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福まち建築士 2024年度

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令和6年度 全国大会 福祉まちづくりセッション

テーマ:小規模店舗(施設)のバリアフリー化 課題と展望

    ~誰もがふつうに暮らせる地域社会への貢献について~

場所 :カクイックス交流センター 3F 中研修室2

出席者:43名・オンライン40名/岐阜県会場出席者1名

 

セッションの様子

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 今年の福祉まちづくりセッションは「日本福祉のまちづくり学会未来型UD戦略特別研修委員会」とのコラボ企画としてセッションを行いました。

 流れとして講師の方のお話を聞き、全国の建築士の方の活動報告を聞き、最後にディスカッションを行いました。

 最初は東洋大学名誉教授の髙橋儀平氏の「小規模施設のバリアフリー化について~我が国の現状や問題点など~」を聞きました。

 法律の変遷からお話し頂き、思ったより以前からバリアフリーについての内容が盛り込まれていましたが、絶対的な人数の少ない障がい者の方達のことは最低限のことしか行われて来なかったのだと思いました。小規模店舗のバリアフリーの改修についての事例もたくさんあり、今後の仕事での気を付ける点、気にしなければならない点を学ぶ事が出来ました。髙橋儀平氏のお話しはオンラインで聞いたことがありますが、いつも何かしら気づかされることがあります。また、著書も多数ありますが、読みやすいので皆様にもお手に取って頂きたいと思います。

 

 次は、NPO法人「e ワーカーズ鹿児島」の理事長である紙屋久美子氏の「かごしまバリアフリーツアーセンターの活動について~小規模施設のバリアフリーの有効性~」をお聞きしました。

 e ワーカーズ鹿児島の業務内容は鹿児島県内全域の宿泊施設や観光施設、交通機関等の現状調査及びその情報発信だそうです。福祉住環境コーディネーター2級を取得し、宿泊施設や観光施設のバリアフリー化に向けたアドバイスも行っているそうです。小規模の宿泊施設や観光施設だとどうしてもバリアフリーに対する予算が足りなかったりしますが、「今出来る事への提案」をするということでした。そのためには色々な良い事例を見て参考にすることも大事だと思いました。ハードでダメならソフトでカバーする方法も設計者として説明出来るようにしたいと思いました。

 また、余談ですが今回の話を聞いた後に鹿児島市内の市電に乗ったら、車いす可能な乗降場かどうか分かるようになっていました。市電なので広く乗降場を取れない場所があり、車道との関係で広くするのは難しいですが、情報が分かりやすいと利用出来る出来ないを自分で判断出来るのだと実感しました。

 

髙橋儀平 氏                 紙屋久美子 氏

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 次は全国の建築士会の活動報告です。会場で配布される「セッション資料集」には北海道・埼玉・群馬・東京・神奈川・新潟・岐阜・大阪・宮崎・沖縄の活動報告が掲載されていますが、それとは別に小規模店舗に関することを4名の方に発表して頂きました。

 この4名は全国大会で知り合って、色々な情報交換をしてお世話になっている方々です。下記にもありますが、バリアフリーを堅苦しくではなく、みんまで楽しめるためにはどうしたら良いかと捉えてバリアフリーと向き合っている方々だと思います。

 1人目は埼玉の本多健氏で「高齢者、障害者等の円滑な移動等に配慮した建築設計基準に関するフォローアップ会議」についてお話し頂けました。法等の整備だけで終わらず、その内容について点検、改善をしていくことの重要性がよく分かりました。また、バリアフリーの概念を誰もが「移動できる」ではなく誰もが「楽しめる」こととして捉えるのは大事なことだと思いました。

 2人目は東京の川口孝男氏です。連合会建築士会の福まち部会の部会長をしています。今回は士会の活動ではなく、「自立支援・協働ロボットが開くバリアフリーの世界『分身ロボットカフェ DAWN ver.β』視察体験報告」をして頂きました。分身ということで、ロボットを動かす「パイロット」は自宅からでも操作可能です。一番良いなと思ったのは、配膳は出来るがうまく話せなくて接客業が出来ない方が、上手に話せるが配膳出来ない方が小型分身ロボットの中で接客をするという、補い合って配膳が出来るということでした。東京へ行くことがあれば予約して行ってみたいと思いました。

 

本多健 氏                  川口孝男 氏

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3人目は宮崎の岩浦厚信氏で「宮崎市の小規模施設のバリアフリー化の成果について」お話し頂きました。「昔は公共施設と病院にしかバリアフリートイレがなかった」という言葉を聞いて今でも高齢者や障がい者は外出するのが難しいですが、更に難しかったのだと思いました。ただ、現在はガイドライン等でユニバーサルトイレが増えていますが、ハード面でただ付いているだけ、ソフト面ではそこまでの通路にものを展示してありそこまでたどり着けない等当事者が使えない状態が多々あるように思います。自分もそうでしたが当事者と関わりがないと思いが至りませんでした。万人にぴったりの事は出来ないと思いますが、色々な人に思いをはせて設計して行きたいと思いました。

 4人目は京都の村松徹也氏に「福祉のまちづくりの更なる発展を」についてお話しして頂きました。元行政としてのお話しと、現在も行政との連携を続けている方です。こういった方がみえる行政はバリアフリーがうまく進んでいくのだと思いました。こういった良い前例を持って岐阜でも行政との関わりを持っていけたら良いなと思いました。

 

岩浦厚信 氏                 村松徹也 氏

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 続いて髙橋氏、紙屋氏も交えて全員でディスカッションを行いました。色々な話で盛り上がりましたが、私が一番心に残ったことは小規模店舗だとトイレは男女共同で1つしかなく、バリアフリートイレまでのスペースがないというところはたくさんありますが、そいった時でも近くの公共トイレを把握しておいてそこを紹介出来るようにすれば、小規模店でもみんなで楽しめるということでした。ほんのちょっとのことなのに「気づく、気付けない」、「知っている、知らない」の差は大きいのだと思いました。

 

 仕事の合間に行く全国大会は大変ですが、井の中の蛙とならないように参加出来る限り全国大会には参加出来たらと思います。