岐阜県建築士会 まちづくり委員会

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ぎふHM 2022年度

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HM 岐阜新聞・中日新聞掲載

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HM第17日目

テーマ:Ⅰ.「私が見つけた登録文化財」(受講生による発表及び講評)

    Ⅱ.文化財の地域の景観・住民生活に寄り添った今後の活用方法を学ぶ

    Ⅲ.修了式

日時 :令和5年3月4日(土) 13:00~17:10

場所 :岐阜県勤労福祉センター ワークプラザ岐阜 3階 302会議室

参加者:31名

 

Ⅰ.「私が見つけた登録文化財」

 実際の事例を対象に受講生(5班)が作成した登録文化財の申請・修理及び活用計画を班ごとに発表し、あいちヘリテージ協議会(3名)、静岡ヘリテージセンターSHEC(1名)から講評を頂いた。

 

●1班(8名)発表:伊縫誠一郎氏

・名称:金龍山 暁堂寺/・員数 :1棟(建造物:本堂)/・所在地:岐阜県関市肥田瀬1280/・構造:木造平屋建て寄棟造桟瓦葺/・規模:建築面積32.60㎡/・建築年:江戸時代中期 宝永2年(1705年)/・所有者:金龍山暁堂寺

 

伊縫誠一郎氏 発表

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1.全体概要

 ・関市の富岡地区で一番古く創建された金龍山の山あいにある曹洞宗の寺

 ・檀家はなく地元住民と住職が代々寺を守ってきた

 ・本尊「聖観世音菩薩像」は関市指定重要文化財で「両面宿儺」の伝説を持つ

2.建造物の概要(本堂)

 ・江戸時代中期の宝永2年(1705)に再建されたと縁起にあり、内陣の木鼻意匠もその時代の特

  徴を示す

 ・本尊を納めた厨子のある内陣とそれを拝する外陣が一体となった3間×3間の建物

 ・令和4年台風14号の影響で裏の木が倒れ本堂屋根に大きな被害を受けた

 ・調査の結果、腐朽が深刻な箇所は今後計画的に修繕する必要がある

3.評価

 ・金龍山の谷あいにひっそり佇む山寺が周囲の自然に溶け込んだ貴重な環境

 ・檀家のいない寺を地域住民のコミュニティが支援し拠り所としてきた歴史や文化がある

 ・地域の古き良き伝統・文化・風習を受け継いで行こうという試みが必要とされている

 ・近年アニメ化された「呪術廻戦」にも登場する本尊「両面宿儺」も含めて地域外にも広く伝

  える

 

◎1班 講評:林秀和氏

 ・歴史を調べるとそちらを重視しがちだが、最後のこの建物の魅力を伝えて今後残すべき理由

  が重要

 ・古さや作り方など曹洞宗の永平寺等他の建物も多く見て比べて魅力を考え価値を客観的に評

  価すること

 ・文章だけを読んで魅力や価値を文化庁がイメージできないと登録に至らない

 ・つっかえ棒はとる、傷んでいる箇所は直すのみ

 ・写真は天候に配慮し掃除をしてきれいに撮ること

 

林秀和氏 講評

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●2班(8名)発表:中村修氏

・名称:旧 岐阜県庁舎/・員数:1棟/・所在地:岐阜県岐阜市司町1番地/・構造:鉄筋コンクリート造/・規模:地上3階建て地下1階 建築面積1,474㎡/・築年数:大正13年(1924年) 昭和33、53年増築 平成25年減築/・所有者:岐阜県岐阜市

 

中村修氏 発表

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1.全体概要

 ・岐阜でまず登録文化財を挙げるべき物件かつ班員に「司町旧県庁舎保存活用協議会」メンバ

  ーがいる

 ・「物件内部が立入禁止」「膨大な参考資料の内容が不統一」が問題→「建築文化財調査報告

  書」を参考に作成

 ・明治7年初代岐阜県庁舎竣工時からの行政中心「司の町」の歴史的記憶を今に伝える建物で

  ある

2.建造物の概要

 ・大正13年(1924)に建替えられた2台目庁舎で、平成25年(2013)南側部分のみ残して解体

  された

 ・設計顧問:矢橋賢吉・佐野利器、設計及び監督:清水正喜、施工:錢高組

3.評価

 ・登録基準(一):現存する道府県庁舎24棟の中で8番目に古く、RC造官庁建築物として初期の

         もの

 ・登録基準(二):外観意匠の三層構成、内部の玄関ホールから階段ホールにかけての造形的迫

         力

 ・登録基準(三):内壁の赤坂町金生山産の大理石及び含まれているシカマイアの化石の希少価

         値

         日本を代表する設計者達が手掛けた一部耐震壁付ラーメン構造の構造体

 ・歴史的文化価値を残しつつ保存修理にかかる費用を生み出す活用計画と修理計画・方針を提

  案

 

◎2班 講評:下會所豊氏

 ・前半の2/3「旧岐阜県庁舎建築文化財調査報告書」(日本建築学会東海支部)に基づく作成過程

  は不要

 ・もっと簡潔に、登録基準(一~三)の説明をすること(「登録文化財(建造物)意見具申資料」に

  は記載あり)

 ・ページを打ち、他県の人にもわかるように公共交通での経路も記載すること

 

下會所豊氏 講評

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●3班(5名) 発表:小島智之氏

・名称:養老鉄道 養老駅/・員数:1棟/・所在地:岐阜県養老郡養老町鷲巣白石道1200/・構造:木造平屋建て 入母屋造り瓦葺/・規模:建築面積:395㎡/・建築年:大正2年(1913年) 大正8年改築 令和4年改修/・所有者:養老線管理機構

 

小島智之氏 発表

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1.全体概要

 ・養老鉄道養老線の駅舎で、大正2年(1913)営業開始当時は大屋根切妻屋根であった

 ・養老駅周辺は外道沿いに遺跡等が集まり、養老公園の最寄り駅にある観光スポットである

2.建造物の概要

 ・大正8年(1919)現駅舎に改築(古材が使用されている)、この時点で養老鉄道の本社が置かれ

  た

 ・擬洋風建築でドーマー(飾窓)、しっくい+板張、入母屋造り、鬼瓦には社紋のYの字が刻ま

  れている

3.評価

 ・改築されてから100年が経過しており、改修箇所は認められるが建築当初の趣を残している

 ・周辺は古くからの遺構が残る集落で、建築当時の期間駅としての役割を外観に表している

 ・意匠上の特徴(造形の規範)として玄関柱の方杖や造付けベンチの足元にアールのデザインが

  ある

 

◎3班 講評:山本栄一郎氏

 ・もう少し突っ込んで、登録基準(一~三)のどれにどの部分が該当するか説明すること

 ・アールのデザインの由緒などを掘り下げていいところを主張すると納得性が高まる

 ・岐阜県には下呂温泉等たくさん見たいもの文化的価値のあるものがある

 

山本栄一郎氏 講評

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●4班(8名) 発表:桂川麻里氏

・名称:花の木窯・小山冨士夫邸/・員数:3棟(花の木窯/花の木窯 陶房/小山冨士夫邸)/・所在地:岐阜県土岐市泉町久尻/・構造 規模:花の木窯 木造平屋建て延べ面積102.20㎡・花の木窯 陶房 木造2階建て一部CB造 延べ面積86.40㎡・小山冨士夫邸 木造2階建て一部CB造り 延べ面積213.94㎡/・建築年:昭和48年(1973年)/・所有者:土岐市

 

桂川麻里氏 発表

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1.全体概要

 ・土岐市の東海環状自動車道から入った山中、美濃陶芸村の近くに位置する

 ・世界的な陶磁器研究者であり陶芸家の小山冨士夫の窯と自邸である

 ・昭和48年(1973)に「花の木窯」を開き自邸も構え、昭和50年小山冨士夫自邸にて生涯を終

  える

 ・平成19年(2007)土岐市に寄贈され、平成21年(2009)「花の木窯」での焼締め以降使用さ

  れていない

2.建築物の概要

 ・花の木窯・小山冨士夫邸設計者:元文化庁文化財保護部 主任文化財調査官 半澤重信

 ・花の木窯の設計者:築陶協力者 中里隆

 ・自然豊かなロケーションでの焼物教室、自然遊び、宿泊所としての活用及び花の木窯から美

  濃陶芸村への山道や「高根山古窯跡公園志野の里」を一体活用して陶器の歴史を学べる

3.評価

 ・どの建物にも柱や梁に、小山と半澤が飛騨から持ち込んだ古材を随所で使用している

 ・小山冨士夫が亡くなって34年経ってもその死を偲んで若手陶芸家たちが集まってくるような

  人物である

 ・自然の残った里山、登り窯の薪の材料となる雑木林、澄んだ小川、絶滅危惧種Ⅱ種に分類さ

  れる花の木が自生するという自然環境の良い中にあり、地域発展の聖地として陶芸家達にと

  っても歴史的にも残していくべき文化財と考える

 

◎4班 講評:塩見寛氏

 ・すごい発見だと思う。小山さんを知らないが半澤さん中里さんといっしょに作ったことにも

  価値がある

 ・まず飛騨からの古材を使用しているとか、ここにしかない建造物の価値を説明しておくべき

  である

 ・50年以上が条件だが、ちょうど50年経ったところで十分に価値がある

 

塩見寛氏 講評

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●5班(4名) 発表:大塚則幸氏

・名称:旅館 寿美吉/・員数:1棟/・所在地:岐阜県高山市本町4丁目21/・構造:木造2階建て/規模:延べ面積664.22㎡/・建築年:明治8年(1875年)の大火で土蔵2棟残り元の本体消失/明治期増築/昭和30年代改築/・所有者:寿美吉旅館

 

大塚則幸氏 発表

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1.全体概要

 ・高山市街地の北の端、宮川沿いの細い路地に面して建つ(そのため全景の写真が撮れない)

 ・約200坪の旅館を1月から調査するも、休日のチェックアウトからチェックインの間しか入

  れず細かい聞き取りもできず未完成である(平面図の作成に専念)

2.建造物の概要

 ・前身は質屋で、元の本体は高山の大火災で消失し大きな土蔵2棟だけが残り、明治期に土蔵

  の廻りを増築、昭和30年代に駅前の大丸旅館から東側客間を移築している

 ・北西角の土蔵は1階が厨房で2階が納戸、南側土蔵は当主夫妻が中に住んでいる

 ・玄関奥のホール上部吹抜の木組が見所、明治期の建設の特徴として軒高が高く2階の窓から

  光が入る

 

◎5班 講評:林秀和氏

 ・「いい物件を選ぶほど苦労する」ものだがそのいい例である

 ・「蔵が人を守った」という建物だと思う

 ・目を奪われるところが多いが、話されたことを書くことでいい

 

林秀和氏 講評

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Ⅱ.「文化財の地域の景観・住民生活に寄り添った今後の活用方法を学ぶ」

 講師:静岡ヘリテージセンターSHEC 塩見寛氏

 ヘリテージマネージャーが考えなければならない①~⑨のテーマについて静岡の事例を中心に紹介※②~⑧冒頭の選択問題は、阪神淡路大震災後に神戸市が防災用に作成したクロスロードゲーム(様々な場面を想定し二者択一の選択をすることで状況判断や対応を訓練する手法)を応用した静岡ヘリテージセンター(SHEC)バージョン

 

塩見寛氏 講義

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①日本人は「歴史的」なものを、どのようにとらえてきたか

 ・江戸時代には広重「道灌山虫聞之図」にあるように、日常身近なところで環境全体を味わっ

  ていた

 ・明治維新・太平洋戦争で「歴史的」なものが否定・破壊されたが、21世紀になって(2000年

  頃から)ようやく「歴史」が計画やまちづくりにおいて重要であることが認識されてきた

 ・2001.12.4国立マンション訴訟の判決で「良好な景観の恩恵を享受する利益は法律上の保護

  に値する」

②HMは、設計の仕事とどう向き合っていけばいいか

 ・焼津・花沢の里(静岡県唯一の重伝地区)の町医者としてHMが担う

 ・住民・所有者とふだんから顔見知りになりほどよい関係を築いていくことでHM活動を仕事

  につなげる

③建築基準法第3条《適用除外》を、どのように活かしていくか

 ・「歴史的建造物」は、地方自治体が定める建築基準法第3条第1項3号「その他の条例」に

  より適用除外を受けることができ、専門の委員会等で認められれば建築審査会を経ずに同意

  があったものとみなされる

 ・国交省が「その他条例」を作るガイドラインを出し、《適用除外》を認める緩和の方向に向

  かっている

 ・全国で条例を施行した市が出てきているが岐阜県は未。所管の行政と調整が必要である

④「本物」か否かと、高価か安価かをどう折り合えばいいか

 ・本物が見る眼を育てる→本物の風景が人を磨く→よい景観が人をつくる→風景が人の心をつ

  くる

 ・「風景」は人の眼に映るながめそのもの、「景観」とは自然と人間界が入り混じっている現

  実のさま

⑤文化財として指定・登録することを、所有者にどう話しをするか

 ・登録有形文化財:築50年以上・所有者の承諾(税制優遇措置等の利点及び難点を説明)・所見

  作成

 ・登録基準(1.国土の歴史的景観に寄与しているもの 2.造形の規範となっているもの 3.再現

  することが容易でないもの)の中の該当する価値について具体的に説明し承諾を得る

⑥防災か文化財かの岐路に立った時、どう対処するか

 ・HMはまちづくりの担い手であり、防災も文化財も両方を考えるべき立場

 ・静岡ヘリテージセンターSHECは平常時の活動と非常時における対応を検討している

 ・人口減少及び空き家増加は、歴史的建造物の空き家問題に波及している

⑦「史実に忠実」に復元する場合、バリアフリー化をどう考えるか

 ・名古屋城の木造復元にエレベーター設置をどうするか問題になり、両立する新技術が公募さ

  れた

 ・大須城は1階に展示を集約し、車いすの人が1階に入れるように手助けをする工夫をした

 ・文化庁が「文化財の活用のためのバリアフリー化事例集」をHPで公開している

⑧都市計画事業事業により歴史的建造物が壊される、さあどうするか

 ・静岡県菊川市赤レンガ倉庫が区画整理により解体撤去される危機を、換地計画変更で回避し

  て保存

 ・二者択一を迫られた場合も歴史的・文化的価値のあるものを残す方法がないか工夫・模索す

  べきである

⑨本来の機能がなくなったものに、価値はないのか

 ・「火の見櫓」①半鐘を叩いて火事を報せる防災施設 ②江戸に始まり全国に広がる ③生活

  の基礎的な単位の表象 ④しかし本来の機能を失っている

 ・本来の機能がなくなったものに価値はないのか→A記憶の風景としての価値 B地域の物語

  としての価値 Cまちづくりの素材としての価値はある

 ・広島平和記念公園-原爆ドームは世界遺産、宮城県の東北大震災被災建造物も保存される方

  向にある

 

Ⅲ.修了式

・修了証の交付

 

文化財建造物保存修理スキルアップ受講生へ  ヘリテージマネージャー育成講座受講生へ

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・会長講習会終了の挨拶

 本日、無事今年度の受講生全員に修了証を交付することができました。

 1年間欠席も少なく高い出席率で参加していただき本当にご苦労さまでした。

 また最初の立ち上げから骨を折っていただいた専務はじめ関係者のみなさんに感謝申し上げます。

 これで修了者が総勢33名になりました。令和5年度も募集人員20名の予定で開講します。

 名刺に終了資格を書く場合は「ぎふヘリテージマネージャー」で統一してください。

 今後はぜひ仕事として歴史的建造物の保全活用や文化財登録に関わっていってください。

 

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HM第16日目

テーマ:岩村の町並み変遷過程(講義)

    ヘリテージマネージャーの役割と現状(講義)

    伝建補助事業修理プロセス(講義・実地)

日時 :令和5年2月18日(土) 10:00~15:30

場所 :午前講義 岩村振興事務所岩村コミュニティーセンター 2階 会議室

    午後講義 同上

    実地研修 恵那市岩村町本通り伝統的建造物保存群保存地区内修理・修景物件の見学

参加者:28名

 

ガイダンス

 石黒会長よりあいあいさつ。

 NPO法人鈴木会長より、岩村でんでんけんの設立の経緯及び事業内容について次のような説明がありました。恵那市岩村町本町通り重伝建地区選定後、他の同規模同規模保存地区に見られる保存会や、修理修景事業を担当できる設計士が育成されておらず、町並みを組織的かつ技術的にサポートできる団体がありませんでした。そのためか住民においても、まちなみ全体として保存整備を捉え、文化財的価値を高めるという意識が育っていませんでした。このような状況を踏まえ、将来のためにも町並み保存を支え、牽引する地元人材が必要であると考えた恵那市が平成19年度、20年度に伝建地区国庫補助事業の設計監理者を公募した。平成20年度から補助事業の設計監理業務を各自担当し、業務を通して 文化財建造物の保存修理の考え方、書類手続、調査と記録等について学びました。

 月1回設計監理打合せ会を実施し、設計監理に加え、研修、啓発活動、組織的な調査等を行い、恵那市内を包括する歴史的建造物の専門家NPO法人を設立し現在まで、活動しています。

 

                      NPO法人いわむらでんでんけん鈴木会長挨拶と

石黒会長挨拶                いわむらでんでんけん設立の経緯について

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岩村の町並みの変遷過程(講義①)

 恵那市役所 教育委員会事務局 生涯学習課 課長補佐 三宅唯美氏に岩村城下を中心に発達した岩村の町並みについて講習して頂きました。

 「岩村城下の成立と変遷」

1.戦国時代以前の岩村

  遠山荘地頭・加藤景朝が岩村へ来た文治元年(1185)をもって岩村城総築の年としており築城

 とは表現していない。当時の居館は平地にあった。

  遠山岩村氏の本拠としての岩村城の総築は鎌倉初期だが、戦闘能力を充分備えた山城への発

 展は鎌倉中期、室町中期とする説があって明確ではない。岩亀3年から天正3年の織田と武田

 による岩村城争奪戦により居館も含め城下町も破壊され消滅した。

2.都市計画と建設過程

 近世城下町の形成は松平家乗が慶長6年(1601)に入府後城下町の造成・経営をはかり、その子乗寿の代に完成した。家乗は城麓も高台に藩主鄭を構え、これを中心に数位の山を防御ラインとし、この盆地中に城下町を形成させて城下町そのものを防御地域とした。城下町のほぼ中央に流れる岩村川に重要な役目をもたせ、川北を武士街とし、藩主鄭から西と北への地形を巧みに利用して武家屋敷を配し道路も防御線を考えて造られた。川南に一条の町通りをつくって町人街とし、郭内専士型の近世城下町となった。社寺の配置も城下町の防御を考えてあり、松平の都市計画の巧みさをしることができる。天正疎水と呼ばれる下町を流れる疎水も整備した。

 江戸時代の岩村城下町の状況は正保白絵図でうかがうことができる。本図によると、城下は登城坂が大手筋として真直ぐ西方へ伸び、これに2本の横筋(現上横丁、中横丁)が直行し、そほ北端は乗政寺山麓の東西方向に馬場通りに、乗政寺山山麓で屈折して新市場を通り木曽街道となっている。大手筋と両横丁に面して侍屋敷が配され、馬場通りに面しては馬屋が建てられ、馬場通り西半から新市場にかけて、侍屋敷・中間屋敷・足軽屋敷が配置されている。川南の東西方向の道(現本町通り)に合し、この道沿いに町家が並んでいる。本町通りの桝型や各所の木戸も描かれていない。

 三代目松平乗賢の時代の享保年間の絵図では上横丁が乗政寺山東側へ迂回して伸び、現新屋敷に中間屋敷や足軽屋敷が配置されている。本町西端には桝型がつくられ、桝型より下手にも町屋が並んでいる。本町通り東端、各横丁入口に木戸が描かれている。元禄16年の『差出帳』には、源吾坂、新市場と下横町を結び侍屋敷地の拡張、整備が図られた。

 明治39年(1906)に岩村電機軌道岩村駅の解説に伴い西町・新町・領家に町域が広がった。

 

三宅唯美氏による講義風景

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恵那市岩村町本通り伝統的建造物群保存地区の仕組、工法について(講義)

 恵那市役所 教育委員会事務局 生涯学習課 歴史資産整備係 係長 三宅英機氏にいわむらでんでんけんが作成した、いわむらデザインガイドをもとに岩村町本通り伝統的建造物保存地区における、町並み保存について講習して頂きました。

 デザインガイドは恵那市がいわむらでんでんけんに発注をし、岩村伝建地区における修理、修景の指針となることを目的に作成されました。デザインガイドの作成以前は、伝建地区の修理事業当初は修理の考え方、修理方法についての住民の方に理解いただくように説明するのがなかなか難しかった。デザインガイドを通して市民の方に説明することで伝建地区への理解がしやすくなったと考えています。

 

 岩村の町並み

  現在の岩村の町並みは17世紀以降のものです。

  町の中を流れる岩村川を挟んで、北側に武家町、南側に町人町が作られました。武家町に現

 存する武家屋敷はわずかですが、町人町には旧家がよく残っています。屋根は通りに面し、平

 入りとするのがほとんどで、壁面は隣家にならって通りより控えて建てられるのが一般的な形

 式です。通りは坂道の傾斜に沿って軒先の高さがそろった、美しい町並みを形づくっていま

 す。

 

 岩村の町家の特徴

  岩村の町家は主屋はいずれも通り庭形式の町家型の平入り、二階建て、桟瓦葺もしくは鉄板

 葺きです。車の通行をしやすくする為に一階の軒が切られていることも特徴の一つです。

  外形上の特徴は深い軒を支える出桁構造で、腕木下に繰型付き持送りを付けたり、一階の軒

 先に幕板をつけたものもあります。

  比較的軒の低い「厨子二階」と言われる造りが多く、江戸時代の主屋では、元来表側にだけ

 二階が設けられていました。明治に入ると裏側にも二階を設けるようになり、明治30年代にな

 ると総二階が現れるようになりました。在来の板葺石置屋根のときには、屋根下地は竹下地で

 した。

  岐阜県屋上制限規制(大正10年施行)に伴う屋根の改造により、本町通りの町家の多くは、前

 面および背面の軒高を上げ、柱間装置も改めたものが多くあります。江戸時代の柱間装置は、

 一階では、入口は大戸、ミセ・オクミセ・シモミセ部分は蔀で、二階の窓には出格子もしくは

 平格子を付けるのが一般的でした。明治期に入ると一階のミセやオクミセ部分に出格子を付け

 たり、入口部分は引違戸に改められるほか、店舗ではショーウインドウを付けたり、前面ガラ

 ス戸に改変することが多くなり、町中で現在でも数多く見ることが出来ます。

  配置、平面形状は、間口が狭く南北に細い敷地割りが多く、奥行きの深い一列四間型や二列

 八間型やそれらの変形が多いのが岩村町家の特徴といえます。使われている材料は柱などに使

 われている木材は桧がほとんどで、この地方の特徴をよく表しているといえます。栗材もよく

 使われています。土壌が栗の育成に適しており、庭によく植えられていたことが影響したと思

 われます。

  岩村の本通りは商人町ということもあり土壁が多く使われています。左官技術もすぐれたも

 のがあり、土蔵などでは、漆喰の鏝絵などもみることができます。

  ショーウインドウ、腰壁などに使われているタイルは、多治見市笠原産のタイルが使用さ

 れ、外観上の重要なワンポイントになっています。

  旧態をとどめた落ち着いた雰囲気のある専用住宅が多く、岩村町の商業の中心地として栄え

 ました。

 

 「地区による特徴」

 本町の町家

  本町地区は江戸時代には城下町の町人町があった場所です。主屋のうち約4分の1は江戸時

 代の建築物です。敷地のほとんどが東西にのびる通りに面して4~5間の間口で区画され南北

 に長い地割になっています。建築物は連坦して建っており、そのほとんどが平入で、厨子二階

 建及び二階建てを基本としています。これらの町家は平面は通り庭のある一列三間、一列四間

 を基本とするものが多く、ドマミセをもっていたとみられるものも少なくありません。敷地内

 には中庭を設け、奥に離れや座敷や土蔵などがあるのもが多くみられます。

  江戸時代の町家は板葺石置屋根で(勾配は2寸8分から3寸程度)、大正10年施行の岐阜県屋

 上制限規制以降に瓦葺きや鉄板葺きに改められました。現在鉄板葺きの屋根は昔ながらの勾配

 を保っており、瓦葺きのものは、棟高を上げ勾配を変更したものです。表の柱間がガラス窓等

 に変わっているものが多く、当時の痕跡から以前の姿を想像することができます。

 

 西町の町家

  西町地区はえど江戸時代後期から形成された東側と、明治時代末から形成された西側からな

 り、当初から異なる時代の建物が混在しています。地割は、裏通りで区画されるため奥行きが

 短くなっています。建築物の多くは明治以降に建てられ、木造2階建瓦葺きのものが多くなっ

 ています。

  西町は商店街を形成しており、通りに面した一階部分の外観は店舗化に伴う改造が進んでい

 ますが、2階部分は看板、鉄板などの裏に隠れていますが、伝統的な形態も残っており、新し

 い形態と混在してみられます。

 

 柳町の町家

  柳町地区はとう東西方向にのびる本通り対し、桝型から南にのびる南北方向の通りです。

  柳町には江戸時代には足軽長屋があり、その南端には、県史跡の一条信能終焉跡があり岩村

 神社として祀られています。現在の町並みは明治から大正時代の建物からなり、10軒が棟続き

 で作られた町家もあります。

 

 新町の町家

  新町地区は西町西側と同様に明治39年岩村電車の開通により栄えたまちです。

  新町は、商店は少なく専用住宅が多くなります。全体に建築当初から軒が高く、二階部分も

 居住空間として用いられています。

 

町並みの保存

 保存地区内の建造物は、長い年月の風雨に晒され、雨漏りがしたり、壁が傷んだりしてきています。また、生活スタイルの変化や新しい建築材料の登場もあり、昔の伝統的な建造物の外観が少しづつ変化してきています。この個々の建造物のわずかな変化が、岩村町の本通りの町並み全体を大きく変えてしまうことにつながってしまいます。この岩村町本通りの伝統的な町並みを住民のみなさんと一緒に守り、後世に伝えていくために、いくつかのルールと助成制度が定められています。

 

現況変更の許可

 保存地区内で行われる建築行為(増改築、修理、解体など)が町並みを大きく変えてしまうことにならないように、その計画をあらかじめ教育委員会に申請していただく必要があります。

 看板の設置、エアコン室外機等の設備機器の設置のほか、土地の造成のように直接建物を触らないような行為についても、申請が必要な場合があります。

 

助成制度について

 保存地区内のけ建築行為で、建造物の外観を一定の基準に基づいて整備する場合、予算の範囲内で補助金が交付されます。

 昭和戦前以前の建造物で、今後も保存していくことに所有者から同意をいただいているものを「伝統的建造物」としています。伝統的建造物に対して行う工事を「修理」、その他の建造物に対して行う工事を「修景」と呼んでいます。修理と修景では、補助金の額や基準が異なります。

 また、主屋・土蔵、付属屋によっても補助金の額が異なります。この助成制度は、伝建地区内の建造物が「文化財」という国民の財産でもある側面を併せ持っていることから行われています。一般的な住宅のリフォーム等とは異なる意味がある。また、工事の完了が保存修理事業の完了ではなく、工事後の建造物を適切に維持管理し、良好な状態で後世に伝えていくことがこの助成制度の目的です。岩村町本通り伝建地区の町並み保存は、住民の方と行政が協力して取り組むことで成り立っています。

 この歴史ある岩村の町並みを保存しつつ、住民の方がこのまちに誇りを持って住み続けていけるよう、保存修理事業を進めていく事が大事です。

 

三宅英機氏の講義風景            昼食の弁当

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いわむら伝建地区修理の技法(講義)と恵那市岩村町本通り伝統的保存地区(現地視察)

 現地視察の前にいわむらでんでんけん 志津美穂氏にいわむらでんでんけんが取組む伝建地区における建造物の修理、修景について講義して頂きました。

 

伝建補助事業修理プロセス

1.聞き取り調査

  物件担当者とでんでんけんのメンバーもう一人、最低2名で現地調査に入る。

  この時に、現状平面図・現状立面図・矩計図をとり、スケッチする。

  この時の平面図とりは、家財道具等荷物がたくさんありスケールをひとりで扱うには少々困

 難である。また、この時に柱の大きさを拾っておく。(解体してみると、たまに柱が五ひらにな

 っていることがある)立面図は、現状に忠実に拾っておく。たとえば、タイルの一枚の寸法・格

 子の形状寸法等。矩計図も解体しないとわからない部分はありますが、出来る限り正確に拾っ

 ておく。また、屋根の修理工事も行うのであれば、屋根に上がり実測しておく。このような調

 査があるので2人以上で行うようにしている。

 

2.現地調査、現況図面作成

  建物を図面化して修理計画をたてる。現状写真を残す。

 

3-1・2.復元計画(文化庁現地指導)

  文化庁の現地調査時に復元計画を諮り、修理の方向性(復元をベースとする)を決定する。

  復元計画では、市などが保有している古写真を利用している。復元(外観)の根拠である。

  証拠、写真よりも前の痕跡がある場合どちらを優先するかが最大の悩みです。いずれにして

 も、建具等の形状江戸期に遡って復元することは難しく、古写真を参考にしている。

 

4.実施設計

  文化庁の指導を基に図面及び計画を修正し、実施設計へと移る設計積算書を作成、元請業者

 を決めて頂く元請業者を決定後、元請と設計士で打合せを行い伝建物とリフォームとの違いを

 説明し理解を求める契約時期、施工時期を決定し、本工事へと移る。

 

5.全体の管理及び解体の伴う痕跡調査

  このように解体してみないと分からない痕跡を調査するためには元請業者との綿密な打合せ

 が必要となる。

 

6.痕跡調査をもとに痕跡図を作成

  解体を伴う痕跡調査を行う。

  調査で分かった痕跡を図面、写真に保存する修理計画と痕跡との整合性を確認する。

  痕跡調査で判明した新事実で計画の矛盾が判明した時は市文化課と相談し文化庁の支持を仰

 ぎ計画変更を行う。

 

いわむらでんでんけん 志津美穂氏講義風景

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図面に残す    現状平面・立面・矩計・計画平面・立面・矩計

現状図面の描き方 柱の大きさ・柱の内々間隔を計ることにより柱ピッチがわかる

         建物全体の変遷(修復履歴等)痕跡図として残す

         柱、梁など個々の痕跡図作成(ほぞ穴、荒壁跡、釘穴)

『施行中』

塗装    塗装するときは古色仕上げとする

      もしくは塗装しない(その建物の現状の色に合わせる)

      塗装に関する取り決めは岩村にはありません。設計士と所有者さんとの話し合いで

      決めています。本来、外部に塗装をすることは少ないため、無塗装とし年とともに

      色あせていく儚さを楽しんで頂けるような説明を所有者さんに説明しています。

 

建物の高さ 建物の高さ(矩計)の変更をしない

      揚屋に伴う工事の場合は柱の長さを守るのか、町並みに合わせた高さを守るのか?

      それは、その建物の矩計を維持するのか?現状の街並みを守るために軒の高さを維

      持するのか?この2つのテーマは似て非なる事柄です。

      伝建物の修理には大体土台の修理が付いて回ります。大規模になるほど足元(土台)

      の修理は欠かせないものとなります。でんでんけんの中で未だに意見がまとまって

      いない状況です。

 

軒先    バスが走っていた時代縮めてしまった軒先を出来る限り伸ばし復元する

      軒高の低い建物軒先をどう扱うかが課題

      軒先の復元のあり方も未だに決めかねています。それは、建築当初は大屋根、下屋

      の雨水は水路に流れ落ちていたものが、明治後半~昭和時代バスが運行することと

      なり、水路は側溝となり、水路まで伸びていた下屋庇は切り取られてしまいました。

      復元することは可能ですが、問題も発生します。

      1.道路敷地内への越境

      2.軒高が低いため、箱形のトラックがぶつかる

 

調査をしても明確な痕跡がでてこない

 改築が多く痕跡が残っていない➡『現状維持』とする

 現存しない建具などはどうするのか➡その地域で多くみられる形に合わせる

 

講習のまとめ

 伝建地区に指定されて国、県、市からの補助金を頂いて個人宅の建物を修理する。

 補助金を使う=個人宅であっても文化財と同じ扱いであるから全て復元するのか?

 住みにくい家ならいらない。

 いっそ解体して新しい家で修景してしまえばいいのか?

 この矛盾する2つの意見を幾度となく横地氏と相談しました。

 答えは聞くものでなく自分たちで出すものだとご教授頂きました。

 

人が住んでこそ建物は長持ちする。「住み続けてもらうための修理・修景事業」

 

伝建地区のこれからの課題

 所有者さんのどう理解度を高める

 ・歴史(時代、成り立ち)を感じられる街並み

 ・残すための修理・修景事業

 ・個別の家も大事だが、それぞれが集まってできた町並みが重要

 ・その建物を維持することが最も重要

 伝統的保存地区における修理、修景の違いと、文化財の修理の考え方、修理方法について理解することができたと思います。

 

恵那市岩村町本通り伝統的建造物群保存地区(現地視察)

 引続きでんでんけんの皆さんの案内で地区内を見学した。

 

「中根家修理工事」(修理工事中)

 今回、見学した建物で唯一、修理中の建築物である。中は工事中であることもあり見学することは出来なかったが今後の業務に大いに参考となった。現在、基礎工事中で揚屋をしたうえで基礎を施工する工法を取っている。

 住宅ということもあり、当初からは内部は、かなり改変されているようで、大規模な改修工事に見受けられた。

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「水野家店舗」(修景工事)

 今回ご紹介頂いた事例のなかで、唯一の修景物件の水野家店舗である。

 修景とは、条例で定められた修景基準にあわせた建築物です。岩村の伝統的建造物との調和を考慮し修景した建物でこの水野家も岩村の町並みと周囲の建物との調和を考慮し計画されている。今後改修計画するうえでどう周囲との調和をとって計画していくのか課題である。

 

改修前 南全景               改修後 南全景

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「恵那市指定文化財 鉄砲鍛冶屋加納家」

 旧加納家は恵那市指定文化財で鉄砲鍛冶当時の建築物としてでんでんけんが担当した建物です。

 

「加納家」での現地視察の様子

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 加納家は岩村藩付きの鉄砲鍛冶として、鉄砲を製造していた家である。

 建物は文政年間以降に建てられたもので、天保2年(1831)12月に、加納家が移り住み鉄砲鍛冶を生業として生活していた。道路に面する壁は飯喰で塗籠められていて岩村藩にとっては重要な建築物だったことがわかる。加納家の裏は、明治12年(1879)までは鉄砲の試射や練習できる様な広場があったといわれている。

 

「(仮)小林家」(修理工事)

 小林家は伝建地区の建物を用途変更し現在、宿泊施設として有効利用されている建物である。

 今回見学した建物の中では登録有形文化財の趣旨に一番近い建物で、今後の自分たちの業務に大いに参考となる物件だと感じられた。

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「浄光寺」(修理工事)

 この浄光寺は社寺建築では珍しい蔵造りで屋根面に土壁が塗籠められた置屋根造りの建物である。土壁が屋根の上にあることで重量が重くなっている。そのため小屋組を鉄骨で補強し修理工事を実施したそうです。

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HM第15日目

テーマ:地域の社寺建築や民家等の歴史的建築物とそれに関わる建築資料調査・保存活用に

    ついて(講義①)

    実際の事例を対象に、修理・活用計画を作成し、討論などを通じ、破損状況に応じた

    修理方針を立てる(講義②)

日時 :令和5年2月4日(土)13:00~17:10

場所 :OKBふれあい会館 3階 302大会議室

参加者:32名+あいちHM協4名

 

石黒会長による第15日目挨拶

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地域の社寺建築や民家等の歴史的建築物とそれに関わる建築資料調査・保存活用について

(講義①)

 元博物館館長 髙橋宏之氏に講習して頂きました。

 

1.建築年代を示す資料

 1 棟札

 ・建物の新築、再建、修理などの折に作られるもので、工事の内容、年月日、施主、大工など

  施工者の名前、願文などが記されている。

 2 普請帳

 ・社寺や民家などを建てたときの関係文書を綴ったもの。

  (例)髙橋家住宅(県指定)の普請帳『普請諸事覚長』(文化6年3月吉日)

     記載項目:大工渡し方覚、金渡し方覚、畳之覚、左官覚、大工振舞①、大工祝儀覚、

          かやかり、建具之覚、大工振舞②、栃之覚

 3 墨書

  (例)武並神社本殿(国指定、永禄7・1564再建)

     寛文11・1671修理時の墨書

     「西之妻 寛文拾壱年 亥之 極月廿日ニ此板打申候」

 4 瓦銘

 ・瓦に生産者や施工した年月日などを刻印したり墨書きしたのもの。

 5 伝承

 ・地震や火災、社会的に大きな事件などの年を起点とした新地、再建などの伝承。

 (例)牧村家住宅(国指定 元禄14・1701頃)の伝承

    「元禄15年の赤穂浪士討入りの前年に建てた」(当家の云い伝え)

 6 普請帳以外の文献資料

 ・民家などにおける代々の日記帳

  (例)旧岡田家住宅(国登録文化財)、都筑家住宅(国登録文化財)など

     設計図書、家相図など、社寺などの記念誌、その他

 7 その他

 ・建築儀式などに使用した槌(墨書)、式次第文書など。

 ・社寺建築などの設計に使用された型紙などの資料で記年銘のあるもの。

 ・古写真、その他。

 

2.民家における痕跡の調査

 1 後補柱の見分け方

 ・1 風蝕、煤け具合、仕上、材種が他の柱と違うかどうか、これらは柱位置、方位、風の当た

    り具合によって違うから、それらを考慮したうえで比較、判別する。

 ・2 柱の面(隅の落としてあるところを面という)の幅が違うかどうか。(面と時代の参考図

    は後日配布予定)

 ・3 柱は一般に同じ荷重を受けるところでは同じ太さのものを使う。太さが特に違うときは疑

    ってみる必要がある。

 ・4 相対する柱の一方に仕口の痕跡があり、片方の柱にそれに対応する痕跡がないとき。

  この場合は

  1)片方の柱が後補か

  2)その間にもう一本柱があったか

  3)柱の向きや位置を動かしたか

  4)別の建物の古材を利用したか

  5)片引戸のように左右違う間仕切装置があったか

 ・5 柱の礎石から梁まで達せず床面など途中で止まっているときは後補のものが多い。

 ・6 後入れの柱では柱にほぞをささず、押し付けただけのものもあり、またほぞ穴が他に比べ

    て浅いことがある。また、梁に柱を横から押し込むための切欠きのあるとき、柱芯と梁芯

    がずれているときも後補の時が多い。

 2 失われた柱の証拠

 ・1 梁や桁に柱のほぞ穴が残っているとき。

 ・2 床下に柱の下部が残っているとき、柱と床束では太さ、面の大きさ、材質が違うので判別

    できる。

 ・3 鴨居や指物の上に柱の上部が残っており、その切り口が新しいとき。

 ・4 その部分の長押を打ち替える時も柱を取り去っている事が多い。

 ・5 新しい指物や梁が入り、柱間が特に広いとき。

 ・6 構造上当然あると思われるところに柱が無いとき。

 3 後補の指物の証拠

 ・1 片方だけにほぞがあり、一方にほぞが無いとき。

 ・2 片方を大入れにせず横から押し込んでいるとき。

 ・3 片方の柱が取り替えられているときは当初柱に旧鴨居のための別の仕口がないかを調べ

    る。

 ・4 他の指物に比べて、仕上、材質、煤け具合、形状に変わりがないかどうか。

 4 土壁の証拠

 ・1 柱に貫穴、小舞穴があいているとき。

 ・2 梁や桁に間柱の穴、小舞穴があるとき。

 ・3 外壁の柱で、柱の外面から少し内まで風蝕し、それが土壁の厚さを引いたくらいのとき。

 ・4 小舞をさす板の釘穴があるとき。

 ・5 小舞をもたせる楔穴があるとき。

 5 板壁の証拠

 ・1 柱に板をはめ込む溝があるとき。

 ・2 桁、梁、鴨居、敷居、貫などの水平材に板をはめ込む溝があるとき。

 ・3 貫に板を打った釘穴があるとき。

 ・4 柱に胴縁(幅1~1、5寸、せい2~3寸くらい)の穴があるとき。

 ・5 柱にパネルを打ち付けた釘穴があるとき、このときは柱面の風蝕、煤け具合を見て、土壁

    か、板壁かを決める。

 6 開放の証拠

 ・1 柱に壁の痕跡がないとき。

 ・2 柱に敷居、鴨居の痕跡がないとき。

 ・3 框の上に敷居を重ねているとき。

 ・4 鴨居が後補で、元は開放のことがあるから注意してみる。

 7 上ゲ戸の証拠

 ・1 鴨居の上までの柱の溝。

 ・2 溝のための桟を柱に打ち付けた釘穴。

 ・3 戸の幅だけ小さくした鴨居、戸袋の痕跡。

 8 窓の証拠

 ・1 窓台の存在、あるいはその柱への仕口跡。

 ・2 格子の横木の穴。

 ・3 柱の下方に壁の痕跡があり、上部になんらの痕跡もないとき。

 9 雨戸の証拠

 ・1 一本溝の敷居、鴨居の残存、またはそれらがあたった跡。

 ・2 柱外面の戸ずれ。

 ・3 戸袋の痕跡。

 ・4 指物の場合はひばたの欠き取り。

 

参考文献:『復元的調査および編年(案)』(日本建築学会民家小委員会・昭和35年)

 

3.添付資料図面、写真の解説

 ・武並神社本殿(承久2・・1220創立、永生年間1504~20兵火全焼、永禄7・1564再建)

        :図1~11 鎌倉後期後半に良く見られる手挟

 ・円鏡寺楼門(鎌倉後期・永年4・1296)・図1 蟇股(木板)

 ・日龍峯寺多宝塔(鎌倉後期・1275~1296):図2

 ・荒木神社本殿(室町後期・明徳元年・1390):図3 面取りが大きい。

 ・安国寺経蔵(室町中期・応永15・1408):図4 禅宗様、国宝

 ・阿多由太神社本殿(室町後期・1467~1572):図5 手挟

 ・国分寺本堂(高山)(室町中期・1393~1466前):龍木鼻。手挟裏面にも装飾。

        向拝修理(桃山期・1573~1614)

 ・願興寺本堂(桃山期・天正9・1581):木鼻、手挟

 ・横蔵寺本堂(江戸中期・寛文9・1669):図8

 ・大矢田神社拝殿(江戸中期・寛文11・1671):図9

 ・大矢田神社本殿(江戸中期・寛文12・1672):図10

 ・横蔵寺仁王門(江戸中期・延宝2・1674):図11 格天井板に絵。虹梁の若葉。

 ・横蔵寺寺門(江戸後期・安永7・1778):図12 木鼻(獏、抽象的)

 ・永照寺本堂(江戸後期・天明3・1783):図13 虹梁の彫りが深くなっている。

 ・宗猷寺本堂(江戸後期・文政7・1824):図14 虹梁の渦はもうない。

 ・真宗寺本堂(明治45・1912):図15 外陣に柱なし、小屋裏組は鉄骨トラス組。

 

髙橋宏之氏講演風景             講演の様子

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実際の事例を対象に、修理・活用計画を作成し、討論などを通じ、破損状況に応じた修理方針を立てる(講義②)

 NPOあいちヘリテージ協議会理事 有限会社 林技建秀設計室 林秀和氏に講習して頂きました。

文化財建造物の修理・活用の実例

1.伝統構法を守りつつ修理を行うには?重伝建地区内の修理の実例

 1 修理建物の写真による概要の解説

  ・本光寺 本堂修理

  ・靜巨寺 惣門修理

  ・智満寺 仁王門修理

  ・瑞泉寺 本堂修理

  ・有松 服部家住宅 表蔵 部分修理

  ・有松 服部家住宅 みせ

  ・有松 永井家住宅 修理

  ・有松 服部家住宅 洋館修理

  ・足助 澤田家住宅 新築修景

  ・ 足助 新貫家 R4年度修理

  ・足助 松井家住宅 修理

  ・足助 中澤家住宅 修理

 

 2 伝統工法(柔構造)と在来工法(剛構造)の違い

  【伝統工法】

  ・やわらかい建物(ゆれて地震に耐える)

  ・土壁の変形耐力

  ・仕口のめり込みなど耐力 仕口の変形

  ・屋根などの軸力を考慮し重くすること

 【在来工法】

  ・堅い建物(ゆれないようにして地震に耐える)

  ・仕口が変形しないように固める

  ・高耐力要素が可能

  ・屋根などは軽いほうがいい

 【伝統工法の特徴】(軸組図で解説)

  ・礎石、延べ石、足固め、土台、通柱、差鴨居、土壁、長ほぞ

  ・変形量:1/10~1/20

  ・500~300ミリ程度のゆれ

 【在来工法の特徴】(軸組図で解説)

  ・基礎、アンカーボルト、土台、通柱、管柱、胴差(明治以降から)、筋違、構造用合板、

   金物固定

  ・変形量:1/150~1/200

  ・20~30ミリ程度のゆれ→ゆれない

 3 改修事例解説

 【ケース1 足助本町経蔵】

  耐震改修及び普及箇所の修理?

  ・建物概要

   土蔵:切妻造桟瓦葺き塗籠造り、桁行2.5間、梁間4間

   外壁:塗籠漆喰簓子付下見板張り、東出入口庇付

  ・被害把握

   外壁:既設外壁波トタンを撤去し元々の建物の損傷具合を確認。

      塗籠漆喰の鉢巻き部分の剥落。

   床下:山からの湧水の為湿気過大、床組の脆弱性。

   2階:南東側野地板からの雨漏、腐朽荒壁、中塗りの補修跡から壁、柱、貫などの腐朽具

      合を予想。

      野地板の腐朽詳細:雨が入り葺き土が流れ出ている。

  ・補強場所はどこに?

   床組み部分の補強方法

   湿気対策:床下の残土鋤取り、防湿コンクリート打設。

   構造補強:足固めの新設 柱部 :やとい材ケヤキ赤身蟻落とし+埋木

               足固め:120×120桧

               込栓 :樫材 Φ18

   込栓1本で1tのせん断耐力。

   足固めとやといを接合する込栓は柱面から4Φ以内に、2本目は1本目から7Φ以上離して

   打つ。

   土台のほぞはやといで入れた。

   ほぞの高さは柱幅まで。ほぞの幅は角材で柱幅の1/3、丸材で1/4が限度。

  ・補強方法の検討

   柱の取り換え方法:柱脚部分 土台の腐朽がない事確認の上、やとい材+込栓にて固定。

   柱頭附近部分 長ほぞの車知留め+込栓固止め。

   修理柱を建てこむ時に2階床梁挿入しながらの取付。

   柱間部分 本貫3段通し貫留め。

  ・改修内容

   屋根:桟瓦葺き葺き替え。

   外壁:漆喰(鉢巻き含む)全面塗替。

      簓子付下見板張り部分補修、部分取換済。

   玄関土間:床高上げ(足固め施工により)。

   出入口引き分け戸:既設再利用(鏡板張替三重貼)。

   内壁:壁の長期利用の為、通気の為に桧板張り。

 【ケース2 足助田町 いづつや】

  店としての大開口維持及び2階街道側の開口を含めた意匠の復元?

  ・建物概要

   旧馬喰宿(いわれ):切妻造り桟瓦葺き塗籠造り

   棟札:文化元年 1804年(大火のちょっと後)。

   桁行6.5間、梁間6間。

   外壁:塗籠漆喰 平入。

   2階に博打部屋。

   阿吽の鬼瓦。

   店の開口4.5間、昭和40年代に鉄骨の柱Φ90、2か所で受ける大梁構造に改修。

   1階街道側店舗に柱があったところがすべて切断されている(上記鉄骨補強)。

   2階街道側の和室の窓は昭和のアルミ窓。アルミ窓を残す改修の方向性で委員と意見相

   違)

   軒先を600程度拡張した痕跡、塗籠漆喰が残っている。

   切断された床梁から延びたほぞ:本来は出庇の出桁を支えるために600mmほど伸びて、

   逆蟻で出桁を支えていた。

  ・改修方針、内容:

   足助の街並み→軒先が連続している事が重要。

   構造補強と店舗、街並み意匠を優先。

   補強用の柱を新設(柱復元)。

   真壁を復旧。

   昭和に改修した新設柱は残す。

   切断された柱を受けている梁を補強する為に柱、差し鴨居、連続させる梁を増設。

   柱を建てない出庇改修。

   床梁3尺毎に腕木を床梁からボルトで引っ張り、腕木は横ほぞで大梁に差し込み庇の垂れ

   を防ぐ。

   腕木の先端は既設の出桁を使用する為に同じく横ほぞ+鼻栓で固定。

   柱を建てないことが街並みをつくること。

   復元に近い軒先。

   古い長ほぞは保存。

   2階の窓は木戸(雨戸)と紙障子の2連仕様(活用上の意匠で復元ではない)で改修。

 【ケース3 足助旧山本金物店】

  この大開口を維持したままの耐震改修及び建物の修理?

  ・建物概要

   木造2階建て切妻造り桟瓦葺き。

   桁行7.5間、梁間4.5間。

   外壁:下見板張りの上波トタン張り。

   木製手延べガラス戸8本の4.5間の大開口(鉄骨Φ75、1本支え)。

   屋根には穴が開き雨漏れ、腐朽、外部建具からの雨水の侵入、床下からの湧水の問題。

   店正面の鉄骨(前出Φ75)補強、床梁受け。

   出桁を金物受けで支え。

   屋根からの漏水、腐朽菌の発生。

   土台は腐朽し無くなった状態。

   屋根には、びりびりに破れた白シート。

   江戸期の建物に2度増築の履歴。

   現況は耐震性ゼロ。

  ・改修内容

   補強案を3案以上検討し最終補強案として内側に構造梁、柱補強、外部の意匠に影響を与

   えないように補強梁は「ちぎり」にて接続。

   外部意匠として木製建具の復元(4.5間)、亜鉛メッキ鋼板張りの戸袋復元。

 まとめ

 ・改修する建物の創建時代を考慮し補強方法を選択。

 ・構造補強なのか、意匠優先の補強なのか?

 ・後世に文化財を残す為に創当時の部材を残す方法を優先する。

 ・重伝建地区内の伝建物は街並み保存の意味合いが強いが、その中で重要な建物も含まれてお

  り、修理には特に注意が必要である。

 ・補強方法は建物ごとに違うのでその都度考える必要があり、補強方法をなるべく多く蓄えて

  おく。

 

林秀和氏 講演風景              講演の様子

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HM第14日目

テーマ:重要文化財の改修・整備の事例と、地域の景観・街並みに合った独自活用方法の研修

    (環境計画及び修復の技法・工法)(講義)

    保存活用の策定について(保存活用計画制度及び策定、策定後の補助制度の説明につい

    て)(講義)

    「建築基準法第3条の解説と該当建築物について」

日時 :令和5年1月21日(土)13:00~17:10

場所 :OKBふれあい会館 3階 301会議室

参加者:30名

 

米澤貴紀氏 講習風景             講習の様子

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講義①:重要文化財の改修・整備の事例と地域の景観・街並みに合った独自活用方法の研修

 「重要文化財の保存活用事例」について、名城大学理工学部 建築学科助教 米澤貴紀氏に講習し

 て頂きました。

 

1.重要文化財の保存活用事例

<文化財の活用とは?>

  文化財保護法第1条には、「文化財を保存し、且つ、その活用を図り、もって国民の文化的

 向上に資するとともに、世界文化の進歩に貢献すること」とあり、従来は保護に重点が置かれ

 てきた。

  また、国際的な原則を示しているUNESCO「文化遺産および自然遺産の国内的保護に関する

 勧告」(1972年)にも「文化遺産及び自然遺産の保護、保存及び整備活用について責任を負

 う」とある。

  近年まで、社寺建築などは現代的な活用には馴染まないものが中心であることから、保存が

 優先されてきた。

  しかし、近年では、文化財に対する関心が高まり、積極的な活用が希望され始めた。

  現代社会で機能している近代の建築物、居住等に用いられている民家等では、継続的に使用

 可能とし活用していくことが保存の前提であり、保存のための公有化される文化財建造物を、

 公共の施設として活用する動きが出てきた。

  文化財の価値、後世に伝えることへの理解を広げ、深めるために、保存とともに活用を適切

 に進めることが大切だと考えられる。

  保存に対する配慮を欠いた利用は、その価値を損なうおそれもあり、活用にあたっては文化

 財としての価値を損なうことの内容に配慮する必要がある。

 

<活用の方針>

 Ⅰ.公開

 Ⅱ.機能や用途の維持

 Ⅲ.新しい機能や用途の付加

 Ⅳ.活用と文化財的価値の両立

 

Ⅰ.「公開」

  最も一般的な方法。文化財を気軽に楽しめる存在にすることが、地域における最も有効な文

 化財の活用方法。

  建物内外の公開の機会を設けることが望まれる。

  外観の公開が基本。まちなみ、景観の構成要素となるものは、そこに在り続け、誰もがいつ

 でも眺められること自体が活用。標識や解説資料などに充実、文化財の外観を引き立てる周辺

 地区の整備等が望まれる。

  内部公開、敷地内に所在する文化財の外観公開では、所有者のプライバシー保護や宗教建築

 としての性格の保持、管理方法との調整が必要。

 

 〇円覚寺舎利殿→年に2回公開

 〇永保寺観音堂、開山堂→上手な公開設定をしている

 〇正福寺地蔵堂→年に3回内部公開

~公開の仕方の事例~

 〇角屋:1階と2階に分けて、入場料を別途徴収

~文化財の価値をどこに見るか~

 〇泉福寺仏殿(大分県国立市)修理では元禄7年の状態に復元

 〇法隆寺綱封蔵(奈良県生駒郡斑鳩町)→修理にあたって、当初の姿に復元

 〇善導寺庫裡(福岡県久留米市)→耐震性を確保するために大胆に鉄骨の補強

 

Ⅱ.「機能や用途の維持」

  文化財がもつ機能や用途を維持し、使い続けることは活用のひとつの在り方。

  文化財にとって建設当時の機能や用途それ自体が重要、それが維持されていることが文化財

 価値の一部となる。

  しかし、本来の機能や用途も、時代の変化により変わっていく。特に民家建築における居住

 の形態。

  これに応じた内部の改造等は、文化的価値を損なう可能性もあるが、従来の機能や用途が維

 持される意義は非常に大きい。

  したがって、本来の機能や用途の維持をできる限り図るとともに、既に機能や用途が失われ

 ている文化財についてもその復活が可能となるように十分に配慮すべきである。

 〇吉田家住宅(埼玉県)所有者は同一敷地内の別建物に住んでいるため、内部も見学が可能

 〇福永家住宅(徳島県鳴門市)製塩業を営んでいた家・塩田、製塩施設も併せて整備・復元

 〇本芳我家住宅(愛媛県喜多郡内子町)外観と庭園は公開・現代の生活を営むための整備が行

  われた

 〇箱木家住宅(兵庫県神戸市)現存最古の民家のひとつ・公開に主眼をおいた活用

 

Ⅲ.「新しい機能や用途の付加」

  建物が本来持っていた機能や用途が失われてしまった後に、新しい機能や用途を加えて積極

 的に活用する方法。

  特に、本来の機能や用途を維持できなくなった建物においては、公開の機会の拡大につなが

 り、文化財の魅力を広く伝える手法として有効。

  歴史的建造物の活用に名を借りて実質は文化財の価値の破壊行為となり事例も散見される。

  機能や用途の変更に当たっては、文化財の持つ価値の所在を把握し、改造等の実施による価

 値の損失を最小限にとどめ、むしろその魅力を引き出すような手法を確立することが求められ

 る。

 〇旧第四高等中学校本館(石川県金沢市)・現在は、石川四高記念文化交流館

 〇旧名古屋高等裁判所(愛知県名古屋市)・現在は名古屋市市政資料館

 〇旧浅香宮邸(東京都港区)・現在は東京都庭園美術館

 〇太刀川住宅・店舗(北海道函館市)・元は米国商の商店兼住宅

 〇那須家住宅(宮崎県椎葉村)・並列型民家の代表的な例

 〇旧金毘羅大芝居「金丸座」(香川県)・現存最古の芝居小屋

~現代的な用途での利用~

 ・文化財の価値と利便性のバランスを考慮する

 

Ⅳ.「活用と文化財価値の両立」

  文化財は、改変部分を含めて構造・空間構成・部材・各部の技法などあらゆる部分に独自の

 価値を見出せる。

  あらゆる面に価値があることを強調して現状を変えることを頑なに否定することは、改造を

 伴う活用の有効性を全く否定してしまう。

  本来の機能や用途を維持する場合でも、部分的な現状の変更は避けられないことがある。

  文化財保護の要である保存と活用の両立にあたっては、現状を変更してはならない部分を十

 分に議論して認知しておく必要がある。

  文化財の価値は様々であり、位置や規模を含めた外観に文化的価値の力点があるとみなされ

 るものがある場合、活用のための内部の改造は文化的価値を必ずしも大きくは減じないと判断

 される場合もある。

  細部に価値の力点があるとみなされるものの場合は、装飾的部材や特殊な技法・仕様を損傷

 しない配慮をするなど、文化財の価値に応じた判断が求められる。

 

2.景観・まちなみと重文の活用

<まちなみ・景観と重文建物>

  景観・環境と一体となった文化財の保全、活用がもとめられる

  →文化財が景観をつくり、景観が文化財の価値を守る。

  景観・まちなみの性格を重文建物が代表的に示す。

  まちなみ・景観の歴史と成り立ちを理解してもらうための活用。

  〇内子町_本芳我家・八日市・護国の町並み(重伝建・愛媛県喜多郡内子町)・漆喰壁

  〇京都・三条通_旧日本銀行京都支店・近代京都の経済の中心街、京都の近代をよく示す

  〇武富町武富島_旧与那国家住宅・台風に備えた造り、珊瑚を使った塀

  〇金沢・ひがし茶屋街_志摩・江戸時代に開かれた茶屋街

  〇函館_太刀川家/函館別院/旧函館区公会堂・幕末~明治の近代の風景

 

3.まとめ

<文化財の保存と活用>

  文化財としての価値を保つことが大前提。

  その上で、適切な活用の方法とそのための整備方針を考える。

  建物単体だけではなく、敷地全体、周辺のまちなみとの関わりについても考える必要があ

 る。

   →そこに建っている意味と価値、周りへの影響

  建物の価値がどこにあり、それをどう伝えるか

   →物語(ストーリー)の設定が重要。魅力的な物語が建物の活用を促し、人々に知られ、

    保存の意識が強まっていく。

  建物、まちなみが、「国民の文化的資質の向上」「世界文化の進歩」にどのように貢献する

 のか、を考えることが求められる。

 

講習の様子                 講習の様子

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吉村晶氏 講習風景              講習の様子

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講義②:保存活用計画の策定について

  「保存活用計画の策定」について、岐阜県文化伝承課 伝承文化係 吉村晶氏に講習して頂きま

 した。

1.保存活用計画制度及び策定について

[保存活用計画制度]

  所有者・管理団体は保存・活用の方針を定めた保存活用計画を作成し、国に認定を申請する

 ことができる。

  認定保存活用計画に記載された行為(現状変更等)は、認可を届出とするなど手続きの弾力

 化が可能となる。

[県の策定事例]

 ・旧遠山家住宅保存活用計画(白川村・平成28年)

 ・旧北岡田家住宅保存活用計画(大野町・平成31年)

 ・旧宮川家住宅主屋保存活用計画(岐阜県・令和2年)

[保存活用計画の標準構成](章立て)

 (1)計画の概要:建物の背景とその価値づけ

 (2)保存管理計画:保存管理の現状把握、価値づけの優先順位

 (3)環境保全計画:建物の周辺環境について

 (4)防災計画:防火、耐震、耐風に対する状況

 (5)活用計画:関連法規を踏まえ、総合的に活用を検討

 (6)保護に係わる諸手続き:必要な届け出・許認可等

  実際の例として、(重要文化財)旧遠山家住宅の内容をご紹介して頂きました。

 

2.策定後の補助制度について

 (1)国宝・国重要文化財

 (2)登録有形文化財

 (3)県重要文化財

  各文化財についての補助制度・補助事業等のご説明をして頂きました。

 

吉田尚弘氏 講習風景             講習の様子

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講義③:建築基準法第3条の解説と該当建築物について

  県建築指導課nの吉田尚弘氏に、「建築基準法第3条の解説と該当建築物」について講習し

 て頂きました。

<歴史的建築物に対する建築基準法の適用>法第3条

第1項:

  国宝・重要文化財等→自動的に建築基準法を適用除外としている。(第1号・第2号)

  自治体が指定する文化財→安全性の確保等について建築審査会の同意を得ることで、建築基

 準法の適用除外が可能。(第3号)

第2項:「既存不適格建築物」について定めた規定

第3項:「既存不適格建築物」の規定を解除して現行規定を適用することとするための規定

<景観重要建造物・伝統的建造物群保存地区内の建築物に対する制限の緩和>

  法第85条の2(景観重要建造物である建築物に対する制限の緩和)

  第85条の3(伝統的建造物群保存地区内の制限の緩和)

<既存の建築物に対する制限の緩和>法第86条の7

 ・構造耐力関係、防火関係、用途地域関係、容積率関係等の規定に適合しない既存不適格建築

  物の増築等について、政令で定める範囲内で行う場合に限り、遡及適用しない。(第1項)

  →令第137条の2~12において、特例の対象となる増築等の範囲を定めている。

 ・構造耐力規定(法第20条)又は避難関係規定(法第35条)が適用されない既存不適格建

  築物については、増築等をする独立部分以外の独立部分に対しては、遡及適用の対象としな

  い。(第2項)

  →令第137条の14において、特例の対象となる独立部分の範囲を定めている。

 ・建築物の部分にかかる規定の適用を受けない既存不適格建築物については、増築等をする部

  分以外の部分に対しては、遡及適用の対象としない。(第3項)

  →令第137条の15において、居室関連・設備関連の規定において部分適用の対象範囲を

   定めている。

<全体計画認定>法第86条の8

 ・増築、改築、大規模の修繕、又は大規模の模様替えを含む工事を2以上に分けて行う場合、

  全体計画認定を活用すると、工事と工事の間は既存不適格が解除されない。

 ・2以上の工事の最後の工事の終了時点で、現行基準に適合させる必要がある。

 

<用途変更概要>法第87条

 ・建築物の用途を変更して、200㎡を超える特殊建築物とするばあいは、類似用途への用途

  変更を除き、建築確認及び工事完了の届出が必要(第1項)

 ・用途変更の際には、建築行為を規制する[用途規制(第48条)]等についても規定を適用

  (第2項)

 ・既存不適格建築物の用途変更に際し、類似用途への用途変更を除き、既存不適格の一部を解

  除し、現行基準への適合(遡及適用)させることが必要(第3項)

 ・各規定の性格上、用途変更による影響が及ぶ部分と及ばない部分を分離できる場合、用途

  変更が行われる部分と一体になっている部分のみが、遡及適用の対象となる。(第4項)

 

<用途変更の手続きが不要・遡及適用されない類似用途について>

 令第137条の18 用途変更の確認申請が不要な類似の用途について定めた規定

 令137条の19第1項 用途変更に伴う既存不適格が解除されない類似の用途について定め

 た規定

<用途変更時における既存不適格遡及>法第87条第3項

 ・既存不適なく建築物を用途変更する場合、用途変更時に既存不適格遡及の工事を行なう必要

  がある。

 ・ただし、増築等を行う場合は、所定の条件を満たせば全体計画認定を活用することが可能。

 

  歴史的建築物の保存に対する規定と緩和について、基準法上の根拠を整理して学びました。

 

講習風景                  福田勝好氏 報告の様子

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全国ヘリテージマネージャーネットワーク協議会

  昨年10月、第10回全国ヘリテージマネージャーネットワーク協議会総会がありました。

  岐阜県建築士会からは、福田様、今井様が、賛同団体である建築士会として参加されまし

 た。

  全国のヘリテージマネージャーの登録状況の現状などについて報告がありました。

  岐阜県のヘリテージ講習会は次年度も、今年度と同様の講座を行う予定。

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HM第13日目

テーマ:岐阜市長良真龍寺の耐震改修の事例について(講義・演習)

日時 :令和4年12月3日(土) 10:00~15:10

場所 :午前講義 ハートフルスクエアG 2階 中研修室

   :午後講義 真龍寺 岐阜市長良2509-1

参加者:31名

 

講師紹介の様子               講習の様子

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真龍寺の耐震改修工事について(講義)

 岐阜高専 清水隆宏氏に真龍寺の調査概要について講習して頂きました。

 真龍寺概要 所在地 岐阜市長良2509-1

       構造  木造平屋建て(在来工法)

       配置  表門、本堂、鐘楼、庫裡

 

調査史料について

 「真龍寺本堂再建地絵図」「真龍寺境内配置図」「本堂見積並約定證券」と記された7枚の資料など。そして、それらの史料が二曲の屏風に貼り付けられて保存されており、紛失を防ぐため、あるいは飾りとして用いることを考えたのか定かではないが非常に興味深い。

 

研究方法について

 1.史料整理

 2.実測調査、現状把握、痕跡の記録

 3.史料分析、総合的に考察

 

遺構の分析について

 本堂が明治15年に上棟されたことを証明。敷居や虹梁を転用していた。

 貫が繋がっていなかったり、小屋組み材が細い材だったり、財政難がうかがえる。

 しかしながら、地元の大工集団の協力や、住民の支援が厚かったこともうかがわせる結果となった。

 

 起雲社寺建築設計 野村健太郎氏に真龍寺の耐震改修の概要について講習頂きました。

 

耐震改修工事に至るまでの流れ

 1.森林文化アカデミーと名古屋大学にて本堂の耐震調査が行われた。震度6弱にて倒壊の危

   険性があるが木材は健全であるため、耐震改修に耐えられる性能を有していると診断され

   る。

 2.耐震改修設計を起雲社寺建築設計に依頼し、震度6弱にて倒壊しない耐震設計とする

 3.耐震改修工事は競争見積の結果中村社寺にて請け負う。

 

耐震改修のポイント

 ●真龍寺の敷地は第一種地盤のため、地震に対して大変有利である。

 ●屋根荷重を軽くする。葺き土を撤去し、桟葺き瓦に葺き替える。

 ●基礎を新設

 ●耐力要素を増やす。数種類の耐震壁をバランスと納まりを考えて配置する。

 ●水平剛性を高める。

 ●腐朽部分を改善する。

現地の施工状況の写真を交えて、ご説明して頂きました。

 

耐震改修工事の結果

 ●耐震性能の変化を測定するため、常時微動測定を行う。

 ●耐震工事前の相関変形角は中地震で1/66、大地震で1/13であった。

 ●改修工事後の相関変形角は中地震で1/160、大地震で1/36という結果。

計算だけでなく、測定としても確認ができた。

耐震性能が向上したと判断した。

 

次回のガイダンス

 次回14日目の講座【1月21日:重要文化財の保存活用計画について】の説明がありました。

 詳細は別途メールにて連絡とのことでした。

 

真龍寺現場視察(実地研修)

 午後からは、現地の真龍寺にて耐震改修の実例を清水氏、野村氏、またご住職にも解説して頂きました。

 

現地視察風景                現地視察風景

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現地視察の様子               現地視察の様子

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各班個別ミーティング後、解散。

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HM第12日目

テーマ:岐阜市上宮寺の耐震改修の事例について(講義・演習)

日時 :令和4年11月19日(土)10:00~15:00

場所 :午前講義   (一社)岐阜県勤労福祉センター ワークプラザ岐阜 4階402会議室

    午後実地研修 上宮寺 岐阜市大門町12

参加者:30名

 

石黒会長による挨拶の様子          講習の様子

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上宮寺の耐震改修工事について(講義)

 岐阜県建築士会 加藤達夫氏に上宮寺耐震補強工事について講習して頂きました。

 

 上宮寺概要 所在地  岐阜市大門町12番地

       構造   木造2階建て(在来工法)

       床面積  1階  221.17㎡ 2階 72.18㎡

       延床面積    293.34㎡(80.9坪)

       築年期  江戸時代後期と言われている

       特徴   襖を取り払うと30帖の大広間になる

            庭に面して外縁が設けられている

            離れに風雅な茶室がある

 

与条件について

1.江戸時代築のこの建物は、庫裏の大広間を目的に建てられたため、耐力壁が全くない。

2.一般的な耐震指数を満足させるための試算は、予算を超過してしまう。

 

 以上の条件から、大地震が発生した際には大きな損壊は防ぎ小損壊にとどめ、中に居る人命は守る。

 その後修理をして建物の継続使用を目指す、という設計方針をたてられました。

 

構造補強について

1.内部の耐震補強壁として、真壁造り構造合板t12両面張のうえ、PBじゅらく仕上の耐震補強壁を内部に南北7ヶ所、東西7ヶ所設置。

2.外縁には木格子壁の構造補強壁を、南北に2ヶ所、東西3ヶ所設置。

 

費用削減のための工夫

1.書院座敷の天井・内法材の解体はしない。

2.耐震壁要の柱は外縁の天井を外して外側から取り付ける。

3.既存の建具を利用する。

4.柱と桁の接合仕口には大型L金物を使用する。

5.外縁の耐震壁は、願望及び採光を考慮して90ミリ角材の格子壁を使用。

6.床の間の書院窓廻りを構造合板で補強。床の間横の押入の襖の向きを替え、耐震壁を設置。

7.水平力を高めるため、床下・天井裏に火打ちアングルを設置。床下の束石及び、束木、根がらみの取り換え。

 

 現地の施工状況の写真を交えて、ご説明していただきました。

 

 午前講義の後半は、上宮寺の耐震工事も施工された宮大工の丹羽陽一氏に、伝統的な木造仕口の説明や、貴重な銘木・樹種について解説をしていただきました。

 

加藤達夫氏講習風景             丹羽陽一氏講習風景

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講習の様子                 講習の様子

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講習の様子                 講習の様子

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講習の様子                 講習の様子

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次回のガイダンス

 次回13日目の講座【12月3日:真龍寺の耐震改修事例について】の説明がありました。

 

上宮寺現場視察(実地研修)

 午後からは、現地の上宮寺にて耐震改修の実例を加藤氏、丹羽氏に解説していただきました。

 

現地視察風景                現地視察風景

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現地視察の様子               現地視察の様子

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現地視察の様子               現地視察の様子

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各班個別ミーティングの後、解散。

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HM第11日目

テーマ:郡上市の伝建地区について(講義・実施研修)

日時 :令和4年11月5日(土)10:00~15:00

場所 :午前講義   郡上八幡まちまみ交流館 研修室

    午後実地研修 郡上八幡北町伝統的建築物保存地区(柳町~職人町~鍛冶屋町~大手町)

参加者:28名

 

次回のガイダンス

 11月19日(土)開催の岐阜市の説明を行ないました。

 

伝建修理・修景事業における設計監理業務について その1(講義)

 郡上八幡教育委員会社会教育課 文化係長 齊藤千恵子氏に講義して頂きました。

 郡上市の景観行政は、当初、都市計画担当部門が国土交通省のメニュー(補助制度等)を活用して整備を行ってきたが、文化庁のメニューの活用も図るため、伝建地区の指定を行うこととした。

 これにより、今までの「地域のまちなみ」から「国としての重要なまちなみ」へと位置付けられるとともに、補助事業における補助率のアップ等も図られた。保存地区内では令和4年5月に電線地中化が完了したところ。

 伝建地区内でのまちなみの保存の推進のためには、建築物の修理や修景の意匠設計や内訳書の作成など技術的分野において、特に建築士の力が求められている。

 旧八幡町の市街地は近世に城下町として発展し、川と山に囲まれた町である。敷地の間口は2間半から3間が多く、隣地と合筆する仕込み屋、敷地を分割する割屋が行われながら、まちなみが形成されてきた、明治になり武家地が公共施設に替わり、旧八幡町の中心地として栄えた。大正8年の北町大火で北町のほとんどを消失してしまったが、その復興として道路の拡幅、防火水槽の整備、住宅の建設、屋根の不燃化等が行われ、早期復興を果たし、北町には大正末期から昭和初期に建てられた町屋が多く残っている。

 平成24年12月に国から重要伝統的建造物保存地区として、城跡、旧武家地、旧商人地が選定された。選定に至るまでには、「水のまち郡上八幡」「町並み保存会」「景観」都市計画(中心部の都市計画道路の廃止、住居系の建蔽率の緩和)の見直しなど、様々なまちづくりを進めてきた。地区選定以後は、伝建地区だからということを地域、国県に対する説明根拠とし、地区の内外で補助対象、仕様等の明らかな差をつけているとのことでした。

 

齋藤千恵子氏講義風景

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伝建修理・修景事業における設計監理業務について その2(講義)

 引続き齋藤千恵子氏に抗議して頂きました。

 伝建地区の選定に合わせて、伝建かわら版というものを発行し、伝建地区内には全戸配布、地区外は希望者に配布している。各号の内容は次のとおり。

(1)かわら版第1号(選定前の町内会への説明会用資料)

 保存地区の範囲と特徴、伝統的建造物の種類と特徴、保存対象となる伝統的建造物と環境物件、伝建制度で行う町並み保存修理、修景基準・許可基準(案)、保存地区内の環境整備の方針、助成措置等の実施と検討、今後の選定までのスケジュール等選定案の内容が説明されている。

   かわら版第2号(説明会での質疑への回答)

 建築基準(修理基準、修景基準、許可基準)が適用される範囲、特定建造物の同意、伝建制度の補助、修理や修景の工事、防災対策・無電柱化・耐震補強などについて回答している。設計費、管理費は100%補助となること、耐震性の向上も検討すべきであるなど明記されている。補助事業であるため前年度の設計や工事費の見積などスケジュールに留意してほしいとのこと。

(2)かわら版第6号(選定後の補助制度の説明)

 補助金による修理・修景工事、補助金の申し込みと事業の流れ、現状変更申請書について説明している。改修であることから、現場の状況による変更が前提であり、そのたびに文化庁などへの相談が必要となる。

(3)かわら版第11号、第16号(補助事業実施物件の紹介)

 修理修景事業の内容を報告している。当初の物件は事業の立ち上がりということから、確実な案件でかつ緊急性の高いものを選んだとのこと。町外の所有者が多く、住民が少ない地区(鍛治屋町)が補助事業に対して積極的であり、それが他の地区へも波及していった。

 

 保存調査のバイブルとして図書の紹介があった。※「民家のみかた、調べ方」絶版

 現状がトタン張りの外壁を板張りに戻すつもりであったが、建設当初からトタン張りであったことが判明したためトタン張りとした事例など修理において、元の仕様に戻すことは良いが、変えることには抵抗があるとのことで、保存担当者の正直な気持ちが感じられた発言でした。

 

昼食のお弁当

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郡上八幡伝統的建造物保存地区(現地視察)

下柳町の屋敷型伝統建築物

 旧武家地に立っている屋敷型の住宅、石積みの上に建てられ、道路側には板塀と門が設けられている。屋敷型で残存しているのは2件のみとのこと。今後の活用が望まれます。

中柳町の町屋

 特に町屋がれんぞく連続して残っている地区です。段差を利用してシタヤを持つ三階建てです。電線地中化の効果も高く、伝統的なまちなみが感じられました。

上柳町の集合住宅

 大火の後の復興事業として建てられた集合住宅(乙種)が残っています。

長敬寺の防火用水

 用水の水を引き込み防火用水として貯めている。現在もその機能を有しながら、立派な鯉が泳いでいます。

職人町の町屋

 旧町人地として、突き当りにある寺と町屋の袖壁が連なり、近世らしいまちなみが広がっています。

鍛治屋町の町屋

 大正末期からしょう昭和初期の建物が多く、様々な軒高の建物が混在する町並みとなっています。高いほうの軒が隣地にはみ出すことが暗黙の了解となっているが、最近は同意しない方もいるらしい。

大手町の町屋

 江戸時代には大手門があり城へ向かう中心の通りでした。国登録有形文化財の旧堀谷医院が建っています。

 伝建地区の範囲は、道路の反対側の敷地を含むように指定し、まちなみの連続性を考慮しています。

 

「下柳町の屋敷型伝統建築物」での説明    「中柳町の町屋」の現在の様子

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「集合住宅」での現地視察の様子       「長敬寺の防火用水」

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職人町                   鍛治屋町

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大手町

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南町

 伝建地区外であるが、旧斎藤家、旧役場等古いものをまちづくりに活用した事例の説明を受けた。

 

旧八幡町役場                説明の様子

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 今回の講座で伝建地区の指定の考え方や経緯、さらには、現地にて改修した物件を前にした丁寧な説明により、大変勉強になりました。これからの保存改修計画に活かしていきたい。

 

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HM第10日目

テーマ:世界遺産白川郷の運営及び保存修理・構造方法等それに伴う防災設備の考え方について

日時 :令和4年10月23日(日) 10:45~15:00

場所 :午前講義 「道の駅白川郷」総合文化交流施設 会議室

   :午後講義 世界遺産白川郷 荻町集落

参加者:25名

 

世界遺産白川郷の運営及び保存修理・構造方法等それに伴う防災設備の考え方について

 白川村教育委員会事務局 文化財係 課長補佐 松本継太氏に講義して頂きました。

 

松本継太氏講習風景

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1.白川村・荻町の紹介

 ・白川村は白山の麓に位置し、庄川沿いに形成された山岳村

 ・重伝地区の面積は約45.6haであり、世界遺産の中核をなしている

 ・荻町はかつての集落景観を残す貴重な合掌造り集落

 

2.合掌造りについて

 ・茅葺き屋根の民家は日本各地にあり多くは寄棟造りか入母屋造りであるのに対し、合掌造りは

  切妻造り

 ・合掌造りの構造は上部の合掌(小屋)部分と下部の軸組部分から成り、氷見能登や高山の大工

  による軸組の上に村人の手によって造られた合掌屋根が残る

 ・合掌造りの小屋裏はその構造的特徴(大きな無柱空間、切妻からの採光)と土地の制約(多雪地

  域、狭い耕作地)から養蚕の作業場として使われるようになった

 ・「結」は茅の葺き替えを行う制度で、対等な労働交換

 ・茅葺きは茅の葺き替え以外にも棟茅、差し茅をして手入れを行う

 

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3.茅について

 ・茅葺きは農業の延長上にあり、茅場を維持し茅刈りを行うことで茅を確保してきた

 ・白川村で用いられる茅の種類はススキとカリヤスで、茅場は点在している

 ・茅の運搬は雪上を滑らせたり、「ムカデ」と呼ばれる方法で急斜面を滑らせたりして山から

  運び出していた(昭和40年代前半まで)

 ・白川村の茅刈りの期間は10月下旬~11月下旬の約1か月と短く、機械化が必須

 ・6haある茅場からは6,000束(=60束/日×10人×10日)収穫される

 ・年間に必要な茅は20,000束で、現在は不足分を御殿場から仕入れているが、自給率50%を目

  指して茅場の整備を進めている

 

4.合掌集落の近年の歴史

 ・1940年代に入って養蚕業の衰退と水力発電のためのダム開発により、移築・建て替え・トタ

  ン屋根への改修が行われ、合掌造りの減少が著しく進む

 ・養蚕の村から観光の村へ推進産業の舵をきる

 ・国鉄キャンペーンのディスカバージャパンが実施される

 ・1971年住民憲章制定

 ・1976年重伝地区選定

 ・1995年世界遺産登録

 ・2011年村営駐車場閉鎖 → 荻町公園整備

 

5.防災設備の整備

 ・放水銃は60mの高低差を利用した自然流加式

 ・各所に設置された放水銃は景観に配慮した格納庫に収容されている

 

6.保存会の活動と行政支援

 ・保存会の構成は7つの組の代表者、各種組合、青年会・女性会、地元議員からなる

  改修工事を行う際は、保存会と白川村教育委員会の審議を経て許可もしくは意見書が発行さ

  れる

 

7.急激な観光客の増加と交通問題の解消

 ・世界遺産登録により日帰りの観光客が増加、交通渋滞等の問題が顕著になる

 ・荻町交通対策委員会で荻町交通対策基本計画を策定

 ・世界遺産マスタープランに交通対策を位置付けて計画を進める

 ・村営荻町駐車場の閉鎖、通年交通制限の実施、保存地区外の駐車場整備により交通問題を解

  消

 

現地視察

世界遺産しら白川郷 荻町集落 説明見学(国重文和田家 含) 松本継太氏による解説

村営駐車場閉鎖→荻町公園整備        合掌造りの寺院「明善寺」

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鐘楼も茅葺き                放水銃の説明

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途中で合掌の屋根葺き替え中の現場を見ることができた

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国重要文化財「和田家」

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HM第9日目

テーマ:「高山市伝統構法木造建築物耐震化マニュアル」に即した限界耐力計算方法と耐震補強要素についての解説

日時 :令和4年10月2日(日)10:00~15:30

場所 :午前講義 飛騨高山まちの博物館

    午後講義 旧高山町役場~重伝建下二大新町一~村半~旧三輪家~日下部民藝館

参加者:33名+あいちHM協4名

 

「高山市伝統構法木造建築物耐震化マニュアル」に即した限界耐力計算方法と耐震補強要素についての解説

 建築士会飛騨支部飛騨支部/飛騨高山伝統構法木造建築物研究会会長/同条マニュアル作成検討委員 田村嘉伸氏に講習して頂きました。

 

田村嘉伸氏講義風景

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1.限界耐力計算の予備知識

 ・耐震性能評価と耐震補強設計について

 

2.復元力演習

 ・その他の壁要素 ・解析方法 ・復元力特性一覧表

 ・建築物の各方向、各階の復元力の求め方

 ・課題を解く ・小壁と束 ・具体例 ・板壁 ・ほぞ ・横架材

 

3.近似応答計算

 ・計算方法 ・解析方法 ・収斂計算 ・真の応答値の求め方 ・耐震診断時の計算シート

 ・補強後の計算シート ・吹抜のゾーニング ・各ステップでの固有値計算 

 ・構造高さの求め方 ・石場建、土台建 ・重量の求め方 ・計算手順 ・剛性の計算 

 ・補強前の計算シート ・補強方法

 

受講者全員とあいちHM協 集合写真

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現地視察

耐震補強工事 旧高山町役場「市政記念館」見学 田村嘉伸氏による解説

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文化財の改修整備活用事例 旧村田家「村半」見学 市企画課専従職員による解説

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重伝建「下二之町大新町一」界隈

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文化財の改修整備活用事例 旧三輪家「谷屋(一棟貸ゲストハウス)」見学

(公財)日下部民藝館理事長・日下部家当主日下部勝氏による解説

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国指定重文「日下部民藝館」見学

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