岐阜県建築士会 まちづくり委員会

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ぎふHM 2023年度

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令和5年度 HM 第13日目

テーマ:地域の歴史的建造物と建築関係史料について

    ・地域の社寺建築や民家等の建築史料の調査・保存・活用について(講義)

    文化財建造物の修理・活用の実例

    ・伝統構法を守りつつ修理を行うには?重伝建地域内の実例(講義)

日時 :令和5年11月25日(土)13:00~17:10

場所 :(一社)岐阜県勤労福祉センター ワークプラザ岐阜 中会議室

参加者:20名

 

次回のガイダンス

 令和5年12月9日(土)開催の第14日目講義(ふれあい会館)の説明を行いました。

 

1.講義 テーマ:地域の歴史的建造物と建築関係史料について

         ・地域の社寺建築や民家等の建築史料の調査・保存・活用について

 元博物館館長 高橋宏之 氏に講義して頂きました。

 

高橋宏之氏の講義の様子

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 地域の民家や社寺建築等の歴史的建造物の調査と建築関係史料の活用についての講義でした。

 内容は、建築年代を示す資料・民家における痕跡の調査・各時代の面取柱の目安・建立年代区分近世社寺建築年代判定(虹梁)の説明を頂きました。

 

建築年代を示す資料として、

1 棟札 建物の新築、再建、修理などの折に作られるもので、工事の内容、年月日、施主、大

  工など施工者の名前、願文等が記されている。

2 普請帳 社寺や民家を建てたとき関係文章を綴ったもの。

3 墨書

4 瓦銘 瓦に生産者や施工した年月日などを陰刻したり墨書したもの。

5 伝承 地震や火災、社会的に大きな事件などの年を起点とした新築、再建などの伝承。(当家

  の云い伝え)

6 普請帳以外の文献資料 民家などにおける代々の日記帳、設計図書、家相図等、記念誌

7 その他 建築儀式に使用した鋸、式次第文書等。社寺建築など設計に使用された型紙等の資

  料で紀年銘のあるもの。古写真。

 これらを手掛かりにして建築年代を判定する説明をいただきました。

 

民家における痕跡の調査として、

1 後補柱の見分け方

2 失われた柱の証拠

3 後補の指物の証拠

4 土壁の証拠

5 板壁の証拠

6 開放の証拠

7 上ゲ戸の証拠

8 窓の証拠

9 雨戸の証拠

の調査をもとに建造物の痕跡をたどる説明をいただきました。

 

 建造物の年代判定方法として、各時代の面取方柱の目安にした判定方法で平安時代・鎌倉時代・室町時代・桃山時代・江戸時代・江戸時代末期の柱幅に対する見附割合の特徴の説明。

 近世社寺建築の虹梁による年代判定の考え方として、江戸時代初期から後期にかけての特徴を説明いただきました。

 以上が、髙橋先生の講義でした。建造物の調査方法についてとても有意義な講義でした。

 

1.講義 テーマ:文化財建造物の修理・活用の実例・伝統構法を守りつつ修理を行うには?

         重伝建地域内の修理の実例

 NPO法人あいちヘリテージ協議会 有限会社林技研秀設計 林秀和 様に講義して頂きました。

 

林秀和氏の講義の様子

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 文化財建造物の修理・活用の実例についての講義でした。

 内容は、伝統構法を守りつつ修理を行う方法を重伝建地域内の修理実例を対象にして、講義して頂きました。

 伝統構法(柔構造)と在来工法(剛構造)の違い、伝統構法・在来工法それぞれの軸組の特徴、想定される地震の揺れ幅の特徴を説明して頂きました。

 

ケース1 足助本町郷蔵

土蔵:切妻造り桟瓦葺き 桁行2.5間 梁間4間 外壁:塗り漆喰簓子付下見板張り 東出入口庇

   付き

現調調査・腐朽調査

 建造物の雨漏り箇所や荒壁・中塗りの補修跡を特定し各所腐朽具合を予想。

 床下:山からの湧水の為湿気過大、床組の脆弱性。

 屋根・壁:2階内壁に野地板から雨漏跡あり、葺き土の流出・木部の普及が見受けられる。

 外部:外壁塗籠漆喰のハチマキ部分の剥落。

改修・補強計画

 床補強・改修計画

  湿気対策:床下残土鋤取り、防湿コンクリート打設

  構造補強:足固めの新設、柱部やとい材ケヤキ赤身蟻落とし+埋木

       足固め材120*120桧 込栓樫材Φ18

 柱補強・改修計画

  構造補強:柱取替 柱120*120桧 やとい材175*120*36ケヤキ 込栓Φ15

           通し貫30*105杉 楔杉材

       柱脚部分、土台の普及がない事を確認しやとい材+込栓にて固定

       柱頭部分、既存柱と接続部を長ほぞ車知栓+込栓止め

       柱中央部分、修理柱を立て込む際2階床梁を挿入しながらと取付

       柱間部分、本貫3段通し貫楔止め

 全体改修計画

  屋根:桟瓦葺き替え

  外壁:漆喰塗全面塗替え(鉢巻き部分塗替え)

     簓子付下見板張り部分補修、部分取替

  玄関土間:床嵩上げ(足固め施工により)

  出入口引分け戸:既設再利用(鏡板張替三重貼)

  内壁:小舞壁、塗籠の縄だし、荒壁下地中塗り仕上げ

     壁の長期利用のため、通期の為に桧板張り

 

ケース2 足助田町 いづつや

 店としての大開口の維持及び2階街道側の開口を含めた意匠復元。

 

ケース3 足助旧山本金物店

 大開口を維持したまま耐震改修及び建物修理。

 

 実際に改修された、重伝建地域内の3物件を対象に改修要点や改修方法・留意した点を説明していただきました。

 

まとめ

・改修する建物の創建時代を考慮し補強方法を選択。

・構造補強なのか、意匠優先の補強なのか検討。

・後世に文化財を残すために創建当時の部材を残す方法を優先する。

・重伝建地区内の伝建物ば街並みの保存の意味合いが強いが、その中で重要な建物も含まれてお

 り、修理には特に注意が必要である。

・補強方法は建物ごとに違うのでその都度考える必要があり、補強方法をなるべく多く蓄えてお

 くことが必要である。