ぎふHM 2022年度
HM第10日目
テーマ:世界遺産白川郷の運営及び保存修理・構造方法等それに伴う防災設備の考え方について
日時 :令和4年10月23日(日) 10:45~15:00
場所 :午前講義 「道の駅白川郷」総合文化交流施設 会議室
:午後講義 世界遺産白川郷 荻町集落
参加者:25名
世界遺産白川郷の運営及び保存修理・構造方法等それに伴う防災設備の考え方について
白川村教育委員会事務局 文化財係 課長補佐 松本継太氏に講義して頂きました。
松本継太氏講習風景
1.白川村・荻町の紹介
・白川村は白山の麓に位置し、庄川沿いに形成された山岳村
・重伝地区の面積は約45.6haであり、世界遺産の中核をなしている
・荻町はかつての集落景観を残す貴重な合掌造り集落
2.合掌造りについて
・茅葺き屋根の民家は日本各地にあり多くは寄棟造りか入母屋造りであるのに対し、合掌造りは
切妻造り
・合掌造りの構造は上部の合掌(小屋)部分と下部の軸組部分から成り、氷見能登や高山の大工
による軸組の上に村人の手によって造られた合掌屋根が残る
・合掌造りの小屋裏はその構造的特徴(大きな無柱空間、切妻からの採光)と土地の制約(多雪地
域、狭い耕作地)から養蚕の作業場として使われるようになった
・「結」は茅の葺き替えを行う制度で、対等な労働交換
・茅葺きは茅の葺き替え以外にも棟茅、差し茅をして手入れを行う
3.茅について
・茅葺きは農業の延長上にあり、茅場を維持し茅刈りを行うことで茅を確保してきた
・白川村で用いられる茅の種類はススキとカリヤスで、茅場は点在している
・茅の運搬は雪上を滑らせたり、「ムカデ」と呼ばれる方法で急斜面を滑らせたりして山から
運び出していた(昭和40年代前半まで)
・白川村の茅刈りの期間は10月下旬~11月下旬の約1か月と短く、機械化が必須
・6haある茅場からは6,000束(=60束/日×10人×10日)収穫される
・年間に必要な茅は20,000束で、現在は不足分を御殿場から仕入れているが、自給率50%を目
指して茅場の整備を進めている
4.合掌集落の近年の歴史
・1940年代に入って養蚕業の衰退と水力発電のためのダム開発により、移築・建て替え・トタ
ン屋根への改修が行われ、合掌造りの減少が著しく進む
・養蚕の村から観光の村へ推進産業の舵をきる
・国鉄キャンペーンのディスカバージャパンが実施される
・1971年住民憲章制定
・1976年重伝地区選定
・1995年世界遺産登録
・2011年村営駐車場閉鎖 → 荻町公園整備
5.防災設備の整備
・放水銃は60mの高低差を利用した自然流加式
・各所に設置された放水銃は景観に配慮した格納庫に収容されている
6.保存会の活動と行政支援
・保存会の構成は7つの組の代表者、各種組合、青年会・女性会、地元議員からなる
改修工事を行う際は、保存会と白川村教育委員会の審議を経て許可もしくは意見書が発行さ
れる
7.急激な観光客の増加と交通問題の解消
・世界遺産登録により日帰りの観光客が増加、交通渋滞等の問題が顕著になる
・荻町交通対策委員会で荻町交通対策基本計画を策定
・世界遺産マスタープランに交通対策を位置付けて計画を進める
・村営荻町駐車場の閉鎖、通年交通制限の実施、保存地区外の駐車場整備により交通問題を解
消
現地視察
世界遺産しら白川郷 荻町集落 説明見学(国重文和田家 含) 松本継太氏による解説
村営駐車場閉鎖→荻町公園整備 合掌造りの寺院「明善寺」
鐘楼も茅葺き 放水銃の説明
途中で合掌の屋根葺き替え中の現場を見ることができた
国重要文化財「和田家」