岐阜県建築士会 まちづくり委員会

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ぎふHM 2023年度

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令和5年度 HM 第3日目

テーマ:「伝建地区の登録の経緯および保存、活用ほ方法・考え方、課題等」

日時 :令和5年6月10日(土)10:00~15:00

場所 :午前講義      美濃市健康文化交流センター 2階会議室

   :午後講義・実地研修 伝建地区散策、

              美濃和紙あかりアート館、旧今井家住宅(美濃市指定文化財)

参加者:20名

 

次回のガイダンス

 令和5年6月24日(土)開催の第4回講座(岐阜市歴史博物館)の説明を行いました。

 

講義の様子                 ガイダンスの様子

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「伝建地区の登録の経緯および保存、活用の方法・考え方、課題等」(講義)

 美濃市教育委員会 人づくり文化課 文化財係 係長 石井里英氏、梅村侑希氏に講習して頂きました。

 美濃市の歴史、伝建地区の登録の経緯、活用方法、現在および今後の課題等について、お話しして頂きました。

 まず初めに、梅村氏による美濃市の町並み形成の時代背景について講義をしていただきました。

 1.美濃市の町並みが形成された背景

  ・現在の美濃市の町並みの基礎を作ったのは、1600年関ケ原の戦いで東軍についた金森長近

   が論功行賞により美濃を得る。その際、現存の城が領地経営に不便とみて、小倉山に新た

   に城を築城した。その際整備された城下町が、現在の町並みとなる。

 2.町並みと歴史

  ・長良川に近く、街道が整備され集約された立地から水運、陸運どちらの交易でも栄えた。

  ・当時より名産品である美濃紙のほか、糸や酒などの商家も栄えた。

  ・明治以降には洋風建築も増え、昭和の戦後の経済発展から、その商売に適した近代建築も

   増え、町並みに変化が見えるようになった。

  ・昭和末期に、町並みが注目を浴び、現存する建築物の保存活動が本格化する。

 3.紙とうだつ

  ・美濃周辺で生産された美濃紙を卸す紙問屋が栄えた。

  ・栄えた商家によって、うだつが設置されるようになり、うだつのある家が増えた。

  ・上記のことを加え、度々火災があったこともあり、うだつの重要性も高かった。

 4.町並みの現状

  ・現在の町並みは、町ごとに景観が異なる。旧今井家住宅(美濃市指定文化財)周辺は、比較

   的古い町並みが保たれているものの、建物の近代化、空地化により景観が崩れた地域もあ

   る。

 5.町並みの特色

  ・城下町として形成されているが、一般的な城下町と違い、防御よりも商業、利便性を優先

   した町づくりとなっている。

  ・町並み最大の特色は、全国的に見ても数多くのうだつが残されている。

  ・町並み自体が、度々火災にあっていることから、防災の面でうだつは重要視されている。

   その中でも、力のある商家は豪華絢爛なうだつを設置し、一種のステータスとなってい

   た。

 

 続けて、石井氏より美濃市の伝建についての選定経緯、保存状況、現行の問題点等を講義していただきました。

■伝建についての選定経緯

 昭和50年代に、町並みとしての価値を再認識され始める。この価値の見直しについては、地元の人々ではなく外部の人々が町並みの形成を歴史的にも価値のあるものではないかと議論を呼んだ。

 しかし、当時の美濃市としては高度成長期の波に今一つ乗り切ることができずに、町の空洞化や近代的発展に課題を残していた。

 そんな中に、昭和60年に美濃青年会議所が、空家状態の今井家住宅を清掃し、公開する。

 その後、昭和63年に「町並み審議会」を設置し、町並みの保存法について諮問する。

 平成元年に、名古屋大学教授の協力のもと、町並みの調査が始まる。その調査結果をもとに、平成2年に「町並み審議会」が美濃市長に町並み保存の必要性を答申する。

 これにより、平成4年旧今井家住宅を含める5連棟を修復する。(現在の町並みの中で、一番古い形態を残している。)

 平成8年  美濃市伝統的建造物保存地区条例を制定

 平成10年 伝統的建造物該当物件の調査

 平成11年 国の重要伝統的建造物群保存地区の選定を受ける

 以上のように、美濃市として独自に町並み保存について策定し、保存、修復を行ってきました。その成果もあり、重要伝統的建造物群保存地区の選定を受けることができました。

 

■伝建地区の修理・修景について

・伝建地区内には、大きく分けて2種類の建造物の区分がある。

1)伝統的建造物(特定物件)

 ・基本的に許可なく修理、改修ができない。

 ・解体は、さらにハードルが高く、許可は下りない。

 ・建物に制限がかかっているので、持ち主が変わろうが拘束力は変わらない。

2)伝統的建造物以外の建造物(建築物、工作物、建築設備等、駐車場、植栽、土石類採取等)

 ・特定物件に比べ解体はできるが、その後の空地化は認められていない。

 ・新築については、修景基準に即したものでなければならない。

・修理・修景については、各々補助金があり、

 1)最大800万円(工事の8/10上限)

 2)最大400万円(工事費の6/10上限)

 ただ、近年の物価高や気候変動の影響が大きく、この補助金の見直しも必要になると考えている。

 また、補助金の優先度もあり、特定物件の最重要修理(瓦破損等)が最優先される。

 (現状、2年先まで補助金の受付は、埋まっている。)

 

■伝建地区内 建築基準法の制限緩和について

 伝建地区内の建築基準法の制限緩和について、軒等の道路への突き出しを緩和している、地区によって、最大50㎝までは道路への突き出しを緩和している。

 ただ、基本的に周囲の景観と馴染むようにしなければならないので、修理・修景する際は必ず行政と相談すること。

 

■伝建地区内の諸問題

 ・空家の問題

 ・維持費の問題

 補助制度があるとはいえ、修理・修景には家主の経済的負担を伴うため、修理せず放置したままになるケースもある。また、家主の高齢化、後継ぎ問題等により空家になる家も多い。

 最近では、空家を店舗として貸し、カフェや雑貨屋と活用するケースも増えてきているが、抜本的解決策はでておらず、今後の大きな課題となる。

伝建地区散策(美濃和紙あかりアート館および旧今井家住宅(美濃市指定文化財))

 地元の案内ぼrボランティアのご協力を得て、3班に分かれて伝建地区内の散策を行いました。

 

午前中の講義内容でもあった美濃の歴史を、実際の町並みを見て散策。

 

伝建地区内散策の様子            うだつの中でも珍しい2連うだつ

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美濃の町並みを地図で説明          うだつのあがる町並み

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美濃和紙あかりアート館

 建物は、昭和16年頃に美濃町産業会館として建てられました。切妻造りの木造総2階建てのスレート葺で、美濃市の現存する中では最大の近代木造建築物となる。

 水平線を強調した外観意匠に特徴があるとされ、昭和初期の姿を今に残す貴重な建造物として、国の登録有形文化財に指定されている。

 毎年秋に美濃市で開催される「美濃和紙あかりアート展」の入賞作品を展示している。伝統の美濃和紙の腐朽にも力を入れ、市全体として活性化を図っている。

 

建物外観                  建物内観(展示内容)

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旧今井家住宅((美濃市指定文化財)(現地視察)

 旧今井家住宅は、美濃市で最も古いうだつのある庄屋兼和紙問屋であった町家となる。江戸時代中期に建てられ、明治初期に増築されたと言われており、市内最大級の間取りとなっている。増築時には天井からの高さが約3mある明かりとりもつくられました。

 庭には「日本の音風景100選」にも選ばれた水琴窟がある。

 また、奥には美濃市の古い歴史、文化、造形物に関する資料を展示した美濃資料館やうだつ蔵、にわか蔵がある。

 国の重要伝統的建造物群保存地区に選定される前に、美濃市で独自保存修理したため、国の重文の指定にはなれなかった。しかし、近年そうした経緯も含め、再度重文指定になるための議論がなされている。

 

今井家住宅内帳場にて            水琴窟を囲んで

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 今回の講座で、伝建地区内での課題等を考える機会を得て、保存方法、地域融和の難しさを知ることができました。今後の講座でも、今回の内容を活かして学んでいきたいです。