岐阜県建築士会 まちづくり委員会

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ぎふHM 2023年度

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令和5年度 HM 第4日目

テーマ:岐阜公園三重塔の設計解説及び実地研修、登録有形文化財の実務について

    国登録有形文化財、岐阜公園三重塔について心柱や搭の構造などを学ぶ(講義)

    申請の実務(文化財建造物の申請について学ぶ)(講義)

日時 :令和5年6月24日(土)12:00~17:10(12:00~13:00 歴史博物館見学)

場所 :講義・実地研修 岐阜市歴史博物館 1階講堂・岐阜公園内 三重塔

参加者:24名

 

岐阜市歴史博物館の見学

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三重塔整備の過程DVD鑑賞

 平成27年に行った三重塔修復工事についてDVDにて改修内容を確認しました。長良橋の古材(杉材)を利用して作ったことや、川合玉堂が建築場所を選定したなど当時の文化人も参加して市民による市民もための三重塔だということを知りました。搭の構造様式は櫓構法、懸垂式(心柱が浮いている)であるなど基本的な部分を学びました。大正6年建立(建立から約100年)平成17年登録有形文化財登録、平成27年修復工事開始、平成29年修復工事完了。建物解体前に実測調査や塗装調査を行い、建立当時の色彩などを確認することで、今回の修復で当時の色合いを再現することになったなど、100年の歴史を感じる瞬間でした。解体は構造部材一本一本を丁寧に解体し採寸を行い再利用できる木材は再利用するなど、出来る限り建立当時の部材を残す努力をしていました。驚いたのは瓦に関しても一枚一枚打診検査などをして再利用できるものは再利用するなど、文化財の修復が住宅などの一般的な改修や改修作業と異なることがわかりました。

 

はじめの挨拶                DVD鑑賞

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岐阜公園三重塔の修復について(講義)

伊藤平左衛門建築事務所 望月氏に講義して頂きました。他、岐阜市文化財保護課 川合主任主事、歴史まちづくり課 桑田係長・芳村主任も一緒でした。

 

■日本建築の伝統様式について

 はじめに日本の伝統的な建物構造の話をして頂きました。日本での建物の構造は扠首構造から始まりました。安定した構造の為、比較的近年まで扠首構造は使われていました。簡単な扠首構造から中の空間を広くするために、柱が補強材として使われるようになる→竪穴式住居への進化、柱を地面に直接刺すことで建物の脚が固まるため地震に強い建物となる→より広い空間を中に作るために柱材で空間を広くする高殿となる→大陸から礎石の上に柱を立てる、軒を出す建物が伝来した。柱の足元が不安定になるため、柱が太くなった(柱で支える建物へ)→神殿造りの誕生、日本建築の原型の誕生

→大仏様 貫を柱に構造の誕生により建物強度が上がり、柱を細くできた。貫は伝統様式の重要な九蔵部材

 このように日本の伝統的建築はその時代時代の用途にあった建て方を試行錯誤しながら進化を続けてきたことが分かりました。

 

■折置組と京呂組

  伝統的な建物に多い折置組は柱、梁、桁が重ねホゾで桁まで抜いている。構造的には強い

 が平面プランが単純になりやすい。近代の建物に多い京呂組は平面プランが比較的自由(梁の

 位置が自由)だが構造的には折置組の方が強い。

 

■桔木と組物

  小屋裏に桔木(はねぎ)があることで軒を深く出せるようになった。軒の出と小屋裏は支点

 になる桁から1:2の天秤となってバランスを取っている(屋根の重みで押させている)。

  組物も軒を深く出すための技術。屋根の荷重をいなす役割がある。

 

■岐阜公園三重塔改修について

  三重塔は心柱が構造上重要だと思われているが、実際は四天柱が構造上は重要であり、心

 柱は宗麟を支えているだけの役割だという説明でした。岐阜公園の三重塔の心柱は鎖で吊り

 下げられているため、柱の足元は浮いていることこで驚きました(見学にて確認)。三重塔の

 構造部材は橋の古材を利用して作っているため、寸法が足りなかったり、ボルトの穴が開い

 ていたりと、構造的に無理をしていたため改修前は軒先が垂れており、つっかえ棒で支えて

 いたとのことでした。今回の改修では、つっかえ棒は無くしたいという市の要望があったと

 のことです。構造計算は限界耐力計算より上位の解析となる時刻歴応答解析で検討したとの

 ことです。より補強箇所が少なく済むのがメリットとのことでした。

  木造は現代の技術が一番すごいと思われていますが、過去の方が質も量もレベルが高いと

 いう言葉が印象に残りました。文化財は木構造が素晴らしいから残っているとも言えるのだ

 と思います。

 

講義の様子

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岐阜公園三重塔の見学(実地研修)

 実際の三重塔内部の見学をしました。工事中の苦労など望月さんから説明して頂きました。心柱は上部2か所で吊られているだけの為、地面から浮いている状態でした。実際押してみるとゆっくりと揺れました。構造補強は見た目では分からない部分でされており、文化財の修復が一般的な改修とは違い、難しい工事であることが分かりました。実際に近くでみると三重塔の複雑な構造が分かり、これを解体して新たに組み上げるという工事が出来る技術が、まだ日本にあることに驚きました。

 

見学の様子

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登録有形文化財の申請について(講義)

 NPO法人あいちヘリテージ協議会 理事 川口亜希子氏より講義して頂きました。

 

 はじめに川口先生が登録に関わった物件の紹介がありました。文化財登録までに平均で2~3年程度掛かるということで、登録の仕事は時間の掛かる仕事だということが分かりました。また所有者と市町村などとの調整が重要で、登録までのマネージメントが一番大変だとのことでした。登録有形文化財に申請できる審査基準は下記の通りです。

 築後50年以上の建物

 ① 国土の歴史的景観に寄与

 ② 造形の規範となっている

 ③ 再現することが容易でない

 どれかに当てはまる必要がある。その登録に値するかの判断が難しい。

 現在までにNPOでは16箇所48件の登録をしてきた。

 

■登録までの費用について

・実査に来るまでの作業費 25,000円

 →実査までの資料作りが提出書類全体の8割ぐらいの作業量がある。

・登録費用として30万円(2階建て100平米まで)

※実査・・・文化財登録が実際に現地にきて調査すること

※実査当日に登録文化財の申請を進めて良いかどうかの合否がわかる

 

■登録有形文化財登録申請について

  作成書類(A4統一)の書式や必要な図面などを講義して頂きました。

 詳しくはこちらから↓(登録有形文化財の手引き) https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai/shokai/yukei_kenzobutsu/toroku_yukei_tebiki.

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  写真の撮り方や建物求積の方法(基本建築面積)、所見の書き方などルールがあるため、上記

 の手引きを確認しながら作成する必要がある。所見の作成が一番難しく、建物の時代背景や建

 物の特徴などを端的にまとめることが出来るようになるためには、自分で数件まとめてみるこ

 とが必要になると感じました。

  申請書類は数回のやり取りを経て書類提出から7~9カ月で答申(ほぼ確定の状態)、その後

 3~4カ月で文化財の登録完了となる。皆さんが見慣れている登録有形文化財のプレートは登

 録完了後から1カ月程度で所有者のもとに届くということでした。

 

■登録有形文化財登録後について

  現状変更(登録時から)があれば届出が必要になる。届出をしないで工事などを行った場合は

 罰則あり。届出のことを知らない所有者なども多いため、しっかりと所有者に伝えることが必

 要だと感じました。登録後もヘリテージマネージャーとして建物に関わっていく必要があると

 感じました。指定文化財になる場合などは登録の抹消が必要になる。

 ※外観で1/4以上変化ある場合は変更の届出必要

 

質疑応答

・登録文化財の申請に必要な図面は平面図、配置図程度 場合によっては立面図など他の図面も

 求められる。配置図は正確な測量図まで求められない。

・建物が建てられた年代の確認は、小屋裏の棟札が基本となるが、棟札が無い時は固定資産課

 税台帳より築年数を確認している。

 ・愛知県ではヘリテージマネージャーが登録申請できる(県によって違う)

 

講習の様子

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