法で、適切に保存されていくと良いと思いました。
石井里英氏講義風景
次回のガイダンス
6月25日(土)開催の岐阜市の説明を行ないました。
昼食のお弁当
伝建地区散策及び美濃和紙あかりアート館、今井家住宅見学(実地研修)
3グループに分かれぼらnボランティアガイドの五十川さん、高岡さん、後藤さんの3名に伝建地区を散策しながら説明して頂きました。
美濃マップを頂き、午前中の講義を思い出しながら説明を聞きました。今回の実地研修の予定にはありませんでしたが、国の重要文化財になっている「(株)小坂酒造」も内部も少し見せて頂き説明を受けました。建物の説明だけではなかったので美濃市の街並みが守られてきた歴史的背景等も実感することができました。修景についても納得しましたが、選定される前に建て替えられた建物が浮いてしまっている印象でした。外観からの見た目だけでだいたい何百年前のものか分かるウダツの違いについても教えて頂きました。実際に見ながらなので覚えやすかったです。
今井家住宅では建物の中を回りながら、途中「水琴窟」の音色を楽しみ、美濃和紙あかりアート館では歴代の優秀作品を見せて頂き、和紙のすばらしさを再確認できました。見学時間があまったので、築100年の古民家を良いところを残しながら改装した「NIPPONIA 美濃商屋町」も見学させて頂きました。宿泊部屋はもう泊り客が入っていたので見せては頂けませんでしたが、ギャラリー等は見せて頂きました。補強はされていましたが、柱や壁の傷はそのままであったりと当時の状態を上手に残して改装してありました。
第1日目で教えて頂いた、「保存」、「活用」、「地域」が理解できた実地研修でした。
「美濃市美濃町伝統的建造物保存地区」
「日本の音風景 100選」に選ばれている今井家住宅の『水琴窟』
グループごとに研修:1班 NIPONIA 美濃商屋町
グループごとに研修:2班 美濃和紙あかりアート館
グループごとに研修:3班 旧今井家住宅
HM 第2日目
日時:令和4年5月28日(土)10:00~16:00
場所:午前 大野町第1公民館 多目的ホール
午後 登録文化財 旧岡田家住宅
古民家旧岡田酒店
国指定重要文化財 牧村家住宅
参加者:32名
次回のガイダンス
6月11日(土)開催の美濃市の説明を行ないました。
講義の様子
文化財保護法・文化財体系について(講義)
県文化財伝承課 課長補佐兼係長 末松光孝氏に講習して頂きました。
文化財とは「国民の財産」という大前提の中で「文化財保護法による文化財の体系について」お話しして頂きました。文化財は6つの系統とその他として2つの系統でまとめられていました。
有形文化財の中には建造物と美術工芸品があり建物の中には橋も含まれていたりと、知らなかったり曖昧だったものが名称と写真でまとめられていたので、これを見ながら覚えていきたいと思います。
次は文化財の保護法が出来ていった経緯をお話し頂きました。昭和25年に制定されましたがその背景としては、戦時中に色々失われたこと、「昭和24年の法隆寺金堂壁画の消失」から色々な法がまとめられ「文化財保護法」が出来たそうです。「保存」が主と思っていましたが、最近よく行われているなという「活用」も最初から法で決められていたことには驚きました。
末松光孝氏講義風景
岐阜県の文化財行政について(講義)
引続き末松光孝氏に講習して頂きました。
都道府県別の指定状況を説明して頂きました。岐阜県は岐阜県指定の文化財が多いのが特徴的でした。岐阜県では昭和29年に保護条例を制定し、その時に文化財保護法の内容にプラスして内容を決めたため県の文化財が多くなっているそうです。他県では見られない岐阜県の特徴としては国の指定は直接指定されることはありますが、県の指定は必ず市町村の指定を受けたものしか指定されないということだそうです。
「岐阜県文化財保存活用大綱」が令和3年3月に制定され、岐阜県のホームページで見ることが出来るそうです。趣旨と背景を説明して頂きました。
文化財の保存や活動に対する課題として表に見える担い手不足以外に修理・保存に補助金が出ても補助の為、持出分の負担が大きくなり手放し解体され更地になり、それではダメだということで大綱が出来ていったそうです。牧村家住宅で「修理記」が掲載されており所有者負担金額に驚きました。
大綱について詳しくお話しして頂きました。現在市町村で『文化財の保存活用地計画』が策定されいるのは岐阜市、美濃市の2市で美濃加茂市、高山市が作成途中だそうです。この計画策定には膨大な書類や時間がかかりますが、補助金を活用して県内に増えて行ってほしいとのことでした。
質問の様子
昼食のお弁当
地域の歴史的建物調査。保存活用について(講義)
岐阜県博物館 元館長 髙橋宏之氏に登録文化財 旧岡田家住宅、古民家旧岡田酒店、国指定重要文化財 牧村家住宅にてお話しして頂きました。
旧岡田家住宅では大野町長 宇佐美晃三氏より文化財指定までのいきさつについての解説を交えてご挨拶頂きました。
髙橋宏之氏講義風景
大野町長 宇佐美晃三氏挨拶風景
登録文化財 旧岡田家住宅(講義・現地視察)
北岡田家は江戸時代より苗字帯刀を許された庄屋として当地を拠点に活動をされ、今日まで地元の名家として住宅を保存されてきたとのことで、廃藩置県や農地解放により建物維持についてご苦労されてきたことを説明頂きました。広い敷地に主屋の他、離れ、米蔵、道具蔵、納屋等が現存し、2つの門を起点に高い塀が敷地を囲う形態となっていました。広い敷地には手入れされた庭園があり、日々の手当てもあり今なお素晴らしい情景を残していました。主屋については部分的に補強が施されており、将来計画として屋根の軽量化を目指されているとのことですが、多くの費用が掛かる工事にて実現には時間が掛かりそうです。耐震化が万全となれば地域の観光の名所にもなりえると考えますので是非とも耐震、防災設備を充実して頂ければと思います。
「登録文化財 旧北岡田家住宅」での講義の様子
古民家旧岡田家酒店(現地視察)
旧北岡田家の西に位置する旧酒屋として、現在は民泊施設として利用されているとのことで、大きく修繕することなく今に至っているとのことでした。周辺塀には船板塀が残る歴史を感じることが出来ました。古民家利用として参考になると感じました。
「古民家旧岡田家酒店」の現在の様子と船板塀
国指定重要文化財 牧村家住宅(講義・現地視察)
過去、改造改修、改装を重ねてこられたとのことで、現在の姿に復旧される流れを説明頂きました。今の姿になる前の復旧図面を拝見すると、現在までに復旧される過程は大変興味深いものがありました。座敷においては現在の日本における「座敷」ではなく宗教的な意味合いの大きい室であったであろうとの解説が記憶に残りました。構造においては「鳥居建」と言われる構造で上屋と下屋に分かれた工法とのことで、愛知、岐阜、滋賀にてみられる特徴的な民家であることをご教授頂きました。
「国指定重要文化財 牧村家住宅」での現地視察の様子
今回の講座で現地にて文化財を直接見学することができ、大変勉強になりました。
HM 第1日目
日時:令和4年5月14日(土)13:20~17:50
場所:OKBふれあい会館 3階 301会議室
参加者:32名
ガイダンス
岐阜県ヘリテージマネージャー(以下HM)育成及び文化財建造物保存修理スキルアップ講習会ということで、その開催に至った経緯や岐阜県HMとして今後どうしていくのかを説明して頂きました。
横井守会長挨拶
講義の様子
登録文化財と歴史的建造物保存事業の概要(講義)
工学院大学教授・理事長・全国ヘリテージマネージャーネットワーク協議会運営委員長の後藤治氏に講義して頂きました。
HMの設立の背景を聞き、これからHMとして法令用語が分かっていることが重要ということで、「指定」と「登録」、「修理」と「管理」等の違いを教えて頂きました。この違いが分かれば「保存活用計画」を立てる時に所有者の負担にならないように出来ることを学びました。
次に街並みをよくする考え方、最初の取り掛かり、その後の進め方を高知県や秋田県を例に教えて頂きました。高知県の街並みは実際に見学したことがありましたが、そういう流れであの街並みが出来ていたのかと実感しました。今年度の全国大会は秋田県です。今度はいつもと違った視点で見学出来ると良いと思いました。
HMになった後の保存修理事業や観光拠点整備事業等の情報も教えて頂きました。
後藤治氏講義風景
他に文化庁がまとめている保存活用計画の構成を教えて頂きました。計画策定のポイント等も図と写真と共に説明して頂き、とても分かりやすかったです。何を残して何を省くのかを取捨選択出来るように勉強をしていき、良い建物を残していけるようになりたいと思いました。建物保存に固執するのではなく建物を活用する方たちの意見も取り込める柔軟な考えがHMには必要になっていくのだと第1日目でこの話を聞けて良かったです。
今後のスキルアップ講座もどのような内容を勉強すれば良いかも教えて頂きました。これらを踏まえて岐阜県に合ったカリキュラムで学んで行けたらと思いました。
ヘリテージマネージャーの役割と現状(講義)
ひょうごヘリテージ機構H2O世話人(特命係) 沢田伸氏に講習して頂きました。
HMの誕生の背景を図や写真と共にお話しして頂き、大震災等の後には文化財に登録されていたのは残される活動が始まりますが、名建築でも壊れてしまうとただの瓦礫になるという落差があるということから進んで来たようです。
兵庫県ではHMとは「地域に眠る歴史的文化遺産を発見し、保存し、活用してまちづくりに活かす能力をもった人材」と定義されているそうです。それを考えると建築的なことだけではなく、広範囲に渡って考える必要があるということを覚えておきたいです。
建物「単体」ではなく「地域」をキーワードとして考えて行くと重要な建物と位置付けることが出来るということを教えて頂きました。
沢田伸氏講義風景
兵庫県では「この指とまれ方式」、「地区制・世話人制」をキーワードとして現在まで続いてきたそうです。また、一人で行うのではなくチームを大事にしていくことが大事だということだそうです。
取り壊される直前にしか残そうという活動がなされませんが、熊本県では所有者に建物の価値を分かって頂けるように建物の誕生日会をする等様々な活動をしているということが印象に残りました。また、兵庫県では建築士としてのHMだけでは行き詰まりを感じ、多職種の方達も講習を受ければHMとして活動しているそうです。岐阜県ではどのような形にしていくのがよいのでしょうか。全国の取組にも目を向けてみようと思いました。
質問の様子
講座の班割及び班役割決め ※地域ごとに
講座の後に、地域ごとに班に分かれて班の役割を決めたり、今後の話し合いを行ないました。
今後はこの班ごとにこの講座を運営していきます。その中でHMの取り掛かりの地域の繋がりを構築出来たらと思いました。
岐阜県ヘリテージマネージャー育成及び文化財保存修理スキルアップ講習会
岐阜県ヘリテージマネージャー育成及び文化財保存修理スキルアップ講習会が令和4年5月14日(土)から始まりました。
岐阜県ヘリテージマネジャー育成及び文化財保存修理スキルアップ講習会のカリキュラムについて(講義・演習テーマ) 2022.pdf