福まち建築士 2022年度
講演会「バリアフリー情報の発信と宿泊客の増加」
日時 :令和4年7月4日(月)13:15~15:00
場所 :京都建設会館別館 4階会議室 ※Zoom併用
出席者:WEB参加 福まち建築士 2名
建築士会連合会の福まち部会の京都府の方よりご紹介があり、京都府建築士会 ハート&ハート研究会主催の講演会を拝聴させて頂きました。
参加者は、会場16名、WEB17名の計33名、内訳は建築士25名、その他8名(観光関係5名)で全国9都道府県の建築士の参加があったそうです。
第一部として伊勢志摩バリアフリーツアーセンター事業プロデューサーの中山めぐみ氏に「『来てほしい人を招き入れる』ために集客戦略としてのバリアフリー対応と情報発信」についてお話し頂きました。令和元年度の全国大会の福祉まちづくりセッションでもお話を伺ったことがありました。(岐阜県建築士会HP参照
https://www.gifukenchikushikai.or.jp/iinkai/machi/-2019/post-2829.html)
この時も思いましたが、バリアフリーに精通した建築士が携わることでその場に適切な提案が出来ることがとても重要だと思いました。また、バリアフリーな施設の紹介ではなく「バリアがある施設こそ重要」でバリアの部分を発信することで高齢者や障がい者が自分でこれくらいのバリアなら宿泊出来ると判断できることが大事だということは目からうろこでした。
また、「オシイバリフリ」も紹介して頂きました。岐阜の福まち建築士にも「バリアフリー珍百景」として惜しいバリアフリーを募ったり紹介したりしていましたが、やはり場所等が特定されるもは掲載できないのであまりうまく機能しませんでしたが、失敗から学ぶこともたくさんあるので、事例として集めて行けたらと思いました。
講演会の様子と勝谷有史氏
第二部として松江しんじ湖温泉の旅館「なにわ一水」の代表取締役社長 勝谷有史氏に「『旅館の情緒』と『バリフリ―・ユニバーサルデザイン』の両立」についてお話し頂きました。
令和元年の全国大会で「観光バリアフリー」について色々聞き、島根県でも力を入れていると聞いていました。その年の10月の個人的な旅行で島根県へ行ったのでいつもの旅行とは違いバリアフリーなところを重点的に見てみようと思っていました。その時たまたま宿泊したのがこの「なにわ一水」でした。健常者である私にも違和感のない仕様でした。部屋を見ることは出来ませんでしたが探検してみると随所に工夫が見られました。目立たずかと言って使いづらくない昇降機もあり感動したのを覚えています。私が宿泊した部屋はバリアフリーではなくコネクティング可能な3世代旅行に対応している部屋でした。扉の謎が解けてスッキリしました。「障害のある人もない人もみんなで一緒に泊まれる温泉宿」として「IAUD国際デザイン賞2020」を受賞しましたが、現在でも順次改修がお粉れているそうです。ここでも「ネガティブ情報」を公表しているようです。また宿泊客だけではなく「従業員」も働きやすいようにバリアを取り払った改修も行っていて勝谷社長の柔軟な考え方はすごいと思いました。
現在はバリアフリーを必要としている方が優先ですが、いつかまた泊りに行きたいと思いました。
講演会の様子と山田和史氏
第三部として京都市都市計画局建築審査課の山田和史氏に「宿泊施設のバリアフリーに関する情報公開制度について」お話し頂きました。
京都市では令和3年10月1日から「宿泊施設のバリアフリーに関する情報の公表制度」を開始したそうです。新築では義務化、既設では努力義務だそうです。令和4年6月末時点では35の宿泊施設が公表されています。バリアフリー情報としては「ハード面」では段差の有無や車いす使用者用のトイレの設置等、「ソフト面」では備品の貸し出しや手話や筆談等のコミュニケーションサービス等を届けるようです。届出書もチェック方式となっていて公表方法もピクトグラムを使用するなどそれぞれのホームページを見るとあちこち見ないと分からない情報もひとまとまりで見ることが出来ると思いました。既設の施設は公表に反対だったそうですが、建築物には手をくわえられなくてもソフト面での対応を積極的に公表してもらうように伝え、一定の理解を得たそうです。
岐阜県の福まち建築士は「地域包括ケアシステム」の構築の中で「住まい」のことに関わることを主として立ち上げている為、観光バリアフリーとはまた違った内容となってきますが、より良い建築物をという観点では同じですし、「まちづくり委員会」の中の「福祉まちづくり部会の福まち建築士」なのでまちづくりの観点からもこのような講演会にまた参加出来たら良いなと思いました。